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平成12年門審第56号
件名

遊漁船ひびき丸プレジャーボート第2くろがね丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年5月10日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(米原健一、原 清澄、相田尚武)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:ひびき丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第2くろがね丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
ひびき丸・・・左舷船尾部外板に亀裂
くろがね丸・・・船首部に擦過傷

原因
くろがね丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
ひびき丸・・・警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第2くろがね丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切るひびき丸の進路を避けなかったことによって発生したが、ひびき丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月31日06時40分
 関門港西口

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船ひびき丸 プレジャーボート第2くろがね丸
総トン数 11.46トン  
全長 17.50メートル  
登録長   7.96メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 264キロワット 55キロワット

3 事実の経過
 ひびき丸は、船体後部に操舵室を有するFRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客8人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.4メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成11年12月31日06時30分山口県下関漁港南風泊(はえどまり)地区を発し、福岡県白島西方沖合3海里の釣り場に向かった。
 A受審人は、航行中の動力船の灯火を点灯し、釣り客のうち6人を操舵室に、2人を同室後方の甲板上にそれぞれ待機させ、自らは同室中央に設置された舵輪の後方に立って操船に当たり、06時35分半下関南風泊北防波堤灯台から324度(真方位、以下同じ。)280メートルの地点に達したとき、針路を関門航路第4号灯浮標の少し左方に向く282度に定め、機関を半速力前進にかけて11.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 定針後、A受審人は、舵輪の左舷側に設置したレーダーを0.5海里レンジとし、専らレーダーの監視を行いながら西行して関門港の港域に入り、06時37分わずか過ぎ台場鼻灯台から007度830メートルの地点に差し掛かったとき、左舷船首32度1,500メートルのところに第2くろがね丸(以下「くろがね丸」という。)の白、緑2灯を視認し得る状況となり、その後、その方位が変わらず、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、このことに気付かず、間もなく関門航路の東側境界線を通過し、同航路を横切りながら続航した。
 06時38分半わずか過ぎA受審人は、くろがね丸が740メートルに接近したとき、レーダー画面上に同船の映像を探知し、顔を上げて左舷前方を見たところ、同船の白、緑2灯を初めて視認し、その後、同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったが、同船が避航船であるので、いずれ右転するなどして自船の進路を避けるものと思い、警告信号を行わず、更に避航の気配を見せないまま間近に近づいたとき、機関を使用して行きあしを停止するなど、衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行した。
 A受審人は、06時40分わずか前至近に迫った同船にようやく衝突の危険を感じ、急いで右舵一杯をとったが、及ばず、06時40分台場鼻灯台から320度1,350メートルの地点において、ひびき丸は、原針路、原速力のまま、その左舷船尾部に、くろがね丸の船首が前方から72度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、日出は07時21分であった。
 また、くろがね丸は、船体中央からやや船尾寄りに操舵室を有するFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、釣り仲間1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、同日06時10分関門港若松区戸畑新川岸壁を発し、山口県蓋井島北西方沖合2海里の釣り場に向かった。
 B受審人は、航行中の動力船の灯火を点灯し、手動操舵で操船に当たり、適宜速力を調整しながら東行して若松航路を横切ったあと、06時32分少し過ぎ若松洞海湾口防波堤灯台から069度200メートルの地点に達したとき、関門港西口の六連島と馬島間の水道を通るつもりで、針路を同水道の東口付近に向く030度に定めて自動操舵とし、機関を半速力前進にかけて9.0ノットの対地速力で進行した。
 定針したときB受審人は、正船首方の前示東口付近に漁船の灯火を認め、同船を注視して関門第2航路を横切りながら北上し、06時37分わずか過ぎ台場鼻灯台から285度1,330メートルの地点に至ったとき、右舷船首40度1,500メートルのところに、ひびき丸の白、紅2灯を視認でき、その後、その方位が変わらず、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するのを認め得る状況であったが、正船首方の漁船に気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、その進路を避けることなく続航した。
 B受審人は、やがて関門航路に入り、同航路の西端を進行中、06時40分わずか前ふと右舷前方を見たところ、至近に迫ったひびき丸の白い船体を初めて認め、急いで右舵一杯をとったが、効なく、くろがね丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ひびき丸は、左舷船尾部外板に亀裂などを生じ、くろがね丸は、船首部に擦過傷を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、関門港西口において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、くろがね丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切るひびき丸の進路を避けなかったことによって発生したが、ひびき丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、関門港西口において、魚釣りのため山口県蓋井島北西方沖合の釣り場に向けて北上する場合、接近する他船を見落とすことがないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、正船首方の漁船に気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するひびき丸に気付かず、その進路を避けることなく進行して同船との衝突を招き、ひびき丸の左舷船尾部外板に亀裂などを、くろがね丸の船首部に擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人は、夜間、関門港西口において、遊漁のため福岡県白島西方沖合の釣り場に向け西行中、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するくろがね丸が避航の気配を見せず、間近に接近するのを認めた場合、機関を使用して行きあしを停止するなど、衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、同船が避航船であるので、いずれ右転するなどして自船の進路を避けるものと思い、機関を使用して行きあしを停止するなど、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、くろがね丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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