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平成12年函審第73号
件名

旅客船びるご桟橋衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年5月16日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(織戸孝治、安藤周二、工藤民雄)

理事官
大石義朗

受審人
A 職名:びるご船長 海技免状:二級海技士(航海)

損害
びるご・・・左舷中央部防舷材に凹損
第3バース・・・先端から陸側に向け約30メートル海没

原因
びるご・・・気象・海象に対する配慮不十分

主文

 本件桟橋衝突は、風圧に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年10月28日08時29分
 青森港

2 船舶の要目
船種船名 旅客船びるご
総トン数 6,358トン
全長 134.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 13,386キロワット

3 事実の経過
 びるごは、函館港と青森港との間の定期航路に就航する、2基2軸、固定ピッチ推進器翼及びバウスラスタを装備する船首船橋型鋼製旅客船兼自動車渡船で、A受審人ほか19人が乗り組み、旅客36人を乗船させ、車両30台を積載し、船首4.86メートル船尾5.86メートルの喫水をもって、平成11年10月28日03時00分函館港を発し、青森港に向かった。
 06時10分A受審人は、青森港外に達したとき船橋当直中の三等航海士から操船を引き継ぎ、甲板員を舵輪に、同航海士を機関操縦盤にそれぞれ就けて、同港フェリー埠頭第3バース(以下「第3バース」という。)に向け進行した。
 ところで、青森港フェリー埠頭は、北方に開いた同港の内港と呼称される港奥に位置し、北西側を沖館西防波堤、南東側を沖館ふ頭にそれぞれ挟まれた幅約400メートルの間に北東方に面して構築されていた。
 第3バースは、青森港フェリー埠頭の中央部を基部として水深約10メートルの同埠頭前面海域に、同埠頭と直角に北東方に突き出した長さ165メートルの係留桟橋の南東側で、びるごが出船左舷付け着桟することとなっていた。
 A受審人は、青森港での着桟操船に習熟しており、予定どおり沖館西防波堤突端を通過し、06時45分第3バース前面海域に至ったとき、先船の着桟が遅れていて、また、風力が大きかったので、曳船の補助を得て着桟操船に当たるつもりで、曳船の到着を待つため、いったん沖館西防波堤の北東方海域で待機することとして07時06分同海域で投錨したのち同時45分抜錨し、乗組員を再び着桟配置に就けて第3バースに向け南西進した。
 A受審人は、08時19分第3バースの延長線上220メートルの地点で、曳船を右舷船尾に頭付けさせて押させながら右回頭を行い、同時20分右舷錨を投下し、錨鎖1節(27.5メートル)を繰り出して錨鎖を係止し、船首を北方に保持したまま機関を適宜操作、同錨を引きずりながら桟橋先端に接近したところで、船首配置員がもやい銃を2回発射してバウラインを桟橋に取るよう試みたが失敗し、風により圧流されて船首が桟橋から離れたので、いったん桟橋から離れて再度着桟操船を試みることとした。
 08時28分A受審人は、錨鎖を前示のとおり繰り出したまま、曳船を右舷船首で回頭補助に当たらせ、青森港沖館西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から191度(真方位、以下同じ。)525メートルの地点(びるごの船位については、左舷中央部の位置とする。以下同じ。)に移動した。
 このときA受審人は、北東風が桟橋に向かって強吹する気象状況の下、再度着桟操船を行うに当たり、強風により圧流されて桟橋に衝突するおそれがあったものの、錨の把駐力、自船の風圧面積及び曳船の配置等を勘案して、桟橋から十分離れたところで着桟操船を開始するなど風圧に対して配慮することなく、船首方位を005度に保ち錨鎖1節を繰り出したまま機関を前進にかけて約170メートル前進した。
 08時28分半A受審人は、桟橋先端から北東方50メートルの西防波堤灯台から196度360メートルの地点で行きあしを止めたところ、錨鎖が船尾方に張って把駐力が得られず、また、曳船から曳航索をとらないまま同船を右舷船首側に配置させていて、風圧に対抗できず、急激に南西方に圧流され始め、桟橋との衝突の危険を感じたので、バウスラスタ、機関を種々使用するも効なく、びるごは、08時29分西防波堤灯台から199度390メートルの地点で、第3バースの桟橋先端部に005度を向首した同船の左舷中央部が衝突した。
 当時、天候は雨で風力7の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、波高約1メートルのうねりがあった。
 桟橋衝突の結果、びるごは、左舷中央部防舷材に凹損を生じ、第3バースの桟橋の先端から陸側に向け約30メートルの部分が海没したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件桟橋衝突は、強風下の青森港内において、フェリー埠頭の桟橋へ着桟操船する際、風圧に対する配慮が不十分で、同桟橋に向けて圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、北東風が強吹する状況の下、青森港フェリー埠頭の桟橋に着桟操船を行う場合、強風に圧流されて桟橋に衝突するおそれがあったから、錨の把駐力、自船の風圧面積及び曳船の配置等を勘案して、桟橋から十分離れたところで着桟操船を開始するなど風圧に対して配慮すべき注意義務があった。しかるに同人は、風圧に対して配慮しなかった職務上の過失により、桟橋近距離で行きあしを止め、風圧に対抗することができず、急激に桟橋先端に向かって圧流され、桟橋との衝突を招き、びるごの左舷中央部防舷材に凹損を生じさせ、第3バースの桟橋の先端部を海没させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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