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平成14年門審第39号
件名

漁船第二 三成丸プレジャーボート節丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年9月26日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(西村敏和、米原健一、島 友二郎)

理事官
畑中美秀

受審人
A 職名:第二 三成丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:節丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
三成丸・・・船首部に擦過傷
節 丸・・・右舷中央部を大破し、のち廃船、船長が右膝打撲

原因
三成丸・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険)不遵守

主文

 本件衝突は、第二 三成丸が、見張り不十分で、漂泊中の節丸の至近のところで同船に向けて転舵したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年5月19日10時10分
 山口県萩港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二 三成丸 プレジャーボート節丸
総トン数 8.5トン 1.85トン
全長 16.80メートル  
登録長 13.81メートル 5.21メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
漁船法馬力数 120  
出力   29キロワット

3 事実の経過
 第二 三成丸(以下「三成丸」という。)は、中型まき網漁業付属のFRP製運搬船で、A受審人が1人で乗り組み、氷約1,000キログラムを積み、主機潤滑油などを交換する目的で、船首0.65メートル船尾1.38メートルの喫水をもって、平成13年5月19日08時00分山口県大島漁港を発し、萩港浜崎地区の松本川左岸の船だまりに到着して主機潤滑油及びこし器の交換を行い、10時00分同船だまりを発進し、大島漁港に向けて帰途に就いた。
 A受審人は、立って手動操舵に当たり、松本川河口を通過し、10時06分萩港浜崎北防波堤灯台から030度(真方位、以下同じ。)160メートルの地点において、19.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)とし、越ケ浜半島南西方の九島島頂を船首目標として、同半島と同島との間の水道(以下「九島水道」という。)に向けて北上した。
 10時07分少し過ぎA受審人は、萩港小畑浦沖防波堤灯台(以下「沖防波堤灯台」という。)から255度1,510メートルの地点において、針路を002度に定め、九島水道通過に備えて13.0ノットの速力に減じたとき、ほぼ正船首1,100メートルのところに赤色塗色の小型船(以下「赤色小型船」という。)が、更にその東方約30メートルのところに節丸がそれぞれ漂泊していて、両船をいずれも視認し得る状況であったが、赤色の船体塗色が目立っていたことから、赤色小型船だけが目に留まって節丸を見落とし、その後は同小型船を船首目標として続航した。
 A受審人は、赤色小型船の西側を約5メートル隔てて通過するつもりで、同船を正船首わずか右方に見て進行したところ、10時09分少し過ぎ沖防波堤灯台から288度1,520メートルの地点において、左舷船首20度約800メートルのところに九島水道を南下するまき網漁業付属の運搬船を認め、同運搬船と同水道南口で行き会うことが予測されたので、針路を右に転じて赤色小型船の東側を替わしたうえで、同運搬船の左舷側を通過することにしたが、このとき、赤色小型船の東方約30メートルの、右舷船首7度270メートルのところに節丸が船首を東方に向けて漂泊していたものの、運搬船及び赤色小型船のほかには前方に他船はいないものと思い込み、転舵方向となる右舷前方の見張りを十分に行わなかったので、同方向に節丸が存在していることに気付かなかった。
 こうして、A受審人は、運搬船及び赤色小型船を注視しながら続航し、10時10分少し前沖防波堤灯台から295度1,580メートルの地点に達し、節丸が右舷船首18度100メートルとなったとき、右舵をとって右回頭を始めたところ、節丸に向けて接近するようになり、10時10分沖防波堤灯台から297度1,580メートルの地点において、三成丸は、船首が030度を向いたとき、原速力のまま、その船首が、節丸の右舷中央部に後方から60度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、視界は良好であった。
 また、節丸は、船体外板の水線上約40センチメートルまでが白色に、それより上部が青色に塗色された、船外機装備のFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.30メートル船尾0.60メートルの喫水をもって、同日09時00分萩港鶴江地区の姥倉(うばくら)運河沿いの定係地を発し、九島水道南口の釣場に向かい、同時20分の同釣場に到着して漂泊し、きす釣りを始めた。
 10時10分ごろB受審人は、前示衝突地点付近まで潮のぼりを行い、船外機を停止して船首を東方に向けて漂泊し、左舷船尾の物入れの蓋の上に左舷側を向いて腰を掛け、釣竿を左舷後方に出して釣っていたところ、10時07分ごろ右舷正横約1,200メートルのところに、九島水道に向けて北上する三成丸を認め、その後も同船と反対舷の左舷側を向いて釣りを続けた。
 こうして、B受審人は、前示衝突地点において、船首を090度に向けて漂泊中、10時10分少し前、自船の船尾側を約35メートル隔てて無難に通過する態勢で北上していた三成丸が、右舷船尾72度100メートルのところで突然右回頭を始め、自船に向かって接近するようになり、同時10分わずか前右舷正横付近に迫った三成丸の船首を認めたが、衝突を避けるための措置をとる暇もなく、危険を感じて海中に飛び込み、節丸は、前示のとおり衝突した。
 A受審人は、B受審人を救助した後、転覆した節丸を萩港中小畑浦に曳航した。
 衝突の結果、三成丸は、船首部に擦過傷を生じたが、のち修理され、節丸は、右舷中央部を大破し、のち廃船とされ、B受審人が1週間の加療を要する右膝打撲などを負った。

(原因)
 本件衝突は、山口県萩港において、九島水道に向けて北上中の第二三成丸が、見張り不十分で、漂泊中の節丸の至近のところで同船に向けて転舵したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、山口県萩港において、九島水道に向けて北上中、同水道を南下する運搬船を認め、同船の左舷側を通過するため、針路を右に転じる場合、転舵方向に存在する他船を見落とすことのないよう、転舵方向の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、同運搬船及び船首目標としていた赤色塗色の小型船のほかには前方に他船はいないものと思い込み、両船を注視していて、転舵方向となる右舷前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、右舷前方で漂泊中の節丸に気付かず、同船の至近のところで右に転舵して衝突を招き、第二 三成丸の船首部に擦過傷を生じさせ、節丸の右舷中央部を大破して転覆させ、B受審人に1週間の加療を要する右膝打撲などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同受審人を戒告する。
 B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:32KB)





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