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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 安全・運航阻害事件一覧 >  事件





平成14年長審第37号
件名

プレジャーボート龍盛丸運航阻害事件(簡易)

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成14年8月28日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦)

理事官
弓田

受審人
A 職名:龍盛丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
燃料切れ、機関停止

原因
発航準備(搭載燃料の油量確認)不良

裁決主文

 本件運航阻害は、搭載燃料の油量確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月26日11時50分
 島原湾

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート龍盛丸
総トン数 4.97トン
登録長 12.24メートル
機関の種類 過給機付4サイクル4シリンダ・ディーゼル機関
出力 139キロワット
回転数 毎分2,500

3 事実の経過
 龍盛丸は、主として遊漁に使用するFRP製プレジャーボートで、A受審人が単独で乗り組み、友人1人を乗せ、平成14年5月26日06時00分佐賀県戸ヶ里漁港を発し、天草諸島大矢野島北方沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は、同船の燃料の最大搭載量については容量140リットルのタンクが各舷に1個設備されており、タンク一杯にしておけば大矢野島の間を十分に往復できることを聞いていたものの、航海速力での時間当たりの燃料消費量や機関室に装備されている計器盤の表示などについては十分承知しておらず、発航に際し、燃料タンクの油面計を確認しなかったので、出航時の油量が全体で100リットルばかりしかないことに気付かなかった。
 A受審人は、出航して間もなく機関室計器盤の潤滑油圧力計の棒状表示が頂部まで上がっているのを見たとき、これが燃料油の現在量を示したものであってほぼ一杯の状態にあるものと思い、機関を回転数毎分2,100の航海速力にかけ、18ノットの対地速力として早津江川を下航した。
 A受審人は、燃料油の搭載量が航海速力で航行したとき、両舷タンクで40リットルばかりのデッドオイルを考えれば3時間ばかりの航海が限度であることを知らないまま、何回か釣りに出かけたことのある沖神瀬付近を航過したのち島原湾を漁船群や網を避けながら南下し、08時40分三角灯台から277度(真方位、以下同じ。)3海里ばかりの地点に至って、機関を停止し、投錨して友人と釣りを開始した。
 A受審人は、2度ばかり付近で釣り場を替えたが、釣果が思わしくなかったことから、島原港沖合に移動することとし、11時15分機関を始動し、18ノットの航海速力で2海里ばかり北上したところで漂泊して釣りを再開したが、潮の流れが速かったことから、間もなく中止し、同時43分機関を航海速力にかけ、同地点を発して再度島原港沖合に向け航走中、11時50分深江港東防波堤灯台から129度2海里の地点において、燃料がなくなって機関が停止し、運航が阻害された。
 当時、天候は晴で風力2の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 この結果、海上保安庁に救助を求め、来援した巡視船により最寄りの港にえい航された。

(原因)
 本件運航阻害は、発航に際し、搭載燃料の油量の確認が不十分で、航行中、主機関の燃料油がなくなったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、他人が所有する龍盛丸を借りて出航する場合、帰港するまでの途中、燃料油がなくならないよう、その油量の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、燃料タンクの油面計でその油量を確認しなかった職務上の過失により、航行中、主機関の燃料油がなくなって運航阻害を招き、巡視船にえい航されるに至った。





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