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平成14年神審第54号
件名

プレジャーボートパナリ乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年9月30日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正、黒田 均、内山欽郎)

理事官
清重隆彦

受審人
A 職名:パナリ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板3箇所に破口、浸水し、のち水船

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月26日12時10分
 和歌山県田辺港沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートパナリ
総トン数 15トン
全長 15.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 441キロワット

3 事実の経過
 パナリは、2基2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人5人を同乗させ、トローリングによるかつお釣りの目的で、船首1.0メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成14年5月26日05時00分和歌山県田辺港を発し、同県周参見漁港西方沖合の釣り場に向かった。
 06時00分A受審人は、釣り場に到着し、さお釣りや手釣りで3匹のかつおを釣り上げたのち、空腹を覚えたのでトローリングを行いながら昼食をとることとし、10時00分ごろ同乗者と共に持参した弁当を食べ始めたが、そのときキャビンの冷蔵庫に入っていた350ミリリットル入り缶ビール3缶をお茶代わりに飲んだ。
 A受審人は、その後も釣りを続け、11時40分市江埼灯台から226度(真方位、以下同じ。)3.1海里の地点で、漂泊して釣り道具を収納したのち、帰航することとしたが、酒気が完全に抜けないと居眠りしやすい状況であったのに、さほどの量を飲んでいないから大丈夫と思い、居眠り運航とならないよう、飲酒しなかった四級小型船舶操縦士の海技免状を受有している同乗者と2人で船橋当直に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、同時42分単独で同当直に就き発進した。
 こうして、A受審人は、発進直後、針路を343度に定め、機関を全速力前進にかけ、23.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、フライングブリッジにあるいすに座って見張りに当たり、同乗者をキャビンで休ませたまま自動操舵により進行し、12時01分少し過ぎ四双島灯台から209度1.6海里の地点に達したとき、針路を005度に転じ、同時05分少し過ぎ同灯台から270度1,190メートルの地点で、針路を022度に転じたのち、20.0ノットの速力に減じて北上中、いつしか居眠りに陥った。
 パナリは、沖ノ島南側の浅礁に向首する針路のまま続航し、12時10分田辺沖ノ島灯台から202度80メートルの地点に、原針路原速力のまま、乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船底外板3箇所に破口を生じて浸水し、乗揚地点で水船となったが、のちクレーン船で引き揚げられて田辺港に運ばれた。

(原因)
 本件乗揚は、和歌山県田辺港を発航して同県周参見漁港西方沖合でトローリングをしたのち帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、沖ノ島南側の浅礁に向首する針路のまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、和歌山県田辺港を発航して同県周参見漁港西方沖合でトローリングをしたのち帰航する場合、飲酒後まもなくで、酒気が完全に抜けないと居眠りしやすい状況であったから、居眠り運航とならないよう、飲酒しなかった四級小型船舶操縦士の海技免状を受有している同乗者と2人で船橋当直に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、さほどの量を飲んでいないから大丈夫と思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、単独で同当直に当たって居眠りに陥り、沖ノ島南側の浅礁に向首する針路のまま進行して乗揚を招き、船底外板に破口を生じて浸水させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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