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平成13年那審第32号
件名

遊漁船アユナ遊漁船大将丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年1月17日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:アユナ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:大将丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
アユナ・・・右舷船首部に破口及び亀裂
大将丸・・・右舷船尾部外板及び操舵室に破口

原因
アユナ・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
大将丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、アユナが、見張り不十分で、漂泊中の大将丸を避けなかったことによって発生したが、大将丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。 

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年2月17日14時30分
 沖縄島南方沖

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船アユナ 遊漁船大将丸
総トン数 4.9トン 4.9トン
登録長 11.70メートル 11.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 235キロワット 279キロワット

3 事実の経過
 アユナは、FRP製遊漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、釣り客5人を乗せ、沖釣りの目的で、船首0.56メートル船尾1.22メートルの喫水をもって、平成13年2月17日06時15分沖縄県与根漁港を発し、沖縄島南方の浮魚礁において釣りを行い、14時11分喜屋武埼灯台から192度(真方位、以下同じ。)13.8海里の地点を発進し、帰途に就いた。
 発進時、A受審人は、針路を008度に定め、東寄りの風浪が強かったので機関を半速力前進に掛け、8.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 A受審人は、波しぶきが操舵室前面の窓ガラスにかかる状況のもと、レーダーを作動させて2.5海里レンジとし、操舵室右舷側の椅子に腰掛けて見張りに当たった。
 14時27分A受審人は、喜屋武埼灯台から193度11.7海里の地点に達したとき、正船首740メートルのところに漂泊する大将丸を視認することができ、その後、衝突のおそれがある態勢で同船に接近していることを認め得る状況であった。しかし、同受審人は、釣場発進時、周囲に他船を認めなかったことから付近に他船はいないと思い、レーダーを活用するなどして前方の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、大将丸を避けないで続航した。
 アユナは、原針路、原速力のまま進行中、14時30分わずか前A受審人が船首至近に迫っている大将丸を初めて認めたがどうすることもできず、14時30分喜屋武埼灯台から193度11.3海里の地点において、その右舷船首部が大将丸の右舷船尾部に前方から60度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力4の東風が吹き、視界は良好であった。
 また、大将丸は、FRP製遊漁船で、B受審人が1人で乗り組み、釣り客7人を乗せ、沖釣りの目的で、船首0.63メートル船尾1.30メートルの喫水をもって、2月17日06時20分与根漁港を発し、沖縄島南方の釣場に至って移動しながら釣りを行い、14時10分前示衝突地点付近において、機関を停止回転として釣りを再開した。
 14時27分B受審人は、船首が128度を向いていたとき、右舷船首60度740メートルのところに北上中のアユナを視認することができ、その後、同船が衝突のおそれがある態勢で接近していることを認め得る状況であった。しかし、同受審人は、釣れた魚の取り込みを手伝うなど釣り客の世話に気を取られていて、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま釣りを続けた。
 大将丸は、14時30分わずか前B受審人が右舷側至近に迫っているアユナを初めて認めたがどうすることもできず、128度に向首したまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、アユナは、右舷船首部に破口及び亀裂を生じ、大将丸は、右舷船尾部外板及び操舵室に破口を生じ、右舷船尾部ブルワークを損傷したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、沖縄島南方沖において、アユナが、釣場から帰港のため北上する際、見張り不十分で、前路で漂泊中の大将丸を避けなかったことによって発生したが、大将丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、波しぶきが操舵室前面の窓ガラスにかかる状況のもと、沖縄島南方沖において、釣場から帰港のため北上する場合、前路で漂泊中の大将丸を見落とさないよう、レーダーを活用するなどして前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、釣場発進時、周囲に他船を認めなかったことから付近に他船はいないと思い、レーダーを活用するなどして前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、漂泊中の大将丸に気付かず、同船を避けずに進行して衝突を招き、アユナの右舷船首部に破口及び亀裂を、大将丸の右舷船尾部外板及び操舵室に破口を、右舷船尾部ブルワークに損傷を、それぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、沖縄島南方沖において、漂泊して釣りを行う場合、右舷方から接近するアユナを見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、釣れた魚の取り込みを手伝うなど釣り客の世話に気を取られていて、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、右舷方から接近するアユナに気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま釣りを続け、同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:17KB)





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