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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年函審第41号
件名

漁船幸丸漁船第三利丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年10月25日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(織戸孝治)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:幸丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:第三利丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
幸丸・・・右舷外板に凹損等、船長が打撲傷
利丸・・・右舷船首部に擦過傷

原因
利丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
幸丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第三利丸が、見張り不十分で、漂泊中の幸丸を避けなかったことによって発生したが、幸丸が、見張り不十分で、警告する信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年4月18日06時00分
 北海道積丹(しゃこたん)岬北東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船幸丸 漁船第三利丸
総トン数 0.78トン 0.4トン
登録長 6.60メートル 5.26メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
漁船法馬力数 30 30

3 事実の経過
 幸丸は、一本釣り漁業に従事する船外機付きのFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.06メートル船尾0.25メートルの喫水をもって、平成13年4月18日05時10分北海道入舸(いりか)漁港を発し、積丹岬北東方沖合の漁場に向かった。
 05時17分A受審人は、積丹出岬灯台から291度(真方位、以下同じ。)1,200メートルばかりの地点に至り、機関を停止して漂泊し、右舷前部で船尾方を向いて座り手釣りを開始した。
 05時58分幸丸が000度を向首しているとき、A受審人は、船首右舷13度380メートルのところに第三利丸(以下「利丸」という。)を視認でき、その後同船が衝突のおそれのある態勢で接近していたが、釣りに気を奪われ、周囲の見張りを行わなかったので、同船に気付かず、着用していた救命胴衣の警笛の使用により、接近する利丸に対して警告する信号を行うことなく、更に接近するに及んで船外機を始動して移動するなど衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊中、06時00分少し前利丸の機関音に気付いて振り返ったとき、至近に迫った同船を初認して衝突の危険を感じ、船尾に駆け寄り機関を始動したが効なく、幸丸は、06時00分積丹出岬灯台から291度1,200メートルの地点で、その右舷前部に利丸の右舷船首部が前方から10度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の西南西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 また、利丸は、一本釣り漁業に従事する船外機付きのFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.1メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日05時30分北海道積丹郡積丹町野塚町泊を発し、積丹岬北東方沖合の漁場に向かい、同時45分積丹出岬灯台から321度1,510メートルの地点で、手釣りを開始したものの、魚信がなく、また、視界模様が悪化してきたので、同時56分同地点を発進して帰途に就いた。
 ところで、利丸は、航走時に船首が浮上し、機関を半速力前進にかけると右舷船尾の操縦席で座って操船に当たったとき船首左舷30度から船首右舷10度までの範囲に死角を生じ、前方の見通しが妨げられる状況であった。
 発進時、B受審人は、針路を193度に定め、機関を半速力前進にかけ6.1ノットの対地速力で、右舷船尾操縦席に座って操船に当たり、05時58分積丹出岬灯台から309度1,300メートルの地点に達したとき、船首方380メートルのところに漂泊中の幸丸を視認でき、その後同船と衝突のおそれのある態勢で接近していたが、前路に他船はいないと思い、船首を左右に振るなど船首方の死角を補う見張りを行わなかったので、幸丸に気付かず、これを避けることなく続航中、06時00分少し前陸岸により位置を確認するため立ち上がったとき、至近に迫った同船を初認して衝突の危険を感じ、慌てて左転したが及ばず、利丸は、原速力のまま190度を向首して前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、幸丸は右舷外板に凹損等を、利丸は右舷船首部に擦過傷をそれぞれ生じ、また、A受審人が打撲傷を負った。

(原因)
 本件衝突は、漁場から帰航中の利丸が、見張り不十分で、一本釣りのため前路で漂泊中の幸丸を避けなかったことによって発生したが、幸丸が、見張り不十分で、接近する利丸に対して警告する信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、漁場から帰航する場合、船首浮上により死角を生じて前方の見通しが妨げられる状況であったから、前路で漂泊中の幸丸を見落とさないよう、船首を左右に振るなど船首方の死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、前路に他船はいないと思い、船首方の死角を補う見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、幸丸に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船の右舷船首部に擦過傷を、幸丸の右舷外板に凹損等をそれぞれ生じさせ、また、A受審人に打撲傷を負わせるに至った。
 A受審人は、一本釣りのため漂泊する場合、接近する利丸を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣りに気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、利丸に気付かず、警告する信号を行うことなく、更に接近するに及んで衝突を避けるための措置をとらないまま衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせ、また、自身が負傷するに至った。


参考図
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