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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成12年那審第48号
件名

漁船盛丸転覆事件

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成13年6月13日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:盛丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
機関に濡損、船尾船底が大破し、のち廃船

原因
気象・海象に対する配慮不十分

主文

 本件転覆は、気象海象に対する配慮が不十分で、発航を取り止めなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月17日12時05分
 沖縄県嘉手納漁港西方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船盛丸
総トン数 1.41トン
登録長 7.95メートル
1.60メートル
深さ 0.57メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 25

3 事実の経過
 盛丸は、サバニ型の木製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、刺し網漁の目的で、船首0.10メートル船尾0.45メートルの喫水をもって、平成11年12月17日11時00分沖縄県嘉手納漁港を発し、同漁港西方の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、前日16日昼のテレビ及び当日発航前の10時ごろ電話で入手した気象情報により、天候の悪化するおそれがあることを知ったが、漁場に至って操業の可否を判断することとし、気象海象に配慮して発航を取り止めることなく離岸したものであった。
 11時20分A受審人は、嘉手納港第2号立標から310度(真方位、以下同じ。)1,350メートルの地点に達したとき、北の風約6メートルで波高約0.5メートルであったことから、機関を中立運転とし、船首を200度に向けて投網を開始した。
 A受審人は、11時59分雨が降り始めて北方に白波を認めたことから突風の吹き出しと考え、急いで帰航することにして残りの網を投下し、12時00分嘉手納港第2号立標から299度1,300メートルの地点を発進し、陸岸に近づいたら嘉手納漁港に向けることとし、針路を020度に定め、機関を全速力前進にかけて12.0ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、動揺が激しくなったことから、12時03分機関を7.0ノットの半速力前進に減じて続航し、12時05分少し前嘉手納漁港に向けるため右舵一杯をとって右回頭を始めた。
 盛丸は、12時05分嘉手納港第2号立標から311度1,350メートルの地点において、右回頭中船首が090度を向いたとき、突風と高起した波を左舷側から受けて船体が持ち上げられ、右舷側に大傾斜して転覆した。
 当時、天候は雨で風力7の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近には波高約3メートルの波があり、17日04時32分沖縄本島全域に発表された強風、波浪注意報が継続されていた。
 転覆の結果、機関に濡損を生じ、船尾船底が大破し、のち廃船となり、A受審人は僚船に救助された。

(原因)
 本件転覆は、嘉手納漁港西方沖において、刺し網漁を行うにあたり、天候の悪化が予想された状況下、気象海象に対する配慮が不十分で、発航を取り止めず、突風と高起した波を左舷側から受けて船体が持ち上げられ、右舷側に大傾斜したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、嘉手納漁港西方沖において、刺し網漁を行うにあたり、事前に入手した気象情報により、天候の悪化するおそれがあることを知った場合、気象海象に配慮して発航を取り止めるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、漁場に至って操業の可否を判断することとし、発航を取り止めなかった職務上の過失により、突風の襲来を認めて操業を中断して帰航中、突風と高起した波を左舷側から受けて船体が持ち上げられ、右舷側に大傾斜して転覆を招き、機関に濡損を生じさせ、船尾船底を大破せしめ、のち廃船させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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