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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年神審第48号
件名

プレジャーボートビルディック護岸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年9月12日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正)

理事官
釜谷奬一

受審人
A 職名:ビルディック船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船首部を圧壊、同乗者3人が右肩甲骨骨折、頸椎捻挫、頭部打撲等

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件護岸衝突は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月24日21時00分
 兵庫県尼崎西宮芦屋港

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートビルディック
全長 9.01メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 220キロワット

3 事実の経過
 ビルディック(以下「ビ号」という。)は、2基2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人3人を同乗させ、遊覧の目的で、船首尾0.5メートルの等喫水をもって、平成12年9月24日20時20分兵庫県尼崎西宮芦屋港第2区新西宮ヨットハーバー(以下「ヨットハーバー」という。)にある船着場を発し、同港南沖合に向かった。
 ところで、ヨットハーバーは、西宮浜から南側に11個の桟橋が置かれ、西宮内防波堤灯台(以下「内防波堤灯台」という。)から293度(真方位、以下同じ。)1,580メートルの地点を西側防波堤の北端として、順に次の各防波堤端からの方位、距離を有する形状の各防波堤(以下「南防波堤」という。)、すなわち、180度100メートル、136度80メートル、090度740メートル、134度60メートル及び048度60メートルで南部を囲まれ、同北端部の北側が出入口(以下「西出入口」という。)で、同北端上には赤色1個、周りの障害物には黄色6個のそれぞれ簡易標識灯が設置されていた。
 また、西出入口の西側には、南北に延びる幅250メートルの水路(以下「芦屋西宮水路」という。)を隔てて、同口のほぼ対岸にあたる、内防波堤灯台から287度1,800メートルの地点を北端として、順に次の各終端からの方位、距離を有する各護岸、すなわち、180度260メートル、230度140メートル及び276度850メートルの西側一帯を芦屋沖地区と称し、同地区及び付近海面には灯火がなく、また、南側護岸は、南防波堤南線から300メートルほど南方に突き出していた。
 A受審人は、発航後、西出入口から出て同水路を南下し、南防波堤から南方1海里付近を周航したのち、20時57分内防波堤灯台から254度1,830メートルの地点において、帰航に先立ち漂泊した。
 A受審人は、ヨットハーバー付近の灯火模様などを確認したが、前方に見えている西出入口付近の標識灯の灯光を右舷船首目標にすればよいと思い、芦屋西宮水路の夜間航行の経験がほとんどなく、水路幅や芦屋沖地区南側護岸の突出状況など、正確な水路状況を知らなかったのであるから、灯火設備のない同護岸に衝突することのないよう、あらかじめ備付けの海図(第1107号、尼崎西宮芦屋港)で水路調査を十分に行うことなく、20時58分半わずか過ぎ前示漂泊地点を発進し、帰途についた。
 発進時、A受審人は、西出入口付近の標識灯の灯火を見て針路を354度に定め、機関を全速力前進にかけ、16.2ノットの対地速力で、手動操舵により進行し、芦屋沖地区の南側護岸に向首していることに気付かず、21時00分少し前前方至近に同護岸の暗影を認め、右舵を取り機関を停止したが及ばず、21時00分内防波堤灯台から275.5度1,840メートルの護岸に、ビ号は、船首を016度に向け、11.0ノットの対地速力で衝突した。
 当時、天候は晴で風はなく、視界は良好で、潮候は下げ潮の中央期であった。
 その結果、ビ号は船首部を圧壊したが、のち修理され、同乗者3人がそれぞれ右肩甲骨骨折、頸椎捻挫、頭部打撲などを負った。

(原因)
 本件護岸衝突は、夜間、兵庫県尼崎西宮芦屋港のヨットハーバーに向け帰航中、水路調査が不十分で、芦屋沖地区南側護岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、兵庫県尼崎西宮芦屋港のヨットハーバーを発航し、同港内の遊覧を行ったのち、帰航するため芦屋西宮水路に向け北上する場合、同水路の夜間航行の経験がほとんどなく、水路幅や芦屋沖地区南側護岸の突出状況など、正確な水路状況を知らなかったのであるから、灯火設備のない同護岸に衝突しないよう、あらかじめ備付けの海図(第1107号、尼崎西宮芦屋港)で水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、西出入口付近の標識灯の灯光を右舷船首目標にすればよいものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同護岸に向首していることに気付かずに進行して衝突し、ビ号の船首部を圧壊させ、同乗者3人にそれぞれ右肩甲骨骨折、頸椎捻挫、頭部打撲などを負わせるに至った。





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