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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成12年那審第21号
件名

プレジャーボートスカイライダーIIパラセーラー負傷事件

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成13年6月21日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
上原 直

受審人
A 職名:スカイライダーII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
パラセーラー1人が溺水(入院加療)

原因
パラセーリングを開始する際の安全に対する配慮不十分

主文

 本件パラセーラー負傷は、パラセーリングを開始する際の安全に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年1月4日13時35分
 沖縄県恩納漁港北方沖

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートスカイライダーII
登録長 8.35メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 272キロワット

3 事実の経過
 スカイライダーIIは、FRP製プレジャーボートで、A受審人ほか1人が乗り組み、パラセーラー6人を乗せ、パラセーリングを行う目的で、船首0.50メートル船尾0.85メートルの喫水をもって、平成12年1月4日13時20分沖縄県恩納村万座ビーチホテルの専用桟橋を発し、恩納漁港北方沖に向かった。
 ところで、スカイライダーIIは、船尾にパラセーラーが乗った椅子を離着陸させるプラットホームが、プラットホーム前部に上下に伸縮するブームがそれぞれ設けられていた。また、パラセーリングを行う際の準備作業は、船首を風上に向けて停留し、ブーム先端のフックにライザーロープと称する2本のパラシュート吊上用のロープをかけ、ブームを伸ばしてパラシュートを吊り上げ、パラシュートに風が入って開いた状態でブームを縮めてフックを外し、椅子にパラセーラーを座らせるものであった。このとき、パラシュートが動き回り、ライザーロープがブームに絡まるおそれがあった。
 13時30分A受審人は、恩納港第2号灯標から004度(真方位、以下同じ。)1,300メートルの地点に至り、船首を045度に向けて停留し、パラセーリングの準備に取りかかった。
 A受審人は、13時35分少し前パラセーラー6人のうち2人を椅子に座らせて発進することにしたが、ライザーロープの状態を確認しなかったので、ライザーロープ1本がブームに絡まっていることに気付かず、椅子を船尾後方上空に浮上させるため、椅子に結んだワイヤを伸ばしながら船の速力を上げたところ、13時35分恩納港第2号灯標から004度1,300メートルの地点において、ワイヤが船尾から5メートルばかり伸びたとき、ライザーロープのパラシュート側取付部が切断し、椅子が海面に落下して反転したのを認めた。
 当時、天候は曇で風力5の北東風が吹いていた。
 この結果、パラセーラー1人が病院に搬送され、溺水で1日の入院加療を要した。

(原因)
 本件パラセーラー負傷は、恩納漁港北方沖において、パラセーリングを開始する際、安全に対する配慮が不十分で、ライザーロープがブームに絡まり、同ロ−プのパラシュート側取付部が切断し、パラセーラーが乗った椅子が海面に落下したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、恩納漁港北方沖において、パラセーリングを開始する場合、ライザーロープの状態を確認するなど、安全に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、安全に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、ライザーロープがブームに絡まっていたことに気付かないまま発進し、同ロ−プのパラシュート側取付部が切断し、パラセーラーが乗った椅子を海面に落下せしめ、パラセーラーに1日の入院加療を要する負傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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