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平成14年横審第90号
件名

プレジャーボートタイムポート乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年10月11日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(長谷川峯清)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:タイムポート船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
バラストキールに亀裂を伴う曲損

原因
針路保持不十分

裁決主文

 本件乗揚は、針路の保持が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月4日03時30分
 横須賀港第6区

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートタイムポート
全長 9.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 11キロワット

3 事実の経過
 タイムポートは、FRP製プレジャーヨットで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者3人を乗せ、帆走周遊の目的で、バラストキール下端まで1.88メートルの最大喫水をもって、平成13年5月3日00時00分住友重機械愛宕山導灯(以下「導灯」という。)(前灯)から135度(真方位、以下同じ。)700メートルで、横須賀港第6区浦賀内のシティーマリーナヴェラシス(以下「マリーナ」という。)の桟橋を発し、伊豆大島方面の海域に向かった。
 ところで、浦賀西岸南東部の、導灯(前灯)から130度1,200メートルの地点にある灯明埼周辺には、水深2メートル以浅の岩礁が、陸岸から沖合に向かって約150メートル拡延しており、同埼北東方沖合約220メートルの、導灯(前灯)から120度1,240メートルの地点には、左舷標識の緑色浮標(以下「左舷浮標」という。)が設置されていた。このため、浦賀に南方から入航する船舶は、導灯(前灯)及び同灯(後灯)の2灯を一線に見る291.5度の針路線上を、同浮標を左方に見るように航行し、岩礁に接近することを避けていた。
 A受審人は、平成8年にタイムポートを購入して以来、基地とするマリーナを入出航する都度灯明埼沖合を航行していたので、同埼周辺の岩礁など浦賀付近の水路状況についてはよく知っており、夜間に入航する際には、マリーナ北西方にあるマンションの明かりを針路目標とし、夜間でも500メートルに接近すれば陸上の明かりに反射して認めることができる左舷浮標を左方に見ながらマリーナに向かっていた。
 A受審人は、前示海域から相模湾を帆走しているうち、GPSプロッターが故障して船位を求めることができなくなったが、陸岸の地形や灯火の目視によって船位を推定しながら周遊したのち帰途に就き、神奈川県三崎港付近で機走に切り替え、翌4日03時07分半海獺島灯台から292度230メートルの地点に達したとき、針路を香山根灯浮標に向く022度に定め、機関を全速力前進にかけ、5.0ノットの対地速力で、舵柄による手動操舵によって進行した。
 03時23分A受審人は、導灯(前灯)から110度2,250メートルの地点に達し、前示マンションの明かりを284度の方向に認めたとき、いつものように同明かりが正船首になるよう左転したのち、舵を中央に戻したつもりのところ、わずかに左に取られたままになっており、灯明埼沖合に拡延する岩礁に向かって進行する状況となったが、左舷浮標を左方に見つけることに気をとられ、これらのことに気づかず、導灯(前灯)及び同灯(後灯)両灯の重視線上を航行するなり、針路目標としたマンションの明かりの方位変化に合わせて進路を修正するなりして針路を十分に保持することなく、岩礁に向かってゆっくり左回頭しながら、同じ速力のまま続航した。
 03時27分A受審人は、導灯(前灯)から115度1,640メートルの地点に至り、船首が265度を向いたとき、針路目標としたマンションの明かりを右舷船首方に、また、左舷浮標を右舷船首16度420メートルにそれぞれ認めることができ、針路が左方に偏じて灯明埼沖合に拡延する岩礁に向かって進行していることを知り得る状況であったが、依然、同浮標を左方に見つけることに気をとられ、このことに気づかないまま続航中、03時30分導灯(前灯)から128度1,320メートルの地点において、タイムポートは、船首が250度を向いたとき、原速力のまま、灯明埼沖合に拡延した岩礁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力3の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
 乗揚の結果、タイムポートは、バラストキールに亀裂を伴う曲損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、横須賀港第6区において、浦賀に入航する際、針路の保持が不十分で、灯明埼沖合に拡延した岩礁に向かって左回頭しながら進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、横須賀港第6区において、浦賀に入航する場合、浦賀西岸南東部の灯明埼周辺には、水深2メートル以浅の岩礁が拡延していることを知っていたのであるから、同岩礁に接近しないよう、導灯(前灯)及び同灯(後灯)両灯の重視線上を航行するなり、針路目標としたマンションの明かりの方位変化に合わせて進路を修正するなりして針路を十分に保持するべき注意義務があった。ところが、同受審人は、左舷浮標を左方に見つけることに気をとられ、針路を十分に保持しなかった職務上の過失により、灯明埼沖合に拡延した岩礁に向かって左回頭しながら進行して乗揚を招き、バラストキールに亀裂を伴う曲損を生じさせるに至った。





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