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平成13年広審第93号
件名

旅客船ニュー豊予乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年3月18日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(伊東由人、竹内伸二、坂爪 靖)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:ニュー豊予船長 海技免状:四級海技士(航海)
指定海難関係人
B 職名:Kフェリー株式会社運航管理補助者

損害
左右舷推進器翼に曲損、船尾船底部に擦過傷

原因
船位確認不十分
視界制限時の入港中止を指導しなかったこと

主文

 本件乗揚は、入港に際し、視界制限時における運航管理規程を遵守しなかったばかりか、船位の確認を十分に行わなかったことによって発生したものである。
 運航管理補助者が、視界制限時の入港中止を指導しなかったことは、本件発生の原因となる。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月21日08時15分
 愛媛県 三崎港

2 船舶の要目
船種船名 旅客船ニュー豊予
総トン数 699トン
全長 71.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,942キロワット

3 事実の経過
 ニュー豊予(以下「豊予」という。)は、大分県佐賀関港と愛媛県三崎港間の定期運航に従事する2基2軸を装備した旅客船兼自動車渡船で、A受審人ほか7人が乗り組み、旅客37人、乗用車17台及び二輪車3台を載せ、船首2.8メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成13年7月21日07時00分佐賀関港を発し、08時10分に三崎港Kフェリー専用桟橋(以下「桟橋」という。)に着桟する予定で同港に向かった。
 ところで、Kフェリー株式会社は、自社の管理する船舶の輸送の安全を確保する目的で運航管理規程を定め、船長の職務権限に属する事項を除く安全業務全般の統括責任者として、佐賀関営業所に運航管理者を置いていた。同管理者は、佐賀関及び三崎営業所にそれぞれ1人の運航管理代行者と順位を付して数人の運航管理補助者を指名し、運航管理者がその職務を執ることができない場合は、前示順位に従って運航管理代行者或いは同補助者が自動的に職務を代行することになっていた。また、運航管理規程中、船長は基準航行を遵守すべきことが定められていたが、航海中に視界が制限された場合、視程が2,000メートル以下となったときは基準航行を中止して当直体制を強化すること、500メ−トル以下となったときは入港を中止し、適宜の海域で錨泊するなどの措置をとることなどが定められていた。
 A受審人は、07時07分佐賀関北方航路灯浮標を航過し、機関を全速力前進にかけ15.2ノットの速力としたのち、一等航海士に船橋当直を引き継ぎ自室で休息していたところ、同時45分佐田岬灯台南東方1海里の地点で、視界が悪化したとの報告を受けて昇橋し、視程が2,000メートル以下になっていたので、船首に甲板長と甲板員を、船尾に甲板手1人を配して見張りを強化し、急速に視界が悪化する状況下、三崎港に向け進行した。
 07時57分A受審人は、伊予三崎港井野浦第1防波堤灯台から249度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点で、針路を060度に定め、乗組員を入港配置につけ、自らは主機操作スタンドの後方で操船指揮と機関操作を行い、一等航海士をレーダー監視に、甲板員を操舵にそれぞれあたらせて続航し、08時03分桟橋まで約2,000メートルの地点で港域内に入ったとき、三崎営業所から桟橋付近の視程が70メートルとなっているとの連絡を受け、周囲の視程も100メートル以下になり入港中止条件に達していることを知ったが、それまでの経験から三崎港では短時間で霧が晴れることが多かったので桟橋に接近するころには視界が回復するものと思い、運航管理規程に従い、速やかに錨泊するなどして、入港を中止することなく、全速力のまま桟橋に向けて進行した。
 一方、B指定海難関係人は、08時少し前に三崎営業所に出勤し、前任者から「07時45分に、桟橋付近は2キロメートル弱の視程であると船に連絡をした。」旨の引継を受けて運航管理業務を交替し、そのころ事務所から桟橋の先端がぼんやり見える程度であるので視程が70メートルに制限されているのを知り、入航中の豊予に対してその旨連絡したが、入港を中止するよう指導しないで同船の到着を待った。
 こうして、A受審人は、08時05分減速を開始し、同時07分伊予三崎港三崎第1防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から225度680メートルの地点で、4.5ノットとなり、操舵手に針路を桟橋に向けるよう指示し、操舵手がレーダー画面を見て041度の針路としたのち、一等航海士に桟橋までの距離を適宜報告するよう命じ、同時09分機関を停止して惰力で進行した。
 08時12分半A受審人は、防波堤灯台に70メートルまで接近したとき、船首配置員からの報告を受けて右舷船首30度に同灯台を初認して予定針路から外れていることに気付いたが、その後レーダーで船位を十分に確認しないで、舵中央を命じて両舷の機関を後進にかけたまま、急ぎ右舷側窓際に行って海面を見て行きあしを確めていたところ、左舷機関の操縦ハンドルが右舷機関より大きく引かれ左回頭しながら後進し、防波堤南方の陸岸に接近していることに気付かず、後進行きあしが3.5ノットとなったのを認め、機関を停止して惰力で後進中、08時15分防波堤灯台から176度200メートルの浅礁に、船首が320度を向いて2.0ノットの残存速力となったとき船尾が乗り揚げた。
 当時、天候は霧で風はほとんどなく、潮侯は下げ潮の初期で視程は約70メートルであった。
 乗揚の結果、左右舷推進器翼に曲損及び船尾船底部に擦過傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、愛媛県三崎港内の桟橋に向けて航行中、霧により同港内の視程が入港中止基準以下となった際、運航管理規程を遵守して入港を中止しなかったばかりか、船位の確認を十分に行わなかったことによって発生したものである。
 運航管理補助者が、入航中の豊予に対して入港中止を指導しなかったことは、本件発生の原因となる。

(受審人等の所為)
 A受審人は、三崎港内の桟橋に向けて航行中、霧により同港内の視程が入港中止基準以下となった場合、運航管理規程を遵守して、視界が回復するまで適当な水域で錨泊するなど入港を中止すべき注意義務があった。しかるに、同人は、それまでの経験から三崎港では短時間で霧が晴れることが多かったので、桟橋に接近するころには視界が回復するものと思い、運航管理規程を遵守して入港を中止しなかった職務上の過失により、桟橋に向けて航行を続けて乗揚を招き、左右舷推進器翼に曲損を船尾船底部に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人が、港内の視程が入港中止条件に達した際、入航中の豊予に対し入港中止を指導しなかったことは、本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては、深く反省していることに徴し、勧告しない。

 よって主文のとおり裁決する。 





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