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平成13年横審第12号
件名

漁船勝宝丸防波堤衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年7月25日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(半間俊士、黒岩 貢、長谷川峯清)

理事官
古川隆一

受審人
A 職名:勝宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
勝宝丸・・・船首部に亀裂を伴う損傷等
甲板員が頭部挫創、船長が右肋骨助軟骨骨折

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年5月5日03時30分
 愛知県東幡豆港

2 船舶の要目
船種船名 漁船勝宝丸
総トン数 13.47トン
登録長 13.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 勝宝丸は、小型機船底びき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.1メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成12年5月4日17時00分愛知県東幡豆港の約1,000メートル西方にある洲崎港と通称されている定係地を発し、18時20分伊良湖水道南東方沖合の漁場に至り、投網開始から揚網終了まで40分ばかりを要する操業を連続して行い、クルマエビなど約100キログラムを漁獲したのち、翌5日02時15分漁場を発進して帰途に就いた。
 ところで、A受審人は、平素、出漁する日の午前中は自宅で休息をとることにしていたが、同月4日は08時30分から出漁直前の16時30分まで、東幡豆漁業協同組合管理のもとで行われた潮干狩りの手伝いを行い、十分な休息をとらないまま出漁していた。
 帰途に就いたときA受審人は、前日の潮干狩りの手伝いに引き続き、長時間の操業を行っており、20時間ばかり眠っていない睡眠不足の状態であったが、まさか居眠りすることはないと思い、甲板員とともに2人で当直を行うなど十分な居眠り運航の防止措置をとらず、甲板員を漁獲物の整理にあたらせ、単独で操船にあたった。
 A受審人は、操舵室のいすに腰掛け、同業船との無線交信を行いながら伊良湖水道及び中山水道を渥美半島西岸沿いに航行し、02時54分半立馬埼灯台から312度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点で、針路を東幡豆港南方に位置する前島の西端にある灯ろう(以下「前島灯ろう」という。)に向首する029度に定め、機関を全速力前進にかけ、14.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 A受審人は、前島に近づき、無線交信を終え、機関音だけが鳴り響く状況下、03時28分少し前東幡豆港正面防波堤東灯台(以下「東灯台」という。)から196度1,120メートルの地点で、針路を東幡豆港中柴南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)に向首する020度に転じ、同時28分少し過ぎ前島灯ろうを右舷正横に見て航過したものの、睡眠不足のうえに間もなく入港するということで急に気が緩んだことから、いつしか居眠りに陥り、同時30分少し前東灯台から132度90メートルの地点の、同港内に向首する転針予定地点に達したことに気付かず、南防波堤灯台に向首したまま続航中、03時30分勝宝丸は、東灯台から060度120メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首が南防波堤先端に衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 衝突の結果、船首部に亀裂(きれつ)を伴う損傷並びにプロペラ及び同シャフトに曲損をそれぞれ生じ、のち修理された。また、甲板員が頭部挫創を、A受審人が右肋骨助軟骨骨折をそれぞれ負った。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、愛知県東幡豆港に帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、南防波堤に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、愛知県東幡豆港に帰航する場合、十分な休息を取らないまま出漁し、長時間の操業で睡眠不足の状態であったから、甲板員とともに2人で当直を行うなど、十分な居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は、まさか居眠りすることはないと思い、十分な居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、同港の南防波堤先端に向首したまま進行して同防波堤との衝突を招き、船首部に亀裂を伴う損傷並びにプロペラ及び同シャフトに曲損をそれぞれ生じさせ、甲板員に頭部挫創を負わせ、自らも右肋骨助軟骨骨折を負うに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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