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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第107号
件名

貨物船美保丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年2月21日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:美保丸一等航海士 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船首船底外板に亀裂、左舷船首外板に凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年2月8日20時10分
 福井県甲楽城(かぶらぎ)漁港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船美保丸
総トン数 443トン
全長 73.71メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 美保丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、空倉のまま、船首1.85メートル船尾3.90メートルの喫水をもって、平成13年2月8日19時10分福井県敦賀港を発し、関門港へ向かった。
 ところで、A受審人は、有限会社M海運の社長で、実弟を船長として雇い入れ、自らが航海計画の立案を行っており、また、美保丸の航海当直は、00時00分から05時00分及び11時30分から17時00分を船長が、05時00分から11時30分及び17時00分から24時00分をA受審人がそれぞれ単独で就く2直体制となっていた。
 A受審人は、出港後間もなく船橋当直に就き、19時29分敦賀港防波堤灯台から005度(真方位、以下同じ。)2.3海里の地点に達したとき、針路を356度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 A受審人は、明神埼に並航したら、左舷方の海岸線に沿う針路に転じる予定で、敦賀湾を北上した。
 19時35分ごろA受審人は、暖房された船橋で、舵輪後方に置いた背もたれ付きいすに座り当直にあたっているうち、海上平穏で視界も良く、前路に気になる他船も見当たらないことから気が緩み、眠気を催すようになったが、転針地点が近いので、よもや居眠りすることはないと思い、いすから立ち上がるなど、居眠り運航の防止措置をとることなく続航したところ、間もなく居眠りに陥った。
 19時40分半A受審人は、明神埼を左舷正横に航過したが、居眠りをしていてこのことに気付かず、針路を転じることができないまま甲楽城漁港入口に向首進行し、20時10分少し前、ふと目を覚まして船首至近に灯台の灯光を認め、機関を後進としたが及ばず、美保丸は、甲楽城漁港北防波堤東端角に左舷船首外板が接触して船首が右方に振られ、20時10分甲楽城港北防波堤灯台から025度70メートルの浅所に、船首を020度に向けて、11.0ノットの対地速力で乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船首船底外板に亀裂を伴う損傷及び左舷船首外板に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、福井県敦賀港から関門港へ向け敦賀湾を北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県甲楽城漁港入口に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、福井県敦賀港から関門港へ向け敦賀湾を北上中、眠気を催すようになった場合、居眠り運航とならないよう、いすから立ち上がるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、転針地点が近いので、よもや居眠りすることはないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いすに座ったまま居眠りに陥り、甲楽城漁港入口に向首したまま進行して乗揚を招き、船首船底外板に亀裂を伴う損傷及び左舷船首外板に凹損を生じさせるに至った。





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