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平成13年那審第13号
件名

漁船3号司丸漁船日進丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月21日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、平井 透)

理事官
長浜義昭

受審人
A 職名:3号司丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
C 職名:日進丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:3号司丸甲板員

損害
司丸・・・左舷側前部ブルワークを破損
日進丸・・・左舷船首に亀裂

原因
日進丸・・・居眠り運航防止措置不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
司丸・・・横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、日進丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る3号司丸の進路を避けなかったことによって発生したが、3号司丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Cを戒告する。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年10月13日02時20分
 鹿児島県奄美大島東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船3号司丸 漁船日進丸
総トン数 17.14トン 8.5トン
登録長 11.90メートル 12.38メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 478キロワット 300キロワット

3 事実の経過
 3号司丸(以下「司丸」という。)は、かつお一本釣り漁に従事するFRP製漁船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.8メートル船尾2.4メートルの喫水をもって、平成12年10月13日00時00分鹿児島県古仁屋港を発し、奄美大島東方の漁場に向かった。
 A受審人は、00時45分ごろ皆通埼灯台の東方4.8海里ばかりの地点で、漁場までの船橋当直を無資格のB指定海難関係人と有資格の漁労長との2人に適宜単独で行わせることとし、両人に同当直を委ねて降橋したが、その際、同指定海難関係人に対し、複数の他船との見合い関係が生じたときには、A受審人に報告するよう指示しなかった。
 漁労長は、船橋当直を引き継ぎ、針路を088度に定め、自動操舵として6.0ノットの対地速力で東行し、01時00分皆通埼灯台から095度(真方位、以下同じ。)7.2海里の地点で、休息をとるため、船橋にいたB指定海難関係人に船橋当直を任せて降橋した。
 B指定海難関係人は、単独の船橋当直に就き、同じ針路及び速力で進行し、01時55分12海里レンジとしたレーダー画面上で日進丸の映像を左舷船首21度6.0海里に探知し、その動静を監視しながら続航した。
 そして、B指定海難関係人は、02時05分皆通埼灯台から095度13.6海里の地点で、右舷船首20度4.0海里ばかりのところに第三船のレーダー映像を探知し、複数の他船との見合い関係が生じたが、このことをA受審人に報告せず、第三船との見合い関係を早めに解消するつもりで、針路を098度として1分間航走したのち元の針路にもどすことを3度繰り返した。
 B指定海難関係人は、02時15分088度の針路にもどして同じ速力で進行し、同時17分皆通埼灯台から092度14.9海里の地点に達したとき、レーダーで右舷船首20度3海里ばかりのところに認めた第三船を避けるつもりで針路を108度に転じ、左舷船首37度1,230メートルのところに、前路を右方に横切る日進丸の白、緑の2灯を認めて続航した。
 司丸は、同じ針路及び速力で進行し、日進丸の方位がほとんど変わらず避航の気配がないまま衝突のおそれのある態勢で接近したが、間近に接近したとき行きあしを停止するなど衝突を避けるための協力動作がとられないまま続航し、02時20分少し前衝突の危険を感じたB指定海難関係人が機関を全速力後進としたものの、02時20分皆通埼灯台から092度15.2海里の地点において、1.0ノットの速力で108度に向首した自船の左舷前部と日進丸の船首とが前方から59度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の南南東風が吹いていた。
 また、日進丸は、底延縄漁等に従事するFRP製漁船で、C受審人が1人で乗り組み、船首1.0メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、同月6日09時00分沖縄県具志漁港を発し、鹿児島県奄美群島周辺の漁場で操業を行い、めばる等約500キログラムを獲り、同月13日00時30分同県喜界島南方沖合いの漁場を発して具志漁港に向かった。
 ところで、C受審人は、漁場到着後、午前6時ごろから午後6時ごろまでの間操業を行い、夜間には錨泊して休息をとっていたものの、同月12日には24時ごろまで操業を行い、疲労が蓄積していた状態であった。
 発進後、C受審人は、針路を229度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進に掛け、9.2ノットの対地速力で進行し、操舵室後部の船室で食事をとり、その後、操舵室のいすに腰を掛けて見張りに従事した。
 C受審人は、13日01時50分皆通埼灯台から082度18.8海里の地点に達したとき、疲労が蓄積していたことや満腹になったことなどから眠気を催したが、我慢できるものと思い、立って外気に当たるなどして居眠り運航の防止措置をとることなく、そのままいすに腰を掛けて見張りを続けているうち、いつしか居眠りに陥った。
 日進丸は、同じ針路及び速力で進行し、02時17分皆通埼灯台から091度15.5海里の地点に達したとき、右舷船首22度1,230メートルのところに、前路を左方に横切る態勢の司丸の白、赤の2灯を視認することができる状況で、その後その方位が変わらず互いに接近し、衝突のおそれがあったが、C受審人が居眠りに陥っていたのでこのことに気付かず、速やかに同船の進路を避けることができないまま続航し、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、司丸は左舷側前部ブルワークを破損し、日進丸は左舷船首に亀裂を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、奄美大島東方沖合いにおいて、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近する際、日進丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る司丸の進路を避けなかったことによって発生したが、司丸が衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 司丸の運航が適切でなかったのは、船長が無資格の船橋当直者に対し、複数の他船との見合い関係が生じたときには船長に報告するよう指示しなかったことと、同船橋当直者が、複数の他船との見合い関係が生じた際、船長に報告しなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
 C受審人は、夜間、奄美大島東方沖合いを南下中、疲労が蓄積して眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、外気に当たるなどして居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、我慢できるものと思い、操舵室のいすに腰を掛けたまま当直を続け、立ち上がって外気に当たるなどして居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する司丸に気付かず、同船の進路を避けることなく進行して衝突を招き、司丸の左舷側前部ブルワークを破損し、日進丸の左舷船首に亀裂を生じさせるに至った。
 以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人は、夜間、奄美大島東方沖合いを東行中、B指定海難関係人に船橋当直を委ねる場合、複数の他船との見合い関係が生じた際には同受審人に報告するよう指示すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、指示するまでもないと思い、複数の他船との見合い関係が生じた際には報告するよう指示しなかった職務上の過失により、複数の他船との見合い関係が生じたとき報告が得られず、前路を右方に横切り、衝突のおそれがある態勢で、避航の気配がないまま接近する日進丸との衝突を避けるための協力動作をとることができず、同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人が、夜間、奄美大島東方沖合において、単独で船橋当直に就き、東行中、複数の他船との見合い関係が生じた際、A受審人に報告しなかったことは、本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては勧告しない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図1
(拡大画面:22KB)

参考図2
(拡大画面:25KB)





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