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平成13年仙審第39号
件名

漁船俊栄丸漁船金栄丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年12月20日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(東 晴二)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:俊栄丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:金栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
俊栄丸・・・船首部外板に亀裂
金栄丸・・・船首部左舷の防舷材及び揚網用ガイドを曲損

原因
俊栄丸・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守
金栄丸・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

裁決主文

 本件衝突は、俊栄丸が、動静監視不十分で、前路で停留した金栄丸を避けなかったことと、金栄丸が、後方の見張り不十分で、俊栄丸の前路で停留したこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月18日03時10分
 山形県鶴岡市湯野浜沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船俊栄丸 漁船金栄丸
総トン数 0.6トン 0.5トン
全長 7.70メートル 7.70メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
漁船法馬力数 30 30

3 事実の経過
 俊栄丸は、刺し網漁業に従事する船外機付きFRP製漁船で、きすの刺し網を投入するため、A受審人が1人で乗り組み、船首0.2メートル、船尾0.8メートルの喫水をもって、平成12年6月18日03時04分少し過ぎ山形県鶴岡市金沢の係留地を発し、同市湯野浜沖の漁場に向かった。
 A受審人は、マスト灯及び両色灯を点灯し、船尾左舷に腰掛け、右手で船外機のハンドルを握って操船し、03時06分半加茂港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から045度(真方位、以下同じ。)1,360メートルの地点で、針路を055度に定め、機関を全速力前進にかけ、同じころ出漁した自船よりも少し速い同業船金栄丸の船影及び同船の白灯を前方に見ながら、9.0ノットの対地速力で進行し、同時09分湯野浜沖の消波堤を右舷に見るようになって漁場に差し掛かり、北防波堤灯台から048度2,100メートルの地点に達したとき、針路を消波堤に沿う040度に転じ、同時09分半同灯台から048度2,230メートルの地点に達したとき、更に消波堤に沿う025度に転じた。
 そのころA受審人は、正船首少し右方を先行していた金栄丸が投網地点に着いたならば、停止することが予想されたが、もっと先の地点に行くと思い、また他船の入れた刺し網のボンデンを見張ることに気を奪われていたこともあって、金栄丸から目を離し、その動静監視を十分に行っていなかったので、同船がほぼ正船首約140メートルのところで停留し、同船と衝突のおそれが生じていることに気付かず、同船を避けないまま続航した。
 03時10分少し前A受審人は、金栄丸を船首至近に認め、左転したが、03時10分北防波堤灯台から046度2,370メートルの地点において、俊栄丸は、010度に向き、船首が金栄丸の船首部左舷に90度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 また、金栄丸は、刺し網漁業に従事する船外機付きFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、きすの刺し網を投入するため、船首0.2メートル、船尾0.8メートルの喫水をもって、同日03時04分少し前鶴岡市金沢の係留地を発し、同市湯野浜沖の漁場に向かった。
 B受審人は、前部マストの両色灯のほか、白色全周灯を点灯し、03時06分半少し前北防波堤灯台から045度1,360メートルの地点で、針路を057度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で進行し、同時08分半湯野浜沖の消波堤を右舷に見るようになり、同灯台から049度2,080メートルの地点に達したとき、針路を消波堤に沿う040度に転じ、同時09分同灯台から048度2,220メートルの地点に達したとき、更に消波堤に沿う025度に転じた。
 03時09分半B受審人は、北防波堤灯台から046度2,370メートルの前示衝突地点付近に達したとき、投網地点に着いたことから停留することとしたが、その際後方に同航船がいるかどうかを確かめることを失念し、後方の見張りを十分に行わなかったので、正船尾少し左方約140メートルのところに接近する俊栄丸があったが、同船に気付かず、左転したうえ機関を停止して同船の前路で停留し、衝突のおそれを生じさせ、その後280度に向首した状態で作業灯を点灯し、刺し網投入の準備作業を行っていたところ、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、俊栄丸は、船首部外板に亀裂を生じ、金栄丸は、船首部左舷の防舷材及び揚網用ガイドを曲損した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、山形県鶴岡市湯野浜沖において、俊栄丸が、前路に同航する同業船金栄丸を認めながら投網地点に向かって進行中、同船の動静監視が不十分で、前路で停留した同船を避けなかったことと、金栄丸が、刺し網投入のため停留する際、後方の見張りが不十分で、俊栄丸の前路で停留し、衝突のおそれを生じさせたこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、山形県鶴岡市湯野浜沖において、前方に同航する同業船金栄丸を認めながら進行する場合、同船が投網地点に着いたならば、停止することが予想されたから、衝突のおそれの有無を判断できるよう、同船の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、金栄丸がもっと先の地点に行くと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、前路で停留した金栄丸と衝突のおそれが生じていることに気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、俊栄丸の船首部外板に亀裂を生じさせ、金栄丸の船首部左舷の防舷材及び揚網用ガイドに曲損を生じさせた。
 B受審人は、夜間、山形県鶴岡市湯野浜沖において、刺し網投入のため停留する場合、後方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、後方に同航船がいるかどうかを確かめることを失念し、後方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、俊栄丸に気付かず、同船の前路で停留して衝突のおそれを生じさせ、同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせた。


参考図
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