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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 施設等損傷事件一覧 >  事件





平成12年横審第125号
件名

押船第十六真和丸被押起重機台船第十五真和丸のり養殖施設損傷事件

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成13年6月6日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(葉山忠雄、黒岩 貢、小須田 敏)

理事官
酒井直樹

受審人
A 職名:第十六真和丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
のり養殖施設ののり網などに損傷
真和丸押船列・・・損傷なし

原因
針路選定不適切

主文

 本件のり養殖施設損傷は、針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年3月8日01時30分
 伊勢湾北部

2 船舶の要目
船種船名 押船第十六真和丸 起重機台船第十五真和丸
総トン数 19トン  
全長 13.30メートル 45.0メートル
5.10メートル 17.0メートル
深さ 2.10メートル 3.3メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 882キロワット  

3 事実の経過
 第十六真和丸(以下「真和丸」という。)は、2基2軸の推進器を有し、レーダー装備のない、鋼製の引船兼押船で、主として伊勢湾内の海事土木工事に従事していたところ、知人からの依頼を受け、漂流漁船回収の目的で、A受審人ほか3人が乗り組み、船首1.4メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、船首尾とも1.5メートルの等喫水で、船尾部に操舵室を持つ第十五真和丸(以下「台船」という。)の船尾凹部に結合し、全長47メートルの押船列(以下「真和丸押船列」という。)を構成して平成11年3月6日16時00分名古屋港を発し、静岡県浜名湖沖合に向かった。
 A受審人は、翌7日08時30分御前埼南西方15海里ばかり沖合において漂流していた漁船を台船上に収容したのち、台船の操舵室が真和丸のそれより高い位置にあることから、台船の操舵室で遠隔操縦装置を用いて操船することとし、09時30分同沖合を発進して帰港の途についた。
 ところで、常滑港沖合には、当時、常滑港西防波堤灯台から337度(真方位、以下同じ。)1,910メートル(以下「ア」という。)、286度2,980メートル(以下「イ」という。)、229度2,580メートル(以下「ウ」という。)、219度1,830メートル(以下「エ」という。)、287度140メートル(以下「オ」という。)、318度1,000メートル(以下「カ」という。)、335度1,780メートル(以下「キ」という。)及び337度1,800メートル(以下「ク」という。)の各点を順次結んだ線で囲まれた区域内に、区105号と称するのり養殖施設(以下「区105号」という。)があり、同区域内の北側、西側及び南側各区画線に沿って、16箇所に光達距離4キロメートルの性能を有する黄色あるいは緑色点滅式簡易標識灯(以下「標識灯」という。)が設置され、その沖合には右舷標識である広瀬灯浮標及びトーガ瀬北灯浮標が敷設されていた。A受審人は、付近海域を昼間に航行する折りに同養殖施設、標識灯及び右舷標識を見ていたことから、その敷設模様を十分に承知していたものの、標識灯の灯質については、その詳細を知らなかった。
 こうしてA受審人は、伊良湖水道を航過して伊勢湾を北上し、22時43分半野間埼灯台から203度4.5海里の地点で、名古屋港東航路入口に向けて針路を定めることとしたが、常滑港沖合ののり養殖施設に接近しても、同養殖施設に設置された標識灯の灯火を視認したところで、その灯火を避けながら北上すればよいと思い、その西方に敷設された右舷標識の左方に向けるなど、針路の選定を適切に行うことなく、針路を区105号ののり養殖施設に接近することとなる000度に定め、機関を半速力前進にかけて4.0ノットの対地速力とし、操舵室中央のいすに座った状態で手動操舵により進行した。
 A受審人は、翌8日01時18分常滑沖海上環境測定局灯を左舷に見て航過し、そのころ、前路に点滅する灯火を認めたものの、同灯火がのり養殖施設の標識灯のものであることに気付かないまま続航中、同時28分半、真和丸押船列は原針路、原速力のまま、及び両点を結ぶ線上で区105号ののり養殖施設海域に乗り入れ、01時30分常滑港西防波堤灯台から262度2,400メートルの地点において、停止状態となった。
 当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 A受審人は、乗組員を台船船首に向かわせて状況を調べたところ、水面下に吊り下げた状態の両舷錨にのり網が懸かっているのを知り、事後の措置にあたった。
 その結果、真和丸押船列に損傷はなかったが、のり養殖施設ののり網などに損傷を生じ、のち修理された。

(原因)
 本件のり養殖施設損傷は、夜間、伊勢湾を北上中、名古屋港に向け針路を定めることとした際、針路の選定が不適切で、常滑港沖合ののり養殖施設に接近する針路で進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、伊勢湾を北上中、名古屋港に向け針路を定めることとした場合、常滑港沖合ののり養殖施設に接近することのないよう、その西方沖合に敷設された右舷標識の左方に向けるなど、針路の選定を適切に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、同養殖施設に設置された標識灯の灯火を視認したところで、その灯火を避けながら北上すればよいと思い、針路の選定を適切に行わなかった職務上の過失により、常滑港沖合ののり養殖施設に接近する針路で進行して同施設に乗り入れる事態を招き、のり網などに損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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