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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年長審第10号
件名

貨物船第八金栄丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年5月23日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(半間俊士、道前洋志、寺戸和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第八金栄丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:第八金栄丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)(履歴限定)

損害
船首船底に亀裂

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Bの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年6月15日03時26分
 長崎県伊王島東岸

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八金栄丸
総トン数 691トン
全長 74.15メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット

3 事実の経過
 第八金栄丸は、鋼製砂利採取運搬船で、A受審人及びB受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま、船首2.0メートル船尾3.5メートルの喫水をもって、海砂採取の目的で、平成13年6月15日03時00分長崎港小ヶ倉柳ふ頭を発し、長崎県壱岐島南方に向かった。
 これより先、B受審人は、前日14日18時00分長崎港に着岸して上陸し、他船の友人と共に買い物をし、22時ころから翌15日01時ころまでブランデーの水割り10杯ばかりを飲酒したのち食事をとり、02時20分帰船して自室で着替え、船首配置についた。
 A受審人は、平戸瀬戸が自分の船橋当直となるよう発航から目的地までの当直を、B受審人、二等航海士、自分の順番で各2時間行うこととしたうえ、自ら離岸操船に当たって発航し、船首での離岸作業を終えて昇橋してきたB受審人と当直を交代することとしたが、B受審人が昇橋直後に操縦スタンドの前にいすを運んできて腰を掛けるなど、いつもとは違う勤務態度であったのに、交代船長を務める程の人であるので任せておけばよいものと思い、体調などを確認することなく、03時11分高鉾島南方においてB受審人と当直を交代して降橋した。
 B受審人は、発航前に飲酒などして睡眠をとっていなかったので、当直中居眠りに陥るおそれがあったが、2時間の当直であるから居眠りすることはないものと思い、A受審人に当直の交代を申し出ることなく当直につき、交代直後長崎港三菱重工蔭ノ尾岸壁灯台から357度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点において、針路を253度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力として、いすに腰を掛けて自動操舵により進行し、一緒に飲酒した友人に携帯電話をかけたのち、同じ姿勢で当直を続けているうちいつしか居眠りに陥った。
 03時17分半B受審人は、平瀬灯標から093度2,460メートルの平戸瀬戸に向かうための右転予定地点に達したことに気付かず続航し、03時26分平瀬灯標から220度650メートルの伊王島東岸消波堤に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 A受審人は、乗揚の直後に昇橋し、事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、船首船底に亀裂を生じ、消波堤にも損傷を生じたが、救援船により引き降ろされ、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、発航直後の長崎港内において、船橋当直を交代する際、居眠り運航防止措置が不十分で、陸岸に向けて進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは、船長が、当直者の体調などを確認しなかったことと、当直者が、当直の交代を船長に申し出なかったこととによるものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、発航直後の長崎港内において、船長から船橋当直を交代する場合、発航前に友人と飲酒などして睡眠をとっていなかったので、当直中居眠りに陥るおそれがあったから、当直の交代を船長に申し出て居眠り運航防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、2時間の当直であるから居眠りすることはないものと思い、当直の交代を船長に申し出て居眠り運航防止措置をとらなかった職務上の過失により、当直中に居眠りして乗揚を招き、船首船底に亀裂を生じさせ、消波堤にも損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 A受審人は、夜間、発航直後の長崎港内において、一等航海士と船橋当直を交代する場合、昇橋するとすぐいすに腰を掛けるなど、いつもとは違う勤務態度であったから、適切な当直が行えるよう、体調などを確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、同航海士は交代船長を務める程の人であるので、任せておけばよいものと思い、体調などを確認しなかった職務上の過失により、同航海士が当直中に居眠りして乗揚を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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