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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年仙審第34号
件名

貨物船第二摂津丸岸壁衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年10月17日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(喜多 保)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第二摂津丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
摂津丸・・・バルバスバウに凹損
4号岸壁・・・ゴム製防舷材が損傷

原因
操船不適切

裁決主文

 本件岸壁衝突は、着岸時の行きあしの制御が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月29日17時50分
 宮城県石巻港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二摂津丸
総トン数 498トン
全長 75.28メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット

3 事実の経過
 第二摂津丸(以下「摂津丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、大豆粕200トンを載せ、船首1.3メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成12年7月29日17時35分宮城県石巻港清水港飼料株式会社の桟橋を離れ、同港大手ふ頭4号岸壁(以下「4号岸壁」という。)への移動を開始した。
 A受審人は、目的岸壁まで約15分の短い航程であることから、移動開始時から船首に一等航海士及び甲板長を、船尾に機関長及び司厨員をそれぞれ配置に就け、自らは船橋で操舵操船に当たって石巻港内を西航し、17時46分少し前石巻港雲雀野防波堤灯台(以下「雲雀野防波堤灯台」という。)から016度(真方位、以下同じ。)2,070メートルの地点で、針路を4号岸壁に向首する330度とし、機関を微速力前進にかけて4.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 A受審人は、4号岸壁に入船右舷付けの態勢で南南東寄りの風を船尾から受けて同岸壁に接近し、17時49分雲雀野防波堤灯台から009度2,370メートルの地点に達したとき、機関を停止し、続いて左舷錨を投下したが、目測して岸壁に達するまでには行きあしを止めることができるものと思い、その後機関を早目に後進にかけるなど行きあしの制御を適切に行わなかった。
 A受審人は、17時50分少し前前進行きあしが意外にあることに気付き、機関を微速力後進、半速力後進、更に全速力後進として錨鎖の延出を中止したが及ばず、17時50分雲雀野防波堤灯台から008度2,430メートルの地点において、摂津丸は、約1ノットの前進行きあしをもって、その船首が4号岸壁に対して66度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力3の南南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、視界は良好であった。
 その結果、摂津丸のバルバスバウに凹損を生じ、4号岸壁のゴム製防舷材が損傷し、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件岸壁衝突は、宮城県石巻港において、大手ふ頭4号岸壁に着岸する際、行きあしの制御が不適切で、過大な前進行きあしで同岸壁に接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、宮城県石巻港において、船尾方からの風を受けて大手ふ頭4号岸壁に着岸する場合、過大な前進行きあしとならないよう、早目に機関を後進にかけるなど行きあしの制御を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、目測して岸壁に達するまでには行きあしを止めることができるものと思い、機関を早目に後進にかけるなど行きあしの制御を適切に行わなかった職務上の過失により、過大な前進行きあしで4号岸壁に接近して同岸壁との衝突を招き、摂津丸のバルバスバウに凹損を生じさせ、同岸壁のゴム製防舷材に損傷を生じさせるに至った。





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