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平成13年横審第36号
件名

油送船第三なごや丸橋桁衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年10月30日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(半間俊士、長谷川峯清、小須田 敏)

理事官
酒井直樹

受審人
A 職名:第三なごや丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
なごや丸・・・レーダースキャナーに損傷、レーダーマストに曲損

原因
操船不適切

主文

 本件橋桁衝突は、可航高が低い橋下を航行する際、航行の安全確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月14日17時43分
 名古屋港第1区潮凪橋

2 船舶の要目
船種船名 油送船第三なごや丸
総トン数 114.67トン
全長 27.375メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 147キロワット

3 事実の経過
 第三なごや丸(以下「なごや丸」という。)は、専ら伊勢湾内の港において他船への燃料油補給に従事する、起倒式のレーダーマストを装備した鋼製油送船で、A受審人ほか1人が乗り組み、燃料油補給等の目的で、平成12年7月14日07時00分名古屋港鴨浦係船場を発した。
 ところで、鴨浦係船場は、名古屋港北航路北口の西方にある同港第1区の潮凪ふ頭と汐止ふ頭の間に位置し、その出入口には両ふ頭を連絡する、中央部の橋桁下端の高さが同港の略最高高潮面から456センチメートル(以下「センチ」という。)の潮凪橋が架けられていた。一方、なごや丸は、レーダーマストを起こしたときは船底基線から同マスト頂部までの高さが758センチであり、同マストの高さより低い橋下を通航するときには同マストを倒し、そのときの船体の一番高いところが船橋で、同基線から564センチであった。A受審人は、潮凪橋の下を通航する際、同マストが同橋の橋桁に当たるおそれがあったので、潮位の高低及び同船の喫水にかかわらず、平素、同マストを倒した状態で同橋の下を通航していた。
 A受審人は、潮凪橋の下を通過後、視界がやや悪かったことからレーダーを使用するためレーダーマストを立て、その後名古屋港内の可航高が低い潮見橋の下を通航するために同マストを倒し、08時40分再度同マストを立て、11時過ぎから視界が良くなってレーダーを使用しなくなったものの同マストを立てた状態で、名古屋港内において燃料油補給等の作業を続けた。
 こうして、A受審人は、その後名古屋港及び四日市港において油槽所や他船に接舷して燃料油の揚積を繰り返したのち、名古屋港潮見ふ頭西岸の日石三菱石油第1油槽所3号桟橋で重油93キロリットルを積載してこの日の作業を終え、船首1.8メートル船尾2.2メートルの喫水をもって、17時25分同桟橋を発進して帰途に就いた。
 発進後、A受審人は、4.0ノットの速力で名古屋港北航路を横断して潮凪ふ頭の南側の水路に入り、17時36分同港第1区ガーデンふ頭に設置されている名古屋港北信号所(以下「北信号所」という。)から222度(真方位、以下同じ。)2,950メートルの地点で機関を中立とし、以後機関及び舵を適宜使用して2.0ノットの速力で大きく右に回頭しながら前進を続け、同時40分潮凪橋の手前100メートルにあたる北信号所から230度3,000メートルの地点で、いつものように針路を同橋の中央部をほぼ直角に通航する000度に定めて機関を中立としたが、視界が回復してかなり時間が経っていたこともあって、レーダーマストの起倒について失念し、いつも通航しているところであったのですでに同マストを倒してあるものと思い、レーダーマストの状態を調べるなど航行の安全確認を十分に行うことなく、同マストを立てたまま、1.0ノットの前進惰力で可航高が低い潮凪橋の下に向かって進行中、17時43分北信号所から231.5度2,850メートルの地点において、レーダーマストの頂部が潮凪橋の橋桁下部と衝突した。
 当時、天候は曇で風力1の南南西風が吹き、潮候は高潮時にあたり、潮高は223センチであった。
 衝突の結果、レーダースキャナーに損傷及びレーダーマストに曲損をそれぞれ生じ、のち修理された。

(原因)
 本件橋桁衝突は、名古屋港第1区において、可航高が起倒式のレーダーマストを起こしたときの高さよりも低い潮凪橋の下を航行する際、航行の安全確認が不十分で、レーダーマストを格納しなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、名古屋港第1区鴨浦係船場に帰航中、同係船場の出入口に架かる可航高が起倒式のレーダーマストを起こしたときの高さよりも低い潮凪橋の下を航行する場合、レーダーマストの状態を調べるなど、航行の安全確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、発航時に視界不良のために同マストを立てたものの、その後視界が回復してかなりの時間が経っていたこともあって、レーダーマストの起倒について失念し、いつも通航しているところであったのですでに同マストを倒してあるものと思い、航行の安全確認を十分に行わなかった職務上の過失により、起倒式のレーダーマストを格納しないまま進行してレーダーマストの頂部と潮凪橋の橋桁下部との衝突を招き、レーダースキャナーに損傷及び同マストに曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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