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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年長審第6号
件名

漁船福漁丸漁船濱丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月2日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三、平田照彦、河本和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:福漁丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士(5トン未満限定)

損害
福漁丸・・・プロペラ及びプロペラ軸が曲損
濱丸・・・船首部を大破、船長が溺死

原因
濱丸・・・法定灯火不表示、注意喚起信号不履行

主文

 本件衝突は、漂泊して揚網作業中の濱丸が、法定灯火を表示しなかったばかりか、自船の存在を示すための適切な処置をとらなかったことによって発生したものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年9月8日03時50分
 長崎県香焼島南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船福漁丸 漁船濱丸
総トン数 2.0トン 0.2トン
全長 9.75メートル 4.24メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
漁船法馬力数 50 30

3 事実の経過
 福漁丸は、延縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、氷40キログラムを積載し、船首0.34メートル船尾1.27メートルの喫水をもって、平成12年9月8日03時40分長崎県深堀漁港を発し、野母埼沖合の漁場に向かった。
 03時47分半A受審人は、肥前黒瀬灯台から104度(真方位、以下同じ。)1.7海里の地点に達し、正船首方の肥前端島灯台の灯火を操舵目標として針路を233度に定め、機関を半速力前進にかけ、13.2ノットの対地速力で、法定灯火を掲げて手動操舵により進行した。
 03時49分A受審人は、正船首方400メートルのところに漂泊して揚網作業中の濱丸に向首進行したが、ほぼ無灯火状態であったことから、同船を視認することが出来ずに続航し、03時50分肥前黒瀬灯台から121度1.4海里の地点において、福漁丸は、原針路、原速力のまま、その船首が濱丸の左舷船首にほぼ直角で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の東北東風が吹き、視界は良好であった。
 また、濱丸は、刺し網漁業に従事し、航海灯の灯火設備を有しないFRP製漁船で、Bが船長として1人で乗り組み、台風が接近していたことから同人が前日に仕掛けた伊勢エビ刺し網を揚収する目的で、船首0.25メートル船尾0.10メートルの喫水をもって、同日03時05分、無灯火状態で長崎県香焼町本村桟橋を発し、前示の衝突地点付近の漁場に向かった。
 03時25分B船長は、漁場に到着し単一乾電池4個を使用電源とする携帯電灯により、仕掛けた網のボンデンを見つけだし、同時35分機関を停止して長さ25メートル幅1.2メートルを1反とする刺し網8反分の揚網を開始したが、携帯電灯を消して頭部に取りつけた単一乾電池4個を使用電源とするヘッドランプによる白色灯火で手元を照らし、両手で揚網を行っていたが、揚網中はヘッドランプの照らす方向が一定しておらず、その灯火は船舶の存在を表示するには十分なものでなくほとんど無灯火状態であった。
 03時49分B船長は、船首をほぼ南東方に向けて約2反半の網を揚収したとき、白、紅、緑3灯を表示した福漁丸を左舷正横400メートルのところに視認し得る状況で、同船が衝突のおそれのある態勢で接近していたが、自船の存在を示すため携帯電灯を使用して同船に対して照射するなど衝突を避けるための処置をとることなく、揚網を続け、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、福漁丸はプロペラ及びプロペラ軸が曲損し、濱丸は船首部が大破し、作業用救命胴衣を着用していなかったB船長(大正8年3月15日生、一級小型船舶操縦士免状受有)は溺死した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、長崎県香焼島南方の沖合において、漂泊して揚網作業中の濱丸が、法定灯火を表示しなかったばかりか、接近する福漁丸に対して所持する携帯電灯により厳重に照射するなど自船の存在を示すための適切な処置をとらなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人の所為は本件発生の原因とはならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:42KB)





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