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平成12年第二審第12号
件名

ケミカルタンカーゴールデン ジオン貨物船ブルーレイク衝突事件〔原審門審〕

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年6月6日

審判庁区分
高等海難審判庁(山崎重勝、宮田義憲、田邉行夫、川本 豊、伊藤 實)

理事官
山田豊三郎

損害
ゴ号・・・船首下部圧壊、左舷側中央部附近の外板に凹損
ブ号・・・右舷側前部外板に破口を伴う凹損、右舷側の船橋横ブルーワークに曲損し、コンテナ破損

原因
ゴ号・・・条例等による航法(右側通行)不遵守、船員の常務(衝突回避措置)不遵守
ブ号・・・条例等による航法(右側通行)不遵守、船員の常務(衝突回避措置)不遵守

二審請求者
理事官千手末年

主文

 本件衝突は、関門海峡を東行するゴールデン ジオンが、中央水道の右側端に寄って航行しなかったばかりか、西行するブルー レイクとの衝突を避けるための措置をとらなかったことと、ブルー レイクが、同水道の右側端に寄って航行しなかったばかりか、ゴールデン ジオンとの衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年1月15日18時22分
 関門海峡東口

2 船舶の要目
船種船名 ケミカルタンカーゴールデンジオン 貨物船ブルーレイク
総トン数 6,253.00トン 3,537トン
全長 117.00メートル 93.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 3,603キロワット 2,800キロワット

3 事実の経過
 ゴールデン ジオン(以下「ゴ号」という。)は、船尾船橋型のケミカルタンカーで、船長Aほか18人が乗り組み、ケミカル2,050トン及び食料油3,100トンを積み、船首5.45メートル船尾8.00メートルの喫水をもって、平成11年1月15日08時00分大韓民国蔚山港を発し、神戸港に向かった。
 A船長は、同日15時30分ごろ蓋井島北西方で昇橋して操船指揮をとり、17時05分関門航路に入り、一等航海士にレーダー監視と見張りを、操舵手に手動操舵をそれぞれ行わせ、関門海峡東口に向けて航行した。
 ところで、関門海峡東口は、部埼灯台の北方に中ノ州があり、同州の周辺には中ノ州西(以下「中ノ州」を省略する。)、南西、南東、東、北東及び北各灯浮標がそれぞれ敷設され、関門航路東口から同州南側の中央水道と北側の北水道とに分岐し、各水道には同東口から下関南東水道第1号灯浮標まで標準となる航路線(以下「航路線」という。)が海図上に記載されている。
 中央水道は、西、南西及び南東各灯浮標と門司側の太刀浦埠頭との間にあり、最狭部が同埠頭の北東側岸壁と南西灯浮標間で約1,000メートルあるものの、同岸壁から500ないし600メートルまでの水域が関門港の港域に指定されているだけでなく、関門海峡を通航する船舶の主たる航路となっている。
 A船長は、18時11分少し前、部埼灯台から296度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点において、針路を090度に定め、9.0ノットの対地速力で、中央水道の右側端に寄って航路線に沿って進行した。
 18時15分A船長は、部埼灯台から307度1.3海里の地点に達したとき、右舷船首26度2.0海里のところにブルー レイク(以下「ブ号」という。)の白、白、紅3灯を認め、同船が西行していることを知り、折からの潮流に抗して8.7ノットの対地速力で続航した。同時17分同船長は、同灯台から316度1.1海里の地点に達し、航路線まで300メートルとなったとき、ブ号のマスト灯の開きがほとんど変わらないまま、右舷船首27度1.4海里に接近したのを認め、090度の針路のまま進行した。
 18時18分半A船長は、航路線に達し、右舷前方に同航船が存在したものの、中央水道の右側端に寄せることができたが、同端に寄ることなく続航し、同時19分航路線の左側100メートルにあたる、部埼灯台から331度1,650メートルの地点に至り、ブ号を右舷船首33度1,450メ−トルに見るようになったとき、ようやく右舵5度を令して徐々に右転を始めた。
 18時20分A船長は、ほぼ正船首860メートルにブ号を見るようになったとき右舵一杯を令し、間もなく、同号の両舷灯を認め、衝突のおそれが生じたことを知った。ところが、同船長は、機関を停止しただけで、行きあしを止めるなどして同号との衝突を避けるための措置をとらないで、右転しながら惰力で進行中、同時21分衝突の危険を感じて半速力、引き続いて全速力後進をかけたが及ばず、18時22分部埼灯台から338度1,050メートルの地点において、ゴ号は、175度を向いて7.3ノットの速力となったとき、その船首がブ号の右舷前部に後方から40度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、衝突地点付近には約0.3ノットの北西流があった。
 また、ブ号は、船尾船橋型のコンテナ船で、船長Bほか17人が乗り組み、コンテナ貨物1,522トンを載せ、船首4.50メートル船尾5.60メートルの喫水をもって同月14日22時56分神戸港を発し、中華人民共和国上海港に向かった。
 B船長は、関門海峡通航にそなえて翌15日17時26分ごろ下関南東水道第4号灯浮標付近で昇橋し、そのまま一等航海士に船橋当直を行わせて航行し、18時12分同水道第1号灯浮標を左舷側0.2海里に見る、部埼灯台から110度1.3海里の地点において、自ら操船指揮をとり、中央水道の航路線と交差する309度に針路を定め、機関を港内全速力にかけ、折からの潮流に乗じて10.5ノットの対地速力で、一等航海士に見張りを、操舵手に手動操舵をそれぞれ行わせて進行した。
 18時15分B船長は、航路線の右側170メートルにあたる、部埼灯台から097度1,450メートルの地点に達したとき、左舷船首13度2.0海里にゴ号の白、白、緑3灯を視認し、同船が東行船であることを知った。ところが、同船長は、309度の針路のまま続航し、同時17分航路線の右側50メートルにあたる、同灯台から076度960メートルの地点に達し、ゴ号を左舷船首12度1.4海里に認めるようになり、中央水道の右側端に寄ることができたが、同端に寄ることなく続航し、間もなく、航路線の左側に入った。
 18時19分B船長は、部埼灯台から034度760メートルの地点に達したとき、左舷船首6度1,450メートルに接近したゴ号が徐々に右転を始めたが、このことに気付かず、同時20分同灯台から012度850メートルの地点に至り、ゴ号が正船首やや左舷860メートルに接近したとき、同号と右舷を対して航過しようとして左舵を令した。間もなく、同船長は、同号の左舷灯を認めて衝突のおそれがあることを知ったが、行きあしを止めるなどして同号との衝突を避けるための措置をとらないで続航し、同時21分衝突の危険を感じて機関停止と左舵一杯を令して惰力で左転しながら進行中、ブ号は、215度を向いて8.0ノットの速力となったとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ゴ号は船首下部を圧壊し、左舷側中央部付近の外板に凹損を生じ、ブ号は右舷側前部外板に破口を伴う凹損と同舷側の船橋横ブルワークに曲損を生じてコンテナを破損した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、関門海峡東口において、東行するゴ号が、中央水道の右側端に寄って航行しなかったばかりか、行きあしを止めるなどして西行するブ号との衝突を避けるための措置をとらなかったことと、ブ号が、同水道の右側端に寄って航行しなかったばかりか、行きあしを止めるなどしてゴ号との衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

 よって主文のとおり裁決する。

(参考)原審裁決主文平成12年3月28日門審言渡
 本件衝突は、関門海峡東口において、西行するブルー レイクが、推薦航路線の右側を進行しなかったばかりか、動静監視不十分で、無難に替わる態勢にあった東行するゴールデン ジオンの前路に進出したことによって発生したが、ゴールデン ジオンが、推薦航路線の右側を進行しなかったことも一因をなすものである。


参考図
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