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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年広審第35号
件名

押船第七東進丸被押バージゆきかぜ乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年6月4日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(伊東由人)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:第七東進丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
船首船底に凹損を伴う擦過傷

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月7日16時40分
 香川県 坂出港北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 押船第七東進丸 バージゆきかぜ
総トン数 167トン 1,761.00トン
全長 36.30メートル 66.50メートル
  15.00メートル
深さ   5.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 1,912キロワット  

3 事実の経過
 第七東進丸は、専ら浚渫作業及び海砂の採取に伴う土砂の運搬業務に従事する鋼製押船で、A受審人ほか4人が乗り組み、船首2.2メートル船尾3.2メートルの喫水で、2,000立方メートルの海砂を積載して船首尾とも3.8メートルの喫水となったゆきかぜの船尾凹部に船首をかん合し、全長103メートルの押船列を構成し、平成13年7月7日16時00分香川県坂出港北西方沖合の三ツ子砂嘴に錨泊中の浚渫船を離舷し、小瀬居島北方経由、同港の検疫錨地(以下「検疫錨地」という。)に向かった。
 ところで、小瀬居島の東方には900メートルに亘り浅所が拡延していたものの、A受審人は、同島南側を航行した経験から拡延した浅所はないものと思い込み、初めて小瀬居島北側を経由して入航する予定であったが、備え付けの海図第1122号(鍋島付近)にあたり浅所を確認するなどして水路調査を十分に行うことなく発航した。
 A受審人は、出航操船に引き続き単独で船橋当直にあたり、南下して備讃瀬戸南航路に入り、機関を全速力前進にかけて6.5ノットの速力で手動操舵によって航路に沿って東行し、16時32分小瀬居島灯台から308度(真方位、以下同じ。)520メートルの地点で、針路を航路外に向く083度に定めて進行した。
 こうして、A受審人は、航路端に至り、16時35分検疫錨地に向けて針路を転じようと右舵を取って回頭して船首が東方に向いたとき、正船首方1海里に坂出港への入航船と、右舷船首60度1.2海里ばかりに同港からの出航船を認め、その進路を避けることにして右舵を取ったまま機関を半速力前進の4.5ノットの速力とし、同時36分小瀬居島灯台から042度470メートルの地点で、針路を143度に転じたところ、同島から東方に拡延する浅所に向かう状況となったものの、これに気付かないまま続航中、16時40分小瀬居島灯台から098度640メートルの浅所に、ゆきかぜの船首部が原針路、原速力で乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、ゆきかぜの船首船底に凹損を伴う擦過傷を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、香川県坂出港北西方沖合の三ツ子砂嘴から小瀬居島北方を経由して同港の検疫錨地に向かう際、水路調査が不十分で、小瀬居島から東方に拡延する浅所に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、坂出港北西方沖合の三ツ子砂嘴から初めて小瀬居島北方を経由して同港の検疫錨地に向かう場合、備え付けの海図にあたり浅所を確認するなどして水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同島南側を航行した経験から拡延した浅所はないものと思い込み、備え付けの海図にあたり浅所を確認するなどして水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、小瀬居島から東方に拡延する浅所に向かって進行し、同浅所への乗揚を招き、ゆきかぜの船首船底に凹損を伴う擦過傷を生じさせるに至った。





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