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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年仙審第37号
件名

漁船第八寶来丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年12月4日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(東 晴二)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第八寶来丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
球状船首を損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年11月24日21時00分
 山形県酒田港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八寶来丸
総トン数 99.19トン
登録長 29.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 250キロワット

3 事実の経過
 第八寶来丸(以下「寶来丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、船首1.20メートル、船尾3.50メートルの喫水をもって、平成12年11月22日15時30分山形県酒田港を出港し、日本海の北緯40度48分、東経137度42分地点付近の漁場で操業していたが、集魚灯用発電機が不調となったことから、いか1.5トンを漁獲したところで操業を切り上げ、翌々24日06時00分帰途に就いた。
 漁場発航時A受審人は、操業に長時間従事していた乗組員を休ませ、1人で船橋当直に当たり、18時45分飛島灯台から080度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点に達したとき、船舶所有者に入港時刻を伝えるとともに、針路を150度に定め、入港時刻調整のため、機関をそれまでの全速力前進から半速力前進に減じ、自動操舵とし、約2度左方に圧流されながら、7.0ノットの対地速力で進行した。
 ところで、A受審人は、昼夜連続の操業を行っていたもので、その間昼間約2時間、夜間約4時間休息を取っていたものの、このとき漁場発航時から約13時間の当直を続けていたので、睡眠が不足し、疲労した状態となっていた。
 その後A受審人は、操舵室中央で床に腰を下ろし、右前のレーダーを見ながら当直し、窓を閉じて暖房していたこともあって、眠気を覚えたが、入港まで2時間ばかりであるので、当直を続けることができると思い、休息中の乗組員を起こして2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、同じ姿勢で続航するうち、やがて居眠りし始めた。
 こうして、寶来丸は、居眠り運航となったまま、同じ針路及び速力で酒田港に接近し、21時00分酒田港南防波堤灯台から350度1,220メートルの地点において、酒田港第2北防波堤に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 防波堤衝突の結果、寶来丸は、球状船首を損傷し、のち修理された。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、漁場から山形県酒田港に帰航中、2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置が不十分で、居眠り運航のまま、同港に接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、漁場から山形県酒田港に帰航中、船橋当直に当たり、眠気を覚えた場合、居眠り運航とならないよう、2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、入港まで2時間ばかりであるので、当直を続けることができると思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りし、同港に接近した際、同港第2北防波堤に向首する針路のまま進行して同防波堤への衝突を招き、寶来丸の球状船首を損傷させるに至った。





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