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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年長審第80号
件名

漁船第五十八昭生丸漁船竜祥丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月28日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:第五十八昭生丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:竜祥丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
昭生丸・・・右舷中央部ブルワークに凹損
竜祥丸・・・船首部を圧壊

原因
竜祥丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守

裁決主文

 本件衝突は、竜祥丸が、見張り不十分で、前路で漂泊して警告信号を連吹する第五十八昭生丸に対して衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年4月8日03時55分
 長崎県福江島南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十八昭生丸 漁船竜祥丸
総トン数 309トン 4.9トン
全長 59.57メートル  
登録長   12.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,147キロワット  
漁船法馬力数   90

3 事実の経過
 第五十八昭生丸(以下「昭生丸」という。)は、大中型旋網漁業の漁獲物運搬に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか11人が乗り組み、船首3.0メートル船尾4.5メートルの喫水をもって、空倉で、平成11年4月7日07時53分船団を組んで博多港を発し、五島列島南西方沖合の漁場に向かった。
 翌8日03時00分A受審人は、大瀬埼灯台から298度(真方位、以下同じ。)10海里ばかりの地点に達し、機関を中立とし、船団からの指示を待つため、法定の灯火を掲げて漂泊を開始した。
 03時52分少し過ぎA受審人は、船首を320度に向けて漂泊中、右舷正横1海里に自船に向かって進行する竜祥丸の白、紅、緑の3灯を認め、その後の動静監視を行った。
 03時54分半A受審人は、避航する気配のない竜祥丸が300メートルに接近したときから、急速に短音5回の警告信号を連吹したが、効なく、03時55分大瀬埼灯台から298度10.0海里の地点において、昭生丸の船首が320度に向いていたとき、同船の右舷中央部に竜祥丸の船首が直角で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好であった。
 また、竜祥丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、船首0.25メートル船尾0.90メートルの喫水をもって、同日01時25分長崎県宇久島東岸の平漁港を発し、福江島南西方約20海里の漁場に向かった。
 03時13分B受審人は、五島柏埼灯台から355度4.2海里の地点に達し、針路を230度に定め、自動操舵により機関を全速力前進にかけ、21.5ノットの対地速力としたが、出航前日に田植えを行っていたことから釣りの仕掛けを作ることができず、そのため目的地に到着するまで同仕掛けを作成することとして、操舵用のいすに腰掛け、室内の電灯を点灯して前方の見通しがきかない状態で同作業を行いながら進行した。
 03時52分少し過ぎB受審人は、正船首方1.0海里に白、白、緑3灯を表示する昭生丸の灯火を認めることができたが、前路に船はいないものと思い、操舵室のいすに腰掛けて操業に使用する釣りの仕掛けの整備作業に気を取られて見張りを行っていなかったので、その後同船が漂泊中で衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同作業に没頭して続航した。
 その後もB受審人は、衝突を避けるための措置をとらないまま進行し、03時54分半正船首方300メートルまで接近したときから、昭生丸が警告信号を連吹し始めたが、自船の機関音により同信号に気付かず、依然として前示の作業に夢中になって見張りを行うことなく進行し、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、昭生丸は右舷中央部ブルワークが凹損し、竜祥丸は船首部が圧壊した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、五島列島福江島南西方沖合において、竜祥丸が、見張り不十分で、前路で漂泊して警告信号を連吹する昭生丸に対して衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人が、夜間、五島列島福江島南西方沖合を漁場に向けて進行する場合、前路で錨泊する昭生丸を見落とすことのないよう、見張りを厳重に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、前路には船がいないものと思い、見張りを厳重に行わなかった職務上の過失により、同船の存在に気付かないまま進行して衝突を招き、昭生丸の右舷中央部ブルワークを凹損させ、竜祥丸の船首部を圧壊させるに至った。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


参考図
(拡大画面:45KB)





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