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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年仙審第12号
件名

作業船第三雄幸丸漁船源丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年6月28日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(東 晴二)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:源丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
雄幸丸・・・左舷中央部外板、胴部ブルワークを損傷
源 丸・・・船首部外板に擦過傷

原因
源 丸・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

裁決主文

 本件衝突は、両船が無難に航過する態勢の際、源丸が、見張り不十分で、第三雄幸丸の前路に進出したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年6月21日10時15分
 岩手県釜石港

2 船舶の要目
船種船名 作業船第三雄幸丸 漁船源丸
総トン数 4.47トン 1.14トン
全長   5.86メートル
登録長 10.89メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 47キロワット 29キロワット

3 事実の経過
 第三雄幸丸(以下「雄幸丸」という。)は、航行区域を沿海区域とするFRP製潜水作業船で、平成12年6月21日09時30分岩手県釜石港内の釜石港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)西北西方の突堤北側に着岸中の船に接舷して、同船のプロペラに絡んだロープを除去する作業を開始し、これを終えたのち、船長Bほか1人が乗り組み、船首0.3メートル、船尾1.2メートルの喫水をもって、10時12分同船を離れ、同港港域内の釜石漁港東第2防波堤北側の泊地に向かった。
 B船長は、操船に当たり、南防波堤と南桟橋との間の幅130メートルの防波堤入口(以下「防波堤入口」という。)に向かい、10時13分防波堤灯台から298度(真方位、以下同じ。)220メートルの地点で、南防波堤北端を船首少し右方に見る110度の針路に定め、機関を微速力前進にかけ、3.0ノットの対地速力で進行した。
 10時14分B船長は、正船首少し右方460メートルのところに防波堤入口の南防波堤寄りに向首して入航する源丸を初めて認め、同時14分半少し前同船が正船首方となり、左方にかわったので左舷を対して無難に航過するものと思い、同じ針路で続航するうち、同時15分少し前源丸が左舷船首16度80メートルとなったとき、そのまま進行すれば左舷を対して約30メートルで航過する状況のところ、同船が左転し始めたのを認め、危険を感じて大声で警告し、同時15分わずか前右舵一杯、機関を全速力後進としたが、防波堤灯台から320度30メートルの地点において、源丸の船首が、185度に向いた雄幸丸の左舷中央部に後方から約75度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期であった。
 また、源丸は、船外機を備えた一本釣りなどの漁業に従事する無甲板型FRP製漁船で、受審人Aが1人で乗り組み、同日04時00分防波堤灯台西方の係留岸壁を出港し、釜石湾南岸の太刀根島付近の漁場で、あいなめなど約20匹を漁獲したところで操業を打ち切り、10時00分同島北方300メートルの地点を発し、帰途に就いた。
 A受審人は、船尾右舷側に腰掛け、左手で船外機を操作し、10時12分防波堤灯台から115度1,070メートルの地点に達したとき、針路を防波堤入口の南防波堤寄りに向く297度に定め、船外機を全速力前進よりも少し落とし、12.0ノットの対地速力で進行した。
 10時14分A受審人は、正船首少し左方460メートルのところに雄幸丸を認めることができる状況であったが、南防波堤北端とその付近の釣り人の様子を見ることに気を取られ、前路の見張りを十分に行っていなかったので、同船に気付かず、同時15分少し前防波堤灯台から055度60メートルの地点に達し、雄幸丸が左舷船首23度80メートルとなり、左舷を対して無難に航過する状況のとき、同灯台西方の係留地点に向けようと左転し始め、雄幸丸の前路に進出する態勢となり、260度に向首して前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、雄幸丸は、左舷中央部外板、同部ブルワーク、機関室の左舷窓などを損傷し、のち修理され、源丸は、船首部外板に擦過傷を生じた。

(原因)
 本件衝突は、岩手県釜石港において、源丸が、南防波堤と南桟橋との間の防波堤入口を入航する際、折から出航中の雄幸丸と左舷を対して無難に航過する状況のところ、見張り不十分で、同船の前路に進出したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、岩手県釜石港において、南防波堤と南桟橋との間の防波堤入口を入航する場合、前路の他船を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、南防波堤北端やその付近の釣り人の様子を見ることに気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、出航する雄幸丸に気付かず、左舷を対して無難に航過する状況のとき、左転し、同船の前路に進出して衝突を招き、雄幸丸の左舷中央部外板、同部ブルワーク、機関室の左舷窓などに損傷を生じさせ、源丸の船首部外板に擦過傷を生じさせた。


参考図
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