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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年門審第102号
件名

漁船第八福徳丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年7月4日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(千手末年、西村敏和、橋本 學)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:第八福徳丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船首船底外板に破口等
船長が右外傷性股関節脱臼

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年10月6日05時25分
 甑島列島上甑島中甑浦

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八福徳丸
総トン数 6.4トン
登録長 11.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 第八福徳丸(以下「福徳丸」という。)は、船体中央部やや後方に操舵室を設けたFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、平成12年10月5日15時00分鹿児島県薩摩郡上甑村の中甑港を発し、17時ごろ下甑島早埼の西方沖合1.7海里ばかりの漁場に至ってかじき流網漁の操業を開始し、翌6日04時00分かじきまぐろ3本を漁獲したところで操業を終え、下甑島の手打港に寄港し、僚船に漁獲物を瀬渡しして串木野港での水揚げを依頼したのち、船首0.25メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、同時40分手打港を発し、中甑港に向けて帰途に就いた。
 発航後、A受審人は、船首浮上により舵輪後方の位置からでは前方の見通しが悪くなったので、操舵室の両舷側壁面に渡した板の左舷側に腰掛け、舵輪の前側にあるコンパスの示度が十分に見えない状況で陸岸の明かりやレーダー映像を見ながら操舵に当たり、05時21分少し過ぎ中甑島矢埼沖合の、甑平良港防波堤灯台から086度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの地点で、レーダー画面を見て船首輝線が倉妻埼西端部のやや左方に向くよう、針路を003度に定め、機関を半速力前進にかけ、17.0ノットの対地速力で、左舷側壁の前部に掛けた遠隔操舵装置による手動操舵で進行した。
 ところで、夜間、矢埼沖合から中甑港に向かうとき、船首目標となる適当な物標がないことから、倉妻埼を無難に航過するには、レーダーを活用して船位の確認を十分に行う必要があった。
 定針後、A受審人は、依然として渡し板の左舷側に腰掛け、船首と左舷前方の中甑導流堤灯台との角度の開き加減を見ながら、船首が右方に振れた場合に察知しにくい状況のもとで続航し、05時23分半少し過ぎ中甑導流堤灯台から153度1,820メートルの地点に達したとき、魚群探知器など不必要となった計器類のスイッチを切る操作をしていたところ、舵中央としていたつもりの遠隔操舵装置のつまみが手に触れるかしてわずかに右にとられたことから、船首が徐々に右方に振れ始めたが、いつものように直進しているはずだから大丈夫と思い、レーダーを活用して船位の確認を十分に行わなかったので、倉妻埼に著しく接近する状況となっていることに気付かなかった。
 こうして、福徳丸は、徐々に右転しながら倉妻埼に向かって進行し、05時25分中甑導流堤灯台から130度1,500メートルの地点において、船首が北東を向いたとき、原速力のまま、倉妻埼南西部の岩場に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、視界は良く、日出は06時18分ごろであった。
 乗揚の結果、船首船底外板に破口を生じたほか、船首部外板及び甲板上構造物を損壊したが、自然離礁し、のち修理され、A受審人が右外傷性股関節脱臼などで50日間の入院加療を要する傷を負った。

(原因)
 本件乗揚は、日出前の薄明時、甑島列島上甑島中甑浦において、中甑港に向けて航行する際、船位の確認が不十分で、倉妻埼南西部の岩場に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、日出前の薄明時、甑島列島上甑島中甑浦において、中甑港に向けて航行する場合、倉妻埼を無難に航過するための船首目標となる適当な物標がなかったから、同埼に著しく接近しないよう、レーダーを活用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、いつものように直進しているはずだから大丈夫と思い、レーダーを活用して船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、船首が右に振れて同埼に著しく接近していることに気付かず進行して乗揚を招き、船首船底外板に破口を生じさせたほか、船首部外板及び甲板上構造物を損壊させ、自らが右外傷性股関節脱臼などの傷を負うに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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