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平成12年門審第51号
件名

貨物船ハンジン バンコク貨物船メリー スター衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年8月23日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(原 清澄、米原健一、橋本 學)

理事官
千手末年

損害
ハ号・・・船首部外板を大破
メ号・・・左舷船首部外板を大破

原因
ハ号・・・動静監視不十分、行会いの航法(避航動作)不遵守(主因)
メ号・・・警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、両船がほとんど真向かいに行き会い、衝突のおそれがある態勢で接近中、ハンジン バンコクが、動静監視不十分で、針路を右に転じず、左転したばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、メリー スターが、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年11月10日20時13分
 伊予灘西航路

2 船舶の要目
船種船名 貨物船ハンジン バンコク 貨物船メリー スター
総トン数 5,833トン 3,995トン
全長   107.02メートル
登録長 114.11メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 3,353キロワット 3,420キロワット

3 事実の経過
 ハンジン バンコク(以下「ハ号」という。)は、航行区域を遠洋区域とする船尾船橋型鋼製貨物船で、船長A及び三等航海士Bほか15人が乗り組み、コンテナ91個を積載し、船首3.50メートル船尾5.00メートルの喫水をもって、平成11年11月9日14時00分名古屋港を発し、速吸瀬戸及び関門海峡を経る進路を採って大韓民国釜山港に向かった。
 翌10日19時55分B三等航海士は、伊予灘西航路を北上中、富来港防波堤灯台から087度(真方位、以下同じ。)4.9海里ばかりの地点に至り、一等航海士から針路330度及び対地速力14.2ノットで船橋当直を引き継ぎ、甲板手と2人で同当直に就き、自船の航海灯が正常に点灯していることを確認したのち、20時01分同灯台から068度3.8海里の地点に達したとき、針路を328度に定め、引き続き機関を全速力前進にかけ、自動操舵により進行した。
 20時01分半B三等航海士は、富来港防波堤灯台から065度3.8海里の地点に達したとき、前路を一瞥(いちべつ)したところ、正船首わずか右5海里ばかりにメリー スター(以下「メ号」という。)の白、緑2灯を初認した。
 20時08分B三等航海士は、右舷船首4度2.0海里のところに同船の白、白、紅、緑4灯を視認できるようになり、同船とほとんど真向かいに行き会い、衝突のおそれがある態勢で接近していることが分かる状況となったが、初認時にメ号の白灯のほか緑灯を認めていたことから、同船とは互いに右舷を対して航過できるものと思い込み、同船に対する動静監視を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、速やかに針路を大幅に右に転じることなく続航した。
 20時10分少し前B三等航海士は、富来港防波堤灯台から036.5度4.0海里の地点に達したとき、右舷船首4度1.2海里のところに、紅灯よりも緑灯をより鮮明に表示した同船の航海灯を再び認めたものの、依然として同船とは右舷を対して航過するつもりで、甲板手を手動操舵に就かせ、左舵10度を令して針路を313度に転じて進行した。
 20時11分B三等航海士は、メ号の紅灯を右舷船首14.5度1,450メートルのところに認め、同船が右転したことを知り、同船と衝突のおそれがある態勢で著しく接近する状況となっていたが、速やかに機関を停止して行きあしを止めるなど、衝突を避けるための措置をとることなく、同時11分少し過ぎ右舵10度を令し、再び針路を転じて018度としたところ、メ号の緑灯を視認して同船が左転したことを知り、同時12分少し過ぎ慌てて汽笛による長音1回を吹鳴するとともに、左舵一杯をとり、続いて機関停止としたが、及ばず、20時13分富来港防波堤灯台から031度4.6海里の地点において、ハ号は、その船首が280度に向いて約13ノットの残速力となったとき、メ号の左舷船首部に前方から65度の角度をもって衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、視界は良好であった。
 また、メ号は、航行区域を近海区域とする船尾船橋型鋼製貨物船で、専ら釜山港から関門港や大分県大分港などへのコンテナ輸送に従事していたところ、臨時に京浜港向けの航海に就航することとなり、船長C及び三等航海士Dほか11人が乗り組み、コンテナ215個を積載し、船首5.30メートル船尾6.10メートルの喫水をもって、同月10日07時30分釜山港を発し、関門海峡及び速吸瀬戸を経る進路を採って京浜港横浜区に向かった。
 19時31分ごろD三等航海士は、周防灘航路第5号灯浮標の手前1.9海里ばかりの地点で、一等航海士と船橋当直を交替し、甲板長と2人で同当直に就き、自船の航海灯が正常に点灯していることを確認したのち、同時39分少し過ぎ同灯浮標を左舷側に0.5海里ばかり離して航過したあと、甲板長を手動操舵に就かせて徐々に右転を開始し、同時48分姫島灯台から037度1.5海里の地点に達したとき、針路を153度に定め、引き続いて機関を全速力前進にかけ、13.2ノットの対地速力で、伊予灘西航路を南下した。
 20時01分少し前D三等航海士は、姫島灯台から121度2.5海里の地点に達したとき、伊予灘西航路第4号灯浮標に接近し過ぎていたので、針路を158度に転じて進行し、同時01分半同灯台から124度2.7海里の地点に至り、左舷船首6度4.9海里のところに、ハ号の白、白、紅3灯を初認し、ほとんど真向かいに行き会う状況であったものの、右舷灯を認めなかったところから、同船とは互いに左舷を対して航過するつもりで、針路、速力を保って続航した。
 20時08分D三等航海士は、富来港防波堤灯台から020度5.0海里の地点に達したとき、ハ号がその方位に変化なく、2.0海里まで接近したのを認めたので、同船との船間距離を十分に保つため、同時10分少し前同防波堤灯台から022.5度4.7海里の地点で、右舵を令し、針路を187度に転じて進行した。
 針路を転じて間もなくD三等航海士は、ハ号の白、白、緑3灯を認め、同船が左転したことを知ったものの、速やかに警告信号を行わず、20時11分富来港防波堤灯台から024度4.5海里の地点に達したとき、ハ号が左舷船首39.5度1,450メートルのところまで迫り、両船が衝突のおそれがある態勢で著しく接近する状況となったが、速やかに機関を停止して行きあしを止めるなどの、衝突を避けるための措置をとることなく、左舵10度を令し、再び針路を転じて104度にしたところ、ほぼ同時にハ号が右転して紅灯を表示したまま接近する状況となったので、衝突の危険を感じ、同時12分半探照灯の電源を入れて前路のハ号を照らし、右舵一杯をとるとともに機関を半速力前進に減じて続航中、ハ号の汽笛を聞いて昇橋したパク船長が機関を停止したが、及ばず、メ号は、その船首が165度を向き、約12.9ノットの残速力となったとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ハ号は、船首部外板を大破し、メ号は、左舷船首部外板などを大破したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、伊予灘西航路において、両船がほとんど真向かいに行き会い、衝突のおそれがある態勢で接近中、北上するハンジン バンコクが、動静監視不十分で、針路を右に転じず、左転したばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、南下するメリー スターが、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:49KB)





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