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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第23号
件名

貨物船第十八紀の国丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年1月18日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(工藤民雄、安藤周二、織戸孝治)

理事官
大石義朗

受審人
A 職名:第十八紀の国丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
指定海難関係人
B 職名:第十八紀の国丸甲板長

損害
船首部船底に凹損及びビルジキールに損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年4月22日01時10分
 瀬戸内海小豆島地蔵埼

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十八紀の国丸
総トン数 498トン
全長 74.68メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット

3 事実の経過
 第十八紀の国丸(以下「紀の国丸」という。)は、砂利、土砂及び鉱滓(こうさい)などの輸送に従事する船尾船橋型の砂利運搬船兼貨物船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか3人が乗り組み、鉱滓1,490トンを載せ、船首3.0メートル船尾4.8メートルの喫水をもって、平成11年4月21日15時25分和歌山県新宮港を発し、広島港に向かった。
 A受審人は、船橋当直をB指定海難関係人、一等航海士及び自らの3人による単独4時間交替の3直制としており、毎00時から04時までの時間帯を同指定海難関係人に行わせていた。
 ところで、B指定海難関係人は、当時、6時間ほどの休息をとっていたものの、寝付きが悪く睡眠不足の状態となっており、連日の航海、入港次いで荷役後すぐ出港とピストン航海が続いていて、航海当直のほかに船体各部のペンキ塗りやロープ類の補修などの日常整備作業、更に食事当番も担当していたことから疲労が蓄積していた。
 A受審人は、鳴門海峡を通峡して播磨灘に入り、23時50分引田鼻灯台から055度(真方位、以下同じ。)7.9海里の地点に差し掛かったとき、昇橋したB指定海難関係人に単独の当直を行わせることにしたが、その際、同人に特に変わった様子が見られなかったことから大丈夫と思い、眠気を催したときには速やかに報告するよう指示することなく、当直を交替して降橋した。
 こうして、B指定海難関係人は、操舵室右舷側前面窓の後方に立って時々同室内を左右に移動しながら見張りに当たり、翌22日00時23分地蔵埼灯台から107度9.9海里の地点に達したとき、針路を286度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 00時41分B指定海難関係人は、前路の3隻の漁船を左舷側に避ける304度の針路に転針し、このころ足腰の疲れを感じるようになったので、舵輪後方の背もたれ肘掛け付きの椅子に腰を掛けて見張りに当たったところ、間もなく眠気を催すようになったが、チューインガムをかんでいるから眠ることはあるまいと思い、船長に報告して当直を交替するなどの居眠り運航の防止措置をとらないで続航し、同時45分半、前示漁船が左舷側に替わったとき、針路を地蔵埼灯台の明かりを正船首少し左に見る292度に転じて自動操舵とし、そのまま椅子に腰を掛けて見張りに当たっているうち、いつしか居眠りに陥った。
 紀の国丸は、当直者が居眠りを続け、備讃瀬戸東航路東口に向けて転針されないまま小豆島地蔵埼東側の海岸に向首進行し、01時10分地蔵埼灯台から059度1,600メートルの地点において、原針路、原速力で海岸に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力3の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 A受審人は、自室で就寝中、衝撃を感じて目覚め、急いで昇橋して乗揚を知り、事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、紀の国丸は、船首部船底に凹損及びビルジキールに損傷を生じたが、高潮時を待って自力離礁し、のち修理された。


(原因)
 本件乗揚は、夜間、播磨灘西部を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、備讃瀬戸東航路東口に向けて転針がなされず、小豆島地蔵埼東側の海岸に向首進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは、船長が、無資格の船橋当直者に対して眠気を催したときには報告するよう指示しなかったことと、同当直者が、眠気を催したとき船長に報告しなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、播磨灘を西行中、無資格の甲板長に単独の船橋当直を行わせる場合、眠気を催したときには速やかに報告するよう指示すべき注意義務があった。ところが、同受審人は、当直交替時、特に変わった様子が見られなかったことから大丈夫と思い、眠気を催したときには速やかに報告するよう指示しなかった職務上の過失により、当直者が眠気を催した際に報告が得られず、当直者が居眠りに陥って居眠り運航となり、小豆島地蔵埼東側の海岸に乗揚げ、紀の国丸の船首部船底に凹損及びビルジキールに損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人が、夜間、単独の船橋当直に就いて播磨灘西部を自動操舵により西行中、疲れと睡眠不足から眠気を催すようになった際、船長に報告して当直を交替するなどの居眠り運航の防止措置をとらなかったことは、本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては、勧告しない。

 よって主文のとおり裁決する。





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