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平成13年広審第14号
件名

漁船第八えひめ丸養殖施設損傷事件

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成13年12月19日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(勝又三郎、竹内伸二、中谷啓二)

理事官
岩渕三穂

受審人
A 職名:第八えひめ丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
えひめ丸・・・損傷ない
魚類養殖用施設の小割2箇所を損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件養殖施設損傷は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月9日01時50分
 愛媛県奥地湾

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八えひめ丸
総トン数 120トン
全長 39.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 669キロワット

3 事実の経過
 第八えひめ丸(以下「えひめ丸」という。)は、まき網漁業の漁獲物運搬に従事する船尾船橋型鋼製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、あじまき網漁の目的で、船首1.80メートル船尾3.80メートルの喫水をもって、平成12年8月8日16時50分僚船4隻とともに愛媛県三瓶港を発し、豊後水道の漁場に向かった。
 ところで、えひめ丸の船橋当直体制は、三瓶港を発航後漁場に至るまでと、操業を終えて同港に帰航するまでとを一等航海士が当たり、操業開始から終了までをA受審人が行っていたことから、同受審人は操業中に休息をとることはできなかった。また、同港は奥地湾の湾奥に位置し、湾口付近の両岸寄りには魚類養殖用施設が設置されており、同受審人はこれらの施設について良く知っていた。
 発航後A受審人は、操船を一等航海士に引き継いで休息し、同日18時00分愛媛県日振島北方沖合の漁場に到着したので自ら操船に当たり、僚船とともに魚群探索を行うなどして第1回目の操業を開始し、その後豊後水道の漁場に移動して第2回目の操業を行った。
 A受審人は、あじ1.5トンを漁獲したところで、破網したため操業を止めて帰航することとなり、翌9日00時00分水ノ子島灯台から319度(真方位、以下同じ。)4.8海里の地点で、針路を奥地湾口に向く042度に定め、機関を全速力前進にかけ11.5ノットの対地速力で手動操舵により発進した。
 A受審人は、漁ろう長から奥地湾口で夜明けまで錨泊するとの連絡を受け、錨泊中に休息がとれると考え、すでに一等航海士が舵輪後方の床から70センチメートル高い絨毯を敷いた床の間に、漁場発進時から休息していたが、同人を起こさずに錨泊予定地点まで自ら当直することとした。
 01時37分A受審人は、大崎鼻灯台から312度1.1海里の地点に達したとき、同灯台を右舷正横に認めたのち、多少疲労を感じたので船橋内の前示床の間に座り当直を続けているうちに、眠気を催したが、錨泊予定地点が間近になったのでそのまま単独で当直を続けようと思い、立って当直を行うなり、休息中の一等航海士を起こして2人当直とするなどして居眠り運航の防止措置をとることなく進行した。
 A受審人は、その後間もなく居眠りに陥り、01時47分ごろ権現埼南西方600メートル沖合の錨泊予定地点を通過したが、居眠りに陥ってこのことに気付かないまま続航中、陸上の養殖施設盗難防止用探照灯の明かりで照射されて目覚め、機関を停止したものの、えひめ丸は、01時50分三瓶二及碁石消波堤灯台から239度1,630メートルの地点において、原針路のまま、速力が7.0ノットとなったとき、魚類養殖用施設に乗り入れた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は高潮時であった。
 その結果、魚類養殖用施設の小割2箇所を損傷し、えひめ丸は同施設から僚船により引き出された。

(原因)
 本件養殖施設損傷は、夜間、豊後水道の漁場から愛媛県三瓶港に向け帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、同港に至る奥地湾口の西岸に設けられた魚類養殖用施設に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、操業を終えて豊後水道の漁場から愛媛県三瓶港に向け、単独で操舵操船に当たって帰航中、操業による疲労のため眠気を催した場合、居眠りに陥ることのないよう、立って当直を行うなり、側で休息中の一等航海士を起こして2人で当直を行うなどして居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は、錨泊予定地点が間近になったのでそのまま単独で当直を続けようと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、操業による疲労からいつしか居眠りに陥り、三瓶港に至る湾口での錨泊予定地点を通過して同湾口の西岸に設置された魚類養殖用施設に向首進行して乗り入れ、同養殖用施設の小割2箇所を損傷させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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