日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年広審第11号
件名

プレジャーボートコスモ丸 プレジャーボートサンデー号衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年9月20日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(勝又三郎、中谷啓二、横須賀勇一)

理事官
上中拓治

受審人
A 職名:コスモ丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
コスモ丸・・・船首船底に擦過傷
サンデー号・・・右舷舷側に亀裂を伴う損傷、船長が頭蓋骨陥没骨折により死亡、同乗者が前額部裂傷等

原因
コスモ丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
サンデー号・・・注意喚起信号不履行(一因)

主文

 本件衝突は、コスモ丸が、見張り不十分で、錨泊中のサンデー号を避けなかったことによって発生したが、サンデー号が、避航を促すための有効な音響による信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年11月12日15時30分
 山口県岩国港南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートコスモ丸 プレジャーボートサンデー号
全長 7.74メートル 3.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 60キロワット 5キロワット

3 事実の経過
 コスモ丸は、最大搭載人員10人のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、船釣りの目的で、船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、平成12年11月12日11時30分山口県岩国港青木地区の定係場所を発し、同県玖珂郡由宇町沖合の前島に行ったところ、波が高かったこともあって、同島付近での船釣りを止め、同町原沖合に向かった。
 11時54分少し過ぎA受審人は、原沖の釣場に到着して錨泊し、釣りを始めたものの、釣果があまりよくなかったことから、岩国港沖合に戻って釣りをすることとし、15時27分半由宇港由宇1号防波堤灯台(以下「由宇港灯台」という。)から189度(真方位、以下同じ。)3.1海里の地点で、針路を047度に定めて手動操舵とし、機関回転数を毎分4,000の時速40キロメートルの対地速力(以下「速力」という。)として進行し、同港沖合に向かった。
 15時29分少し前A受審人は、GPSプロッタの画面を魚群探知器画面から地図画面に切り換えようと思い、舵輪の横に置かれていた同器の遠隔操作盤の操作を始めたが、操作に慣れていなかったうえ、操作盤が操縦スタンド枠部に横向きに固定されて各ボタンの表示が読みにくかったことから、屈み込んで表示を読みながら操作を続けているうち、前方から目を離しがちになった。
 A受審人は、左手に舵輪を握って屈み込み右手でGPSプロッタ画面の切り換え操作を行っていたことから、無意識のうちに次第に左転し、15時29分由宇港灯台から181度2.7海里の地点に達したとき、針路が016度に向き、自船の正船首方向500メートルのところに錨泊中のサンデー号を視認できる状況であったが、GPSプロッタの画面を切り換えるために、前方から目を離してその遠隔操作盤の操作に没頭していたので、見張りを十分に行うことなく、同船の存在に気付かなかった。
 A受審人は、サンデー号を避けないまま進行し、GPSの操作が終わって前路を見たところ、船首至近に同船を初認して機関を停止したものの、及ばず、コスモ丸は、15時30分由宇港灯台から180度2.4海里の地点において、原針路、原速力のまま、その船首がサンデー号の右舷前部に直角に衝突し、同船を乗り切った。
 当時、天候は曇で風力2の南西風が吹き、視界は良好で、海上にはやや波があった。
 また、サンデー号は、最大搭載人員が3人のFRP製プレジャーボートで、船長Bが1人で乗り組み、友人2人を乗せ、船釣りの目的で、同日13時20分由宇町城ヶ崎海岸を発し、同海岸沖合に向かった。
 13時30分ごろB船長は、前示衝突地点付近に至り、船外機を停止し、船首錨及び船尾錨を東西に投錨してほぼ東西方向に向く態勢で錨泊し、同乗者2人とともに釣りを開始した。
 15時29分半B船長は、右舷正横300メートルのところに自船に向首する態勢で接近してくるコスモ丸を初認したが、同船が自船の釣果を尋ねるために近寄って来たものと思い、その後、コスモ丸が接近しても救命胴衣に取り付けられた笛を使用するなどして避航を促すための有効な音響による信号を吹鳴しなかった。
 B船長は、コスモ丸が、同一針路、速力で間近に接近するので、衝突の危険を感じ、同乗者とともに立ち上がって手を振ったものの、効なく、同乗者上田善一が海中に飛び込んだあと、サンデー号は、106度を向首して錨泊中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、コスモ丸は、船首船底に擦過傷を生じたのみであったが、サンデー号は、右舷舷側に亀裂を伴う損傷を生じ、B船長(昭和24年6月17日生、四級小型船舶操縦士免状受有)が頭蓋骨陥没骨折により死亡し、同乗者Cが前額部裂傷等の傷を負った。

(原因)
 本件衝突は、岩国港南方沖合において、釣場を移動中のコスモ丸が、見張り不十分で、錨泊中のサンデー号を避けなかったことによって発生したが、サンデー号が、避航を促すための有効な音響による信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、岩国港南方沖合において、単独で操船して釣場を移動する場合、前路の他船を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、GPSプロッタの操作に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、錨泊中のサンデー号に向首したことに気付かず、同船を避けないまま進行して同船との衝突を招き、同船の右舷舷側に亀裂を伴う損傷を生じさせ、B船長が頭蓋骨陥没骨折により死亡させ、C同乗者が前額部裂傷等の傷を負うに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して、同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:40KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION