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平成13年横審第58号
件名

漁船順勝丸プレジャーボートちび丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年11月16日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(甲斐賢一郎、葉山忠雄、黒岩 貢)

理事官
関 隆彰

受審人
A 職名:順勝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:ちび丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
順勝丸・・・船首部船底等に擦過傷
ちび丸・・・後部両舷外板ガンネル部に亀裂、のち廃船
船長が肋骨骨折(入院加療40日間)、同乗者が背部打撲

原因
順勝丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

主文

 本件衝突は、順勝丸が、見張り不十分で、漂泊中のちび丸を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月5日13時20分
 三重県長島港内

2 船舶の要目
船種船名 漁船順勝丸 プレジャーボートちび丸
総トン数 1.7トン  
全長   3.08メートル
登録長 9.50メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力   3キロワット
漁船法馬力数 45  

3 事実の経過
 順勝丸は、FPR製漁船で、A受審人が単独で乗り組み、イサキ一本釣り漁の目的で、船首0.15メートル船尾1.20メートルの喫水をもって、平成12年8月5日04時30分三重県長島港江ノ浦にある係留場所を発し、長島大島灯台から南東方1,300メートルばかりの地点に至って漁を行い、12時45分同地点を発して長島港防波堤灯台から057度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの地点に設置してある生簀(いけす)に向かった。
 A受審人は、長島港港域内を東寄りに北上し、ヒガキ鼻を右舷側30メートルに付け回して東進したが、そのころ同鼻北西方沖合に漂泊していたちび丸を見落としたまま進行し、13時10分前示生簀に到着して獲れたイサキを移す作業を開始した。
 13時19分少し過ぎA受審人は、作業を終えて係留場所に戻ろうとして舵輪の後方のいすに腰掛け、クラッチを前進に入れ、針路を285度に定めて発進したが、生簀に向かう往路でちび丸を見落としていたので、前方至近に他船はいないものと思い、自船の前後左右を確認するなど、見張りを十分に行わなかったので、正船首210メートルの至近のところに漂泊しているちび丸の存在に気付かないまま、次第に機関回転数を1,800回転まで上げながら進行し、13時20分順勝丸は、長島港防波堤灯台から047度880メートルの地点において、13.0ノットの対地速力、同じ針路で、その船首がちび丸の右舷後部に後方から53度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の東北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 また、ちび丸は、船外機を装備した超高分子ポリエチレン製プレジャーボートで、B受審人が単独で乗り込み、友人1人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.10メートル船尾0.40メートルの喫水をもって、同日11時30分長島港名倉を発し、イカ島沖合の釣場に向かった。
 11時40分B受審人は、釣場に到着し、適宜ヒガキ鼻寄りに移動しながら竿による魚釣りを続け、13時09分ごろ同鼻北西方沖合に至り、同時15分前示衝突地点において、船外機を停止したのち、船首を西北西に向けて漂泊を開始し、同乗者とともに左舷側を向いて魚釣りを再開した。
 13時20分わずか前B受審人は、同乗者の「船がくる。」との叫び声で右舷後部の方向を振り向き、至近に接近した順勝丸の船首を認めたが、どうすることもできず、13時20分ちび丸は、338度を向首したまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、順勝丸は、船首部船底等に擦過傷を生じたのみであったが、ちび丸は、後部両舷外板ガンネル部に亀裂(きれつ)を生じ、のち廃船となり、B受審人が約40日間の入院加療を要する肋骨骨折を、同乗者が3日間の安静を要する背部打撲などをそれぞれ負った。

(原因)
 本件衝突は、三重県長島港内において、順勝丸が、生簀での作業を終えて同港内の係留場所に戻ろうとして発進する際、見張り不十分で、前方至近に漂泊中のちび丸を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 受審人Aは、三重県長島港内の生簀での作業を終了し、同港内の係留場所に戻ろうとして発進する場合、前方至近に漂泊する他船を見落とさないよう、前後左右を確認するなど、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、生簀に向かう往路でヒガキ鼻北西方沖合にいたちび丸を見落としていたので、前方至近に他船はいないものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、ちび丸の存在に気付かずに進行して、同船との衝突を招き、順勝丸の船首部船底外板に擦過傷を、また、ちび丸の後部両舷外板ガンネル部に亀裂をそれぞれ生じさせ、B受審人に肋骨骨折を、同乗者に背部打撲などをそれぞれ負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 受審人Bの所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:55KB)





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