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平成12年神審第65号
件名

遊漁船第八ふじなみ防波堤衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年7月6日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(西田克史、大本直宏、前久保勝己)

理事官
釜谷奬一

受審人
A 職名:第八ふじなみ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
ふじなみ・・・船首部を圧壊、船長が上顎骨骨折、同乗者3人全員に脳挫傷や頭蓋底骨折等

原因
船位確認不十分

主文

 本件防波堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月27日03時45分
 兵庫県姫路港飾磨東防波堤南面

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第八ふじなみ
総トン数 19トン
全長 17.0メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,132キロワット

3 事実の経過
 第八ふじなみ(以下「ふじなみ」という。)は、2基2軸の軽合金製遊漁船兼作業船(旅客船)で、A受審人が1人で乗り組み、救急患者1人とその両親を乗せ、兵庫県姫路港への搬送目的で、船首0.8メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、平成11年12月27日03時25分同県坊勢漁港を発し、姫路港飾磨区第1区(以下、港区の名称に冠する「姫路港」を省略する。)の飾磨岸壁奥側に向かった。
 ところで、飾磨区第1区は、飾磨新西防波堤灯台(群閃緑光、毎6秒に2閃光、光達距離12海里)(以下、灯台及び防波堤の名称に冠する「飾磨」を省略する。)、東防波堤灯台(群閃赤光、毎6秒に2閃光、光達距離10海里)間の幅340メートルの防波堤入口から北側にあって、同入口と飾磨航路がほぼ直交しており、東防波堤灯台から022度(真方位、以下同じ。)1,270メートルの地点に東第2防波堤灯台(単明暗赤光、明3秒暗1秒、光達距離7海里)が設置されていた。
 A受審人は、平成3年ふじなみの進水以来、同船の船長職を執り、漁業監視や工事警戒のほか、家島町長、坊勢区長及び坊勢漁業協同組合長との間で取り交わされた坊勢地区救急患者等の輸送に関する覚書に基づき、坊勢島から姫路港への輸送業務に数多く携わっていた。そして、飾磨区第1区に赤色の灯火を放つ2つの灯台が存在し、東防波堤灯台の灯火が背景地の明かりの中に紛れることがあり、同灯火が東第2防波堤灯台の灯火に比べて見えにくいことを知っていたので、夜間、同第1区への入航に当たり、レーダーを活用して防波堤入口を確認していた。
 発航したA受審人は、機関を回転数毎分1,750の全速力前進にかけ、操縦席に腰を下ろして見張りに就き、しばらく北上したのち広畑区第2区に入り、飾磨航路に入航したら防波堤入口に針路を転じる予定で作動中のレーダーを2キロメートルレンジとし、03時40分半新西防波堤灯台から217度2.1海里の地点で、針路を041度に定め、32.5ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 03時43分A受審人は、新西防波堤灯台から212度1,700メートルの地点に達したとき、背景地の明かりに紛れていたものか、船首わずか左の東防波堤灯台の灯火を見落としたまま、船首少し左に単明暗で発光する東第2防波堤灯台の赤灯1個を視認したが、一見しただけでこれを手前の東防波堤灯台の灯火と思い、転針時機を失しないよう、レーダーにより、船位の確認を十分に行わなかったので、灯火を見誤っていることに気付かずに続航した。
 03時44分少し過ぎA受審人は、新西防波堤灯台から180度420メートルの地点で、飾磨航路に入航したものの、依然として船位の確認を行っていなかったので、防波堤入口に向けての転針地点に至ったことに気付かず、正船首1,000メートルの東防波堤に向首する針路のまま進行した。
 A受審人は、間もなく飾磨航路を横切り、左舷後方に替わった新西防波堤灯台の灯火を見ただけで転針時機の見当をつけ、03時45分少し前左舵10度を取り、レーダー画面に目を向けたところ、至近に迫った東防波堤の映像を初めて認めたが、避けるいとまもなく、東防波堤灯台から065度90メートルの地点において、ふじなみは、原速力のまま、左転中の船首が352度に向いたとき、東防波堤南面に70度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
 衝突の結果、船首部を圧壊したが、のち修理され、A受審人が上顎骨骨折、同乗者Bが脳挫傷、同Cが頭蓋底骨折及び同Dが顔面打撲などを負った。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、兵庫県姫路港飾磨区第1区に向かう防波堤入口の転針地点に向け航行中、船位の確認が不十分で、同地点を通過して東防波堤に向首する針路のまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、飾磨区第1区に向かう防波堤入口の転針地点に向け航行中、赤灯1個を視認した場合、同色の灯光を放つ防波堤灯台が2つあったから、灯火を誤認して転針時機を失しないよう、作動中のレーダーにより、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一見しただけで東第2防波堤灯台の灯火を東防波堤灯台の灯火と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、転針地点を通過し、東防波堤に向首する針路のまま進行して同堤との衝突を招き、船首部を圧壊させ、自身が上顎骨骨折等を負うとともに、同乗者3人全員に脳挫傷や頭蓋底骨折等の重軽傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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