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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年長審第40号
件名

漁船大和丸漁船山丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年11月20日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:大和丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:山丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
大和丸・・・左舷船首外板に破口
山丸・・・右舷船尾ブルワークに損傷

原因
山丸・・・法定灯火不表示、見張り不十分、注意喚起信号不履行

裁決主文

 本件衝突は、山丸が、錨泊中の法定灯火を表示しなかったばかりか、見張り不十分で、注意喚起信号を行わなかったことによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年11月8日03時00分
 佐賀県鹿島市浜漁港沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船大和丸 漁船山丸
総トン数 4.97トン 4.41トン
全長   12.20メートル
登録長 12.24メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 50 25

3 事実の経過
 大和丸は、採介藻漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、船首0.30メートル船尾0.62メートルの喫水をもって、平成12年11月8日02時45分佐賀県鹿島市浜漁港を発し、同港沖合に設置された海苔養殖区画に向かった。
 ところで、前示の海苔養殖区画は、鹿島市沿岸の約2海里沖合までの干潟に設置され、養殖区画への水路は浜漁港から南南西方に延び、区画内の主水路は幅120メートルを掘り下げ、主水路から各区画ごとに格子状に枝水路が設けられ、水路両端の目印として約100メートル間隔で竹竿や鋼管が立てられていた。
 03時00分少し前A受審人は、沖ノ神瀬灯標から294度(真方位、以下同じ。)4海里の、養殖区画の可航幅が潮汐により約100メートルとなった主水路に達し、針路を水路に沿う133度に定め、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力とし、手動操舵によって進行した。
 定針時A受審人は、両舷灯及びマスト上に全周赤色点滅灯を掲げたほか右方の水路目印となる竹竿をサーチライトで照射して見張りに当たり、折から船首方300メートルに山丸が錨泊していたが、無灯火状態であったため同船の存在に気付かず続航し、03時00分沖ノ神瀬灯標から293度3.8海里の水路内において、大和丸の船首が山丸の右舷船尾部に後方から衝突した
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期であった。
 また、山丸は、刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか甲板員1人が乗り組み、刺し網漁の目的で、船首0.15メートル船尾0.20メートルの喫水をもって、同月7日20時00分鹿島市浜漁港を発し、衝突地点に向かった。
 20時10分B受審人は、衝突地点に至って船首に錨索を係止してて錨泊し、伝馬船を使用して自船至近から北東方300メートルにわたって刺し網を仕掛けたのち、同時40分頃一旦山丸に戻って、次の上げ潮に揚網することとした。
 翌8日02時00分B受審人は、投網してから約3時間ばかりは水深が浅く、機関冷却水に泥水を吸い上げて機関が使用できず、その間停泊灯を点灯すると蓄電池切れになることから、錨泊中に表示すべき全周灯を掲げることなく、両色灯のみを点灯したものの、両色灯の射光範囲が船首方向のみで、上げ潮で船首が振れ回って南東方に向いたとき、水路を南東方に向かっている出航船には同灯火を視認できないことに気付かず、上げ潮で十分な水深となったので伝馬船に甲板員とともに移乗し、山丸を無人として所要時間約2時間の揚網を開始した。
 03時00分少し前B受審人は、山丸から約150メートル離れたところの伝馬船で揚網作業中、大和丸が山丸に向かって進行していたが、同作業に夢中になって見張りを行っていなかったので、大和丸に対して同船の進行方向に危険が存在することを知らせるために山丸を照射するなどの注意喚起信号を行わず、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、大和丸は左舷船首外板に破口を生じ、山丸は右舷船尾ブルワークに損傷を生じ、のち両船ともに修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、佐賀県浜漁港沖合の海苔養殖区画の水路において、山丸が、錨泊中の法定灯火を表示しなかったばかりか、乗組員が同船を無人として付近で揚網作業中、見張り不十分で、山丸に向かって進行する大和丸に対して山丸を照射するなどの注意喚起信号を行わなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、佐賀県浜漁港沖合の海苔養殖区画の水路において、錨泊して山丸を無人として付近で揚網を行う場合、山丸に法定の停泊灯を掲げたうえ、見張りを厳重にして同船に向かって進行する大和丸に対して山丸を照射するなどの注意喚起信号を行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、山丸に両色灯を点灯しておけば水路を航行する船が気付いてくれるものと思い、山丸に法定の停泊灯を掲げたうえ、見張りを厳重にして同船に向かって進行する大和丸に対して山丸を照射するなどの注意喚起信号を行わなかった職務上の過失により、山丸の船尾方から接近する大和丸が、山丸の両色灯を認めることができずに進行して衝突を招き、大和丸の左舷船首外板に破口を生じさせ、山丸の右舷船尾ブルワークに損傷を生じさせるに至った。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


参考図
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