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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年門審第107号
件名

貨物船第三丸住丸漁船福栄丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年12月17日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(米原健一)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:第三丸住丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:福栄丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
丸住丸・・・右舷船首部外板に擦過傷
福栄丸・・・左舷船首部かんぬき及びブルワークなどに損傷

原因
丸住丸・・・動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
福栄丸・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第三丸住丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る福栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、福栄丸が、見張り不十分で、避航を促す有効な音響信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年2月21日07時30分
 豊後水道鶴御埼北東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三丸住丸 漁船福栄丸
総トン数 199トン 4.0トン
全長 55.46メートル 11.13メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 588キロワット  
漁船法馬力数   80

3 事実の経過
 第三丸住丸(以下「丸住丸」という。)は、専らロール紙の輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、新聞用ロール紙550トンを載せ、船首2.20メートル船尾3.20メートルの喫水をもって、平成12年2月20日17時55分愛媛県三島川之江港を発し、鹿児島県鹿児島港に向かった。
 A受審人は、船橋当直を自らと一等航海士との単独6時間交替とし、瀬戸内海を西行したのち豊後水道に入り、翌21日05時50分大分県沖無垢島東方沖合3海里付近で前任者から引き継いで船橋当直に就き、07時18分先ノ瀬灯台から079度(真方位、以下同じ。)1.7海里の地点に達したとき、針路を200度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で進行した。
 定針したあとA受審人は、操舵室内左舷側前部に置いていたいすに腰を掛けて見張りに当たり、07時25分鶴御埼灯台から057度2.5海里の地点に差し掛かったとき、右舷船首35度1.1海里のところに福栄丸を初めて視認し、同船が自船の前路を左方に横切る態勢であることを知ったものの、福栄丸が波を切って航行する状況を一瞥(いちべつ)し、同船は速力が速いので自船の前路を無難に替わるものと思い、福栄丸から目を離し、動静監視を十分に行うことなく続航した。
 A受審人は、07時27分福栄丸が同方位1.250メートルとなり、その後、衝突のおそれがある態勢で接近したが、依然動静監視不十分で、このことに気付かず、同船の進路を避けることなく進行中、同時29分半ふと視線を右舷船首方に向けたところ、至近に同船を認め、急いで立ち上がって舵輪のところに駆け寄り、手動操舵に切り替えて左舵一杯をとったが、及ばず、07時30分鶴御埼灯台から072度1.9海里の地点において、丸住丸は、原速力のまま、船首が131度を向いたとき、その右舷船首部が、福栄丸の左舷船首部に後方から30度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力5の北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、視界は良好であった。
 また、福栄丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、ふぐ一本釣り漁を行う目的で、船首0.20メートル船尾1.25メートルの喫水をもって、同月21日07時00分大分県梶寄漁港を発し、鶴御埼東方沖合5海里の漁場に向かった。
 B受審人は、舵輪後方に立って見張りに当たり、元ノ間海峡を経由して豊後水道に出たのち、07時24分鶴御埼灯台から055度1.3海里の地点に達したとき、針路を101度に定めて自動操舵とし、少し波が高かったことから、機関を半速力前進にかけて7.7ノットの対地速力で進行した。
 定針したあとB受審人は、漁場に近づいたので上下に分かれた雨合羽を着るなどの身支度を始め、07時27分鶴御埼灯台から065度1.6海里の地点に差し掛かったとき、左舷船首46度1.250メートルのところに丸住丸を視認でき、その後、同船の方位が変わらず、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するのを認め得る状況であったが、雨合羽を着るなどの身支度を行う少しの間であれば大丈夫と思い、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、避航を促す有効な音響信号を行わず、更に接近しても衝突を避けるための協力動作をとることもなく続航中、福栄丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、丸住丸は、右舷船首部外板に擦過傷を生じ、福栄丸は、左舷船首部かんぬき及びブルワークなどに損傷をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、大分県鶴御埼北東方沖合の豊後水道において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、南下中の丸住丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る福栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、東行中の福栄丸が、見張り不十分で、避航を促す有効な音響信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、大分県鶴御埼北東方沖合の豊後水道を単独の船橋当直に当たって南下中、前路を左方に横切る態勢で接近する他船を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、福栄丸が波を切って航行する状況を一瞥し、同船は速力が速いので自船の前路を無難に替わるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、福栄丸が衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず、その進路を避けることなく進行して同船との衝突を招き、丸住丸の右舷船首部外板に擦過傷を、福栄丸の左舷船首部かんぬきなどに損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 B受審人は、大分県鶴御埼北東方沖合の豊後水道において、同埼沖合の漁場に向けて東行する場合、接近する他船を見落とすことがないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、雨合羽を着るなどの身支度を行う少しの間であれば大丈夫と思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近する丸住丸に気付かず、避航を促す有効な音響信号を行うことも、更に接近したとき衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行して同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図
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