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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年長審第56号
件名

貨物船エスケイ7号乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年1月23日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(亀井龍雄、平田照彦、河本和夫)

理事官
向山裕則

損害
船底外板に亀裂

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月21日09時25分
 長崎県江ノ島北西方沖合浅礁

2 船舶の要目
船種船名 貨物船エスケイ7号
総トン数 1,980.70トン
登録長 82.97メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,206キロワット

3 事実の経過
 エスケイ7号は、船尾船橋型鋼製貨物船で、船長Lほか13人が乗り組み、セメント2,601トンを積み、船首5.09メートル船尾5.42メートルの喫水をもって、平成13年7月20日06時45分大韓民国三陟港を発し、沖縄県金武中城(きんなかぐすく)港に向かった。
 L船長は、船橋当直体制を0−4時直二等航海士と甲板手、4−8時直一等航海士と甲板手、8−0直船長と甲板手としていたが、通常、朝の8−0時直のみ甲板手を甲板作業につかせ1人で当直を行っていた。
 L船長は、朝鮮半島東岸、対馬西岸、平戸島西岸沖を通り、翌21日08時00分尾上島灯台から320度(真方位、以下同じ。)6.0海里の地点で1人で当直につき、針路を178度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。
 08時21分L船長は、尾上島灯台から286度3.9海里の地点で大立島東方に向かう予定転針点に達したが、左舷方の転針方向には多数の漁船が集団で操業していたので迂回することとし同針路のまま進行した。
 L船長は漁船群を左舷方に見ながら南下を続け、同漁船群の南端をほぼ左舷正横付近に見るようになったので転針するととし、08時49分尾上島灯台から226度5.0海里の地点に達したとき船位を海図に記入し、大立島の西方に位置する江ノ島の東方を通ることに変更し、針路136度を得て自動操舵のまま左転を開始した。
 L船長は、自動操舵装置の針路設定ダイヤルを10度ずつ左に回しながら転針を行い、自分では針路を136度に設定したつもりが、実際には146度に設定してしまった。
 L船長は転針直後前方に他船を見かけなかったことから、金武中城港及び同港に至るまでの経路の水路事情等を調べておくこととし、針路の確認を行わないまま船橋右舷後部の海図台に後方を向いて立ち、必要海図等を出して調べにかかった。
 L船長は、海図で江ノ島周辺には多数の浅礁があることを知っていて同付近に接近したとき船位を確認すべき状況にあったが、調べものに専心して船位の確認を行わなかったため、江ノ島北西方約1海里半沖合の小瀬と称する浅礁に向かって進行していることに気付かなかった。
 L船長は、調べものを続けながら進行し、09時25分江ノ島灯台から330度2.5海里の地点において、原針路、原速力のまま小瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船首から機関室前面までの船底外板に亀裂を伴う凹損を生じたが、のちサルベージの支援で離礁した。

(原因)
 本件乗揚は、長崎県平戸島南方沖合の周囲に多数の浅瀬が存在する江ノ島付近に向かって航行中、船位の確認が不十分で、同島北西沖の浅瀬に向首進行したことによって発生したものである。

 よって主文のとおり裁決する。  





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