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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成12年長審第49号
件名

プレジャーボートフロンティア同乗者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成13年2月22日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(亀井龍雄)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:フロンティア船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
同乗者が右上顎骨、左頬骨等を骨折、左上腕及び顔面を挫創

原因
転落防止措置不十分

裁決主文

 本件同乗者負傷は、転落防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年7月9日14時30分
 熊本県天草上島南東方沿岸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートフロンティア
全長 7.07メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 62キロワット

3 事実の経過
 フロンティアは、船外機付FRP製モーターボートで、A受審人が単独で乗り組み、同乗者1人を乗せ、釣りの目的で、船首0.25メートル船尾0.35メートルの喫水をもって、平成11年7月9日10時30分天草上島の松島町にあるマリーナを発し、同島南方の楠森島南東方沖合釣場に向かった。
 A受審人は、11時ころ釣場に到着して釣りを行い、14時00分帰途につき、天草上島南岸及び南東岸沿岸を陸岸に沿って航行し、同時25分雨竜埼灯台から093度(真方位、以下同じ。)280メートルの地点で針路を020度に定め、機関回転数毎分4,800の全速力前進にかけ、24.6ノットの対地速力で手動操舵によって進行したところ、同時28分エンジンモニターリングシステムの警報音が鳴り、船外機に異音がしたので、停船して点検することとした。
 A受審人は、停船するにあたり、この頃同乗者が船首部で正面を向いて立っていたので、操舵室に戻るよう同室内から声をかけたところ、機関音で声が届かず、たまたま同乗者が後方を振り向いたとき手で合図をしても意味が十分に通じなかったのか、依然立ったままでいたが、停船による加速度の変化で同乗者が転倒したり転落するおそれがあったにもかかわらず、同人が船体に繋いだもやい綱を持っているのを認めて大丈夫と思い、急激な加速度の変化が生じないよう徐々に減速する等、同乗者に対する転落防止措置をとることなく、停船することにした。
 14時30分A受審人が、牟田港2号防波堤北灯台から153度680メートルの地点において、対地速力を約6ノットの機関回転数毎分2,000に落としたとき、何も知らされていない同乗者が、加速度の急変で瞬時に前方に態勢を崩し、そのまま海中に転落した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、海上は平穏であった。
 その結果、同乗者が、右上顎骨、右頬骨等を骨折し、左上腕及び顔面を挫創した。

(原因)
 本件同乗者負傷は、天草上島南東方沿岸において、高速力で航行中、停船する際、転落防止措置が不十分で、何も知らされずに船首部で立っていた同乗者が、急激な減速による加速度の急変で瞬時に前方に態勢を崩し、海中に転落したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、天草上島南東方沿岸において、高速力で航行中、停船する場合、急激に減速すると、船首部で立っていた同乗者が加速度の急変で転落するおそれがあったから、急激な加速度の変化が生じないよう、徐々に減速するなどの転落防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、同乗者が船体に繋いだもやい綱を持っているので大丈夫と思い、徐々に減速するなどの転落防止措置をとらなかった職務上の過失により、同乗者の海中転落を招き、同人に右上顎骨、右頬骨等骨折、左上腕及び顔面挫創を負わせるに至った。





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