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平成13年門審第29号
件名

貨物船ヤナ貨物船フェニックス衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年9月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(米原健一、佐和 明、橋本 學)

理事官
畑中美秀

損害
ヤナ・・・右舷船首を圧壊
フェニックス・・・右舷後部外板が削がれて大破口

原因
ヤナ・・・狭視界時の航法(信号・レーダー・速力)不遵守
フェニックス・・・狭視界時の航法(信号・レーダー・速力)不遵守

主文

 本件衝突は、ヤナが、視界制限状態における運航が適切でなかったことと、フェニックスが、視界制限状態における運航が適切でなかったこととによって発生したものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月25日05時25分
 関門海峡西口

2 船舶の要目
船種船名 貨物船ヤナ 貨物船フェニックス
総トン数 3,086トン 1,748トン
全長 104.50メートル 92.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,133キロワット 1,471キロワット

3 事実の経過
 ヤナは、船尾船橋型の木材運搬船で、船長Aほか23人が乗り組み、丸太3,716.9750立方メートルを積載し、船首5.80メートル船尾6.90メートルの喫水をもって、平成12年6月21日14時45分(現地時間)ロシア連邦バニノ港を発し、関門海峡経由で徳島県徳島小松島港に向かった。
 越えて25日04時00分A船長は、山口県蓋井島北西方沖合約6海里の地点で昇橋し、一等航海士を左舷レーダーの監視に、甲板手を手動操舵にそれぞれ配して操船の指揮を執り、間もなく霧のため視界が悪化して視程が約700メートルに狭められたことから、同時50分機関を用意し、霧中信号を行わないまま関門海峡に向かった。
 A船長は、05時15分大藻路岩灯標から061度(真方位、以下同じ。)1.05海里の地点に達したとき、針路を141度に定め、機関を港内全速力前進にかけて9.6ノットの対地速力とし、そのころ視界が更に悪化して視程が約100メートルに狭められたので、自らも時々2.5海里レンジとした右舷レーダーの監視にあたったものの、依然として霧中信号を行わず、また、安全な速力に減じることもせず、航行中の動力船の灯火を表示して手動操舵により進行した。
 05時19分A船長は、大藻路岩灯標から090度1.3海里の地点に差し掛かったとき、レーダーにより右舷船首29度1.7海里のところに六連島西水路を北上するフェニックスの映像を初めて探知し、その後同水路の北方で同船と著しく接近することを避けることができない状況であることを知ったが、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを停止することなく続航した。
 A船長は、05時22分半六連島灯台から322度1.8海里の地点に至ったとき、針路を六連島西水路に向く190度に転じ、同じ速力で進行中、同時24分半左舷船首至近にフェニックスの船影を初めて視認し、急いで左舵一杯をとるとともに全速力後進をかけたが、効なく、05時25分六連島灯台から311度1.55海里の地点において、ヤナは、船首が165度を向いたとき、その右舷船首部が、フェニックスの右舷船尾部に前方から30度の角度で衝突した。
 当時、天候は濃霧で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期にあたり、視程は約100メートルで、日出は05時06分であった。
 また、フェニックスは、船尾船橋型貨物船で、船長Bほか13人が乗り組み、スクラップ3,703トンを積載し、船首4.85メートル船尾5.93メートルの喫水をもって、同月22日16時50分京浜港を発し、関門海峡経由で大韓民国仁川港に向かった。
 越えて25日04時00分B船長は、部埼南東方沖合1,300メートル付近に至ったとき、関門海峡通航に備えて昇橋し、一等航海士を手動操舵に、甲板長を見張りにそれぞれ配して操船の指揮を執り、機関を用意したのち、同時15分ごろ関門航路に入航した。
 B船長は、04時45分大瀬戸を航行していたとき、霧が急速に深まって視界が悪化し、視程が約100メートルに狭められたので、機関を半速力前進に落としたものの、霧中信号を行わず、また、安全な速力に減じることもしないまま、舵輪左舷側に設置した1号レーダー及び2号レーダーをそれぞれ0.75海里レンジ及び1.5海里レンジとして見張りにあたって北上した。
 こうしてB船長は、関門航路及び関門第2航路を通過して六連島西水路に入り、05時12分六連島灯台から243度1.5海里の地点に達したとき、針路を009度に定め、引き続き機関を半速力前進にかけて8.0ノットの対地速力とし、航行中の動力船の灯火を表示して手動操舵により進行した。
 05時19分B船長は、六連島灯台から281度1.2海里の地点に差し掛かったとき、左舷船首19度1.7海里のところに南下するヤナが存在し、同船と著しく接近することを避けることができない状況であったが、適宜レーダーレンジを遠距離に切り替えるなど、レーダーによる見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを停止することなく続航した。
 B船長は、05時22分2号レーダーにより左舷船首12度0.9海里のところにヤナを初めて探知したものの、同じ針路、速力で進行し、同時23分転針予定地点に至ったので左舵をとってゆっくりと回頭中、同時25分少し前右舷正横至近に自船の中央部に向首しているヤナを視認し、急いで右舵一杯をとったが、及ばず、フェニックスは、原速力のまま、船首が315度を向いたとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ヤナは、右舷船首が圧壊し、フェニックスは、右舷後部外板が削がれて大破口を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、霧のため視界が著しく制限された関門海峡西口において、南下するヤナが、霧中信号を行うことも、安全な速力に減じることもしなかったばかりか、レーダーで前路に探知したフェニックスと著しく接近することを避けることができない状況となったとき、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを停止しなかったことと、北上するフェニックスが、霧中信号を行うことも、安全な速力に減じることもしなかったばかりか、レーダーによる見張りが不十分で、ヤナと著しく接近することを避けることができない状況となったとき、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを停止しなかったこととによって発生したものである。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:71KB)





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