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平成12年門審第63号
件名

漁船勝栄丸プレジャーボート豊英丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月28日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(佐和 明、西村敏和、相田尚武)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:勝栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:豊英丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
勝栄丸・・・右舷船首から船尾にかけて外板に擦過傷
豊英丸・・・右舷船首から船尾にかけて外板に擦過傷、豊英丸船長が顔面挫創

原因
勝栄丸・・・法定灯火不表示
豊英丸・・・法定灯火不表示

主文

 本件衝突は、勝栄丸が、法定の灯火を表示しなかったばかりか、無灯火で航行したことと、豊英丸が、法定の灯火を表示しなかったばかりか、無灯火で航行したこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月31日05時40分
 大分県佐伯港

2 船舶の要目
船種船名 漁船勝栄丸 プレジャーボート豊英丸
総トン数 0.46トン 0.3トン
全長 5.2メートル 4.92メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力   18キロワット
漁船法馬力数 30  

3 事実の経過
 勝栄丸は、FRP製無甲板型小型漁船で、A受審人が1人で乗り組み、前日仕掛けておいた刺網を揚収する目的で、船首0.1メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、平成11年12月31日05時35分佐伯港本港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から026度(真方位、以下同じ。)3,920メートルの高松漁港係留地を発し、大入島西岸の刺網設置海域に向かった。
 ところで、A受審人は、勝栄丸に法定の灯火を設備しておらず、夜間航行する際には携帯式の照明器具を携行していたものの、主に刺網作業時に海面などを照らすために用いており、他船の接近を認めた折りに同船に対して照射する以外は消灯していた。
 A受審人は、日出前の暗いうちから浅礁が散在する大入島西岸に接近して航行する他船はいないものと思い、航行中に自船の存在とその動静を他船に示すため、法定の灯火である白色全周灯及び舷灯1対を表示しなかったばかりか、長さ7メートル未満であって最大速力が7ノットを超えない船舶が表示することができる白色全周灯1灯の表示も行わず、無灯火のまま、右舷船尾部に腰を掛けて左手で船外機の操縦桿を握り、対岸の灯火を船首目標として西行し、通称タテノ鼻から北方に拡延している干出岩の北側を通過したところで左に転じ、05時39分半北防波堤灯台から017度3,800メートルの地点に達したとき、針路を佐伯市葛鼻の石油タンクの照明灯を船首目標とする204度に定め、機関を半速力前進にかけて5.0ノットの対地速力で進行した。
 こうして、A受審人は、船首目標の灯火を見ながら原針路、原速力で続航中、05時40分わずか前、右舷前方に機関音を聞いてその方向を凝視したところ、暗闇の中に間近に迫った豊英丸の白い船首を認めたが、どうする間もなく、05時40分北防波堤灯台から017度3,750メートルの地点において、勝栄丸は、その船首部右舷側が、豊英丸の船首部右舷側に、前方から16度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、月齢は23で、日出が07時15分であった。
 また、豊英丸は、FRP製無甲板型プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、大入島高松浦にある以前住んでいた自宅の清掃を行う目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日05時10分北防波堤灯台から196度800メートルばかりの、佐伯港港奥にある中川河口部の定係地を発し、高松漁港に向かった。
 B受審人は、豊英丸を専ら昼間に使用しており、法定の灯火を設備していなかったが、大晦日の早朝のこの時間帯に航行する他船はいないものと思い、当時足下を照らす目的で懐中電灯を携行していたものの、自船の存在とその動静を示すために法定の白色全周灯及び舷灯1対を表示しなかったばかりか、長さ7メートル未満であって最大速力が7ノットを超えない船舶が表示することができる白色全周灯1灯の表示も行わず、無灯火のまま、船尾右舷側に腰を掛けて左手で船外機の操縦桿を握って操船に当たり、彦島と大入島の島影の間に向けて北上した。
 05時36分半B受審人は、北防波堤灯台から012.5度3,150メートルの地点に達したとき、針路をソコ碆灯浮標の灯光を船首目標とする040度に定め、機関を半速力前進にかけて6.0ノットの対地速力で進行した。
 こうして、B受審人は、難聴気味であったことから勝栄丸の機関音にも気付かないまま、原針路、原速力で続航中、豊英丸は、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、勝栄丸及び豊英丸は、それぞれ右舷船首部から船尾にかけての外板に擦過傷を生じ、衝突の衝撃で海中に投げ出されたB受審人は、顔面挫創及び右手切創を負った。

(原因)
 本件衝突は、夜間、佐伯港大入島西岸において、勝栄丸が、法定の灯火を表示しなかったばかりか、無灯火で航行したことと、豊英丸が、法定の灯火を表示しなかったばかりか、無灯火で航行したこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、佐伯港大入島西岸にある高松漁港を発して刺網漁場に向けて航行する場合、自船の存在と動静を他船に示すことができるよう、法定の灯火を表示すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、日出前の暗いうちから浅礁が散在する大入島西岸に接近して航行する他船はいないものと思い、法定の灯火を表示しなかった職務上の過失により、同じく無灯火で航行中の豊英丸に自船の存在を気付かせることができず、互いに避航の措置がとれないまま衝突を招き、勝栄丸及び豊英丸両船の右舷外板にそれぞれ擦過傷を生じさせ、B受審人に顔面挫創及び右手切創を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同受審人を戒告する。
 B受審人は、夜間、佐伯港港奥の定係地を発して大入島西岸高松漁港に向かう場合、自船の存在と動静を他船に示すことができるよう、法定の灯火を表示すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、大晦日の早朝、日出前の暗いうちから航行する他船はいないものと思い、法定の灯火を表示しなかった職務上の過失により、同じく無灯火で航行中の勝栄丸に自船の存在を気付かせることができず、互いに避航の措置がとれないまま衝突を招き、両船に前示のとおりの損傷を生じさせ、自らも負傷するに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同受審人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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