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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年広審第103号
件名

救急艇しまどり乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年2月26日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(横須賀勇一)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:しまどり船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
両舷推進器及び舵に曲損、船底外板に凹損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月12日23時30分
 愛媛県興居島北東岸

2 船舶の要目
船種船名 救急艇しまどり
総トン数 13トン
全長 13.99メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 470キロワット

3 事実の経過
 しまどりは、愛媛県温泉郡中島町の島嶼にある各診療所へ中島中央病院の医師と看護婦を巡回診療させるための運航に従事する軽合金製救急艇で、A受審人が1人で乗り組み、救急患者を同県松山港まで運んだ後、付添いの医師と看護婦を乗せ、船首0.6メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成13年7月12日23時20分松山港を出航し、同町中島港への帰路に就いた。
 A受審人は、海図を備えていなかったものの、平素高浜瀬戸周辺を頻繁に航行して水路事情を知っていたので、操舵室右舷側に設置されたレーダーやGPSを適宜使用して興居島東岸との接近模様を確かめながら、手動操舵により高浜瀬戸を北上した。
 23時23分A受審人は、頭埼灯台から192度(真方位、以下同じ。)2.4海里の地点に達したとき、針路を予定転針点である興居島北東端の同灯台沖に向けて018度に定め、機関を回転数毎分2,100の前進にかけ、21.0ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、霧のため視界が著しく狭められた状況の下、操舵室舵輪後方の椅子に腰掛けて前路の見張りにあたり、23時28分興居島馬磯鼻南東方900メートル沖合に至り、予定転針点に近づいたことからレーダーレンジを1.5から0.75海里レンジとして続航中、同時29分少し過ぎ、頭埼灯台から142度600メートルの地点に達したとき、頭埼灯台の灯光も視認できなかったが、一瞥しただけで馬磯鼻の映像を頭埼と思い込み、レーダーにより船位を十分に確認することなく、針路を予定転針点の手前で293度とし、馬磯鼻沖の岩礁に向首進行する状況となり、これに気付かず進行中、23時30分しまどりは、頭埼灯台から135度100メートルの地点において馬磯鼻沖の岩礁に乗り揚げた。
 当時、天候は霧で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期で、視程は約100メートルであった。
 乗揚の結果、両舷推進器及び舵に曲損などを生じたほか、船底外板に凹損を生じたが、自然離礁したものの自力航行が不能となり、救援艇によって中島港に引き付けられたのち、いずれも新替または修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、霧のため視界が著しく制限された愛媛県高浜瀬戸を、救急患者の移送を終えて同県中島港に帰航するため興居島頭埼沖に向けて北上中、レーダーによる船位の確認が不十分で、転針時機を失し、同島馬磯鼻沖の岩礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、霧のため視界が著しく制限された高浜瀬戸において、救急患者の移送を終えて松山港から中島港に帰航するため興居島頭埼沖に向けて北上する場合、転針目標である頭埼灯台の灯光を視認できなかったのだから、興居島沖の岩礁に接近しないよう、使用中のレーダーによって船位を十分確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、一瞥しただけで馬磯鼻のレーダー映像を頭埼と思い込み、使用中のレーダーによって船位を十分確認しなかった職務上の過失により、予定変針点の手前で転針し、馬磯鼻沖の岩礁に向首進行して乗揚を招き、両舷推進器などに損傷及び船底外板に凹損を生じさせるに至った。





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