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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年広審第6号
件名

押船たかちほ丸被押台船東亜3001乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年4月16日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(勝又三郎、竹内伸二、西林 眞)

理事官
上中拓治

受審人
A 職名:たかちほ丸船長 海技免状:三級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:たかちほ丸一等機関士 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
たかちほ丸・・・損傷ない
東亜3001 ・・・前部船底外板に多数の亀裂及び破口等

原因
原因 たかちほ丸・・・水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月19日02時50分
 山口県 大畠瀬戸

2 船舶の要目
船種船名 押船たかちほ丸
総トン数 204トン
全長 43.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,353キロワット

船種船名 台船東亜3001
総トン数 4,405トン
全長 94.50メートル
22.00メートル
深さ 6.00メートル

3 事実の経過
 たかちほ丸は、2基2軸を装備した鋼製押船兼引船で、A及びB両受審人ほか5人が乗り組み、海砂6,400トンを積載し、船首尾とも4.8メートルの等喫水となった鋼製台船東亜3001の船尾中央部に船首部を結合して全長127メートルの押船列(以下「たかちほ丸押船列」という。)をなし、船首2.2メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成12年12月18日17時40分山口県防府市佐波川河口を出航し、同県大島郡乙子島(おいとしま)に向かった。
 これより先、A受審人は、同日17時00分に佐波川河口で積荷を終え、目的地が乙子島であることを連絡されたので、大畠瀬戸を経由して同島に向かうこととしたものの、自船には同瀬戸の浅礁等が詳細に記入された海図第152号が備えられておらず、自分自身は同瀬戸の通航経験を有していなかったが、B受審人が経験していることを知ったので同人に同瀬戸通航時の操舵を依頼し、これを了承されたことで、同人からその水路状況の説明を受けないまま、同人に操舵させれば通航ができると思い、自ら海図第152号を取り寄せて水路事情を調べるとかして、事前に十分な水路調査を行わなかったので、戒善寺礁灯浮標(北方位標識)の南側に浅礁や暗岩が存在し、東行する船舶は同灯浮標の北側の指定経路を通航すること及びB受審人が過去に1回だけ西行したことがあることを知らなかった。
 また、B受審人は、かつて船長が休暇で下船している間のみたかちほ丸押船列の船長職を執った経験があり、その際数ヶ月前に1回だけ大畠瀬戸を西行したことから、A受審人の依頼を引き受けたものであるが、海図第152号を一見したことも、東行の経験がなかったにもかかわらず、同人が操船指揮を執るので、困ったときには指示を仰げばよいと思い、同人に対して大畠瀬戸の水路事情についてあまり承知していない旨を申出しないまま操舵を引き受けた。
 翌19日01時27分少し過ぎA受審人は、山口県柳井市横添鼻東方沖合を通過したとき、昇橋したB受審人と船橋当直を交替して一旦降橋し、02時30分少し過ぎ大畠航路第3号灯浮標(以下、灯浮標の名称については「大畠航路」を省略する。)から173度(真方位、以下同じ。)420メートルの地点に達したとき、大畠瀬戸通行中の操船指揮を執るつもりで再び昇橋し、B受審人の操舵模様を見守った。
 一方、B受審人は、第1号灯浮標及び第2号灯浮標を左舷側至近に見て北上したのち、02時33分大磯灯台から254度1.5海里の地点に達したとき、A受審人の操船指揮のもと、左舷船首3度約1.4海里に戒善寺礁灯浮標を初認し、針路を大島大橋橋梁灯(C1灯)に向首する070度に定め、機関を全速力前進にかけ、5.0ノットの押航速力で手動操舵により進行した。
 02時44分B受審人は、大磯灯台から259度1,070メートルの地点に達し、北方位標識である戒善寺礁灯浮標が左舷船首10度980メートルになったとき、A受審人に対してどちら側を通るか尋ねたところ、どちら側も通ることができるとの指示を得て、同灯浮標の南側を航過するつもりで、原針路、原速力で続航中、02時50分大磯灯台から307度200メートルの地点で、たかちほ丸押船列の東亜3001が沖ノ離岩の浅礁と暗岩に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮流は憩流時であった。
 A受審人は、身体が前のめりになり、船体が停止したことで乗り揚げたことを認め、事後の措置にあたった。
 乗揚の結果、たかちほ丸は損傷がなく、東亜3001の前部船底外板に多数の亀裂及び破口を伴う凹損と擦過傷を生じたが、来援した曳船によって引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、大畠瀬戸を東行する際、水路調査が不十分で、北方位標識である戒善寺礁灯浮標の北側を航行せず、戒善寺礁の浅礁と暗岩とに向かって進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは、船長が事前に大畠瀬戸の水路調査を十分に行わなかったことと、船橋当直者が同瀬戸の水路事情についてあまり承知していない旨を申出しなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、大畠瀬戸を東行する場合、同瀬戸の通航経験がなかったのであるから、海図第152号を入手するなどして、事前に同瀬戸の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、B受審人から通航経験があるということを聞いただけで事前に水路状況の説明を受けないまま同人に操舵させれば通航することができると思い、事前に同瀬戸の水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、北方位標識である戒善寺礁灯浮標の北側を航行せず、戒善寺礁の浅礁と暗岩に向かって進行して乗り揚げ、東亜3001の前部船底外板に多数の亀裂及び破口を伴う凹損と擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、夜間、大畠瀬戸を通航するにあたり、A受審人が通航経験がないということで、同人からその操舵を依頼された場合、大畠瀬戸の水路事情についてあまり承知していないことを申出すべき注意義務があった。しかるに、B受審人は、A受審人が操船指揮を執るので、困ったときには指示を仰げばよいと思い、同人に対して同瀬戸の水路事情についてあまり承知していないことを申出しなかった職務上の過失により、戒善寺礁の浅礁と暗岩に向かって進行して乗り揚げ、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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