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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年函審第8号
件名

漁船第三十八福昇丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年5月28日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(工藤民雄、安藤周二、古川隆一)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:第三十八福昇丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底に破口、沈没し、のち廃船

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年1月23日15時50分
 福岡県小呂島

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十八福昇丸
総トン数 9.94トン
登録長 13.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 308キロワット

3 事実の経過
 第三十八福昇丸(以下「福昇丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか甲板員1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.2メートル船尾1.7メートルの喫水をもって、平成13年1月23日13時00分福岡県博多港長浜船だまりを発し、長崎県壱岐島北方17海里付近の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、平成12年12月初旬に壱岐島の郷ノ浦漁港を基地とし、九州北部沖合の漁場で操業を開始して以来、連日15時ごろ出航して夜間操業を行い翌朝07時ごろ帰航し、水揚げを終えたのち4時間ほど休息をとり再び出漁する形態で操業を繰り返しており、1月22日15時00分同漁港を発し夜間操業を行った後、業者による自動操舵装置と燃料移送ポンプの修理のため、翌23日09時00分博多港に入航して修理を済ませ前示のとおり出航したもので、停泊中、修理作業に立ち会い、いつものように休息をとることができなかったことから、疲労が蓄積したうえ睡眠不足の状態となっていた。
 A受審人は、発航時から単独で船橋当直に就いて福岡湾を北上した後、14時26分玄界島灯台から026度(真方位、以下同じ。)1,600メートルの地点に達したとき、針路を福岡県小呂島東方約2海里に向ける322度に定めて自動操舵とし、折からの北東風により左方に9度ばかり圧流されながら9.9ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、玄界灘を北上するにつれ北東風が次第に強まる状況から、操業をあきらめて郷ノ浦漁港に帰航することを考えながら、とりあえず目的漁場の近くまで行き様子を見ることにし、操舵室内で立って見張りに当たり続航した。
 14時56分ごろA受審人は、強い疲労を感じて眠気を催すようになったが、折から前方に他船も見当たらなかったことから、少しの間楽な姿勢をとるだけなので大丈夫と思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、操舵室床に座り壁に背をもたせた姿勢で当直を続けているうち、いつしか居眠りに陥った。
 こうして、福昇丸は、居眠り運航のまま左方に圧流されながら小呂島の小呂島漁港北防波堤に向かって進行し、15時50分小呂島港西防波堤灯台から070度260メートルの地点において、原針路、原速力のまま、同漁港北防波堤東側の消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力5の北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、福昇丸は、船底に破口を生じ、その後時化のために放置されているうちに沈没し、廃船処分された。

(原因)
 本件乗揚は、玄界灘を壱岐島北方の漁場に向け北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、小呂島の小呂島漁港北防波堤東側の消波ブロックに向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就き自動操舵により玄界灘を漁場に向け北上中、疲労の蓄積と睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、休息中の甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、少しの間楽な姿勢をとるだけなので大丈夫と思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、床に座り壁に背をもたせているうちに居眠りに陥り、居眠り運航となり小呂島漁港北防波堤東側の消波ブロックに向かって進行して乗り揚げ、福昇丸の船底に破口を生じさせ、その後沈没を招き廃船処分に至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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