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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年仙審第25号
件名

貨物船とよふじ丸岸壁衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年9月26日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(東 晴二)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:とよふじ丸船長 海技免状:二級海技士(航海)

損害
船尾端右舷側に凹損、岸壁の車止め損傷

原因
風圧の影響に対する配慮不十分

裁決主文

 本件岸壁衝突は、風圧の影響に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月18日14時25分
 宮城県塩釜港仙台区

2 船舶の要目
船種船名 貨物船とよふじ丸
総トン数 3,458トン
全長 113.05メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 3,677キロワット

3 事実の経過
 とよふじ丸は、航行区域を限定沿海区域とし、可変ピッチプロペラ、バウスラスターなどを装備した鋼製自動車運搬船で、平成12年6月18日07時20分塩釜港仙台区に入港し、投錨待機ののち、09時10分雷神ふ頭第3号岸壁に入船右舷付けの状態で着岸し、A受審人ほか10人が乗り組み、自動車426台、640トンを積載し、船首1.35メートル、船尾5.03メートルの喫水をもって、同日14時20分名古屋港に向かうため、離岸を開始した。
 A受審人は、強い南風の吹くなか、船橋に三等航海士及び甲板手を、船首に一等航海士及び甲板長を、船尾に二等航海士及び甲板手をそれぞれ配置に付け、離岸後左回頭することとして操船に当たり、船首右舷のバックスプリングを残して他の係留索を放し、機関及び舵により船尾を岸壁から離し、14時23分船首が岸壁から約30メートル離れ、岸壁に対してほぼ25度の角度の態勢とした。
 A受審人は、この態勢から回頭しても船尾はかわせると思い、風圧の影響に対して十分に配慮せず、後退して岸壁からさらに離したうえ回頭するなどの操船を行わないまま、バックスプリングを放し、機関、舵及びバウスラスターにより引き続いて左回頭を始めたところ、左舷側からの強い風を風圧面積の大きい船体に受けて船尾が岸壁に著しく接近し、14時25分塩釜港仙台北防波堤灯台から真方位275度1.9海里の地点において、岸壁に対してほぼ60度の角度となったとき、船尾端右舷側が岸壁に衝突した。
 当時、天候は晴で風力6の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 岸壁衝突の結果、とよふじ丸は、船尾端右舷側に凹損を生じ、岸壁の車止めが損傷した。

(原因)
 本件岸壁衝突は、塩釜港仙台区雷神ふ頭岸壁前面において、強い南風が吹くなか、入船右舷付けの状態から離岸して左回頭する際、風圧の影響に対する配慮が不十分で、船尾が岸壁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、塩釜港仙台区雷神ふ頭第3号岸壁に入船右舷付けの状態から離岸して左回頭する場合、左舷側からの強い南風が吹いていたのであるから、船尾が岸壁に著しく接近しないよう、風圧の影響に対して十分に配慮すべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、大丈夫と思い、風圧の影響に対して十分に配慮しなかった職務上の過失により、後退して岸壁からさらに離したうえ回頭するなどの操船を行わないまま回頭して船尾の岸壁への衝突を招き、船尾端右舷側に凹損を生じさせ、岸壁の車止めを損傷させるに至った。





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