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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成12年門審第41号
件名

プレジャーボートはるな2号転覆事件(簡易)

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成13年3月16日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(西山烝一)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:はるな2号船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船外機に濡損

原因
揚錨方法不適切

裁決主文

 本件転覆は、根掛かりした錨を揚げるにあたり、揚錨方法が不適切で、錨が外れないまま、錨索により横引き状態となったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年5月16日15時20分
 唐津湾

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートはるな2号
全長 3.70メートル
1.36メートル
深さ 0.72メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 7キロワット

3 事実の経過
 はるな2号は、最大搭載人員3人の船外機を備えたランナバウト型FRP製プレジャーボートで、A受審人が同船を軽トラックに載せ、筑前ノー瀬灯標から029度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの福岡県糸島郡志摩町福浦の海岸に運び、同受審人が1人で乗り組み、同人の妻と知人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.30メートル船尾0.40メートルの喫水をもって、平成11年5月16日13時30分前示海岸を発し、同灯標北方に向かった。
 ところで、A受審人は、以前、魚釣りを終えて揚錨する際、錨が海底に根掛かりして困った経験があったことから、根掛かりしても容易に外すことができるよう、投錨に際し、錨索の先端をアンカークラウン先端のアイに結び、アンカーリングに布製などの細索で輪(以下「細索の輪」という。)を作り、同輪にアンカーシャンクに沿わせた錨索を通して投錨する方法を採り、根掛かりしたときは、機関の前進力により錨索を緊張させて細索の輪を切断し、アンカークラウンの方から引っ張って錨を揚げることにしていた。
 13時35分A受審人は、筑前ノ一瀬灯標から341度150メートルの釣り場に着いて機関を停止し、水深10メートルのところに、重さ約3キログラムの折り畳み式の4爪錨を前示方法により投じ、直径12ミリメートルの化学繊維製錨索を30メートル延出して、右舷側中央部前寄りの舷縁上のリングに係止して錨泊し、竿による釣りを開始した。
 15時15分A受審人は、魚が釣れなくなったので、帰航することとし、揚錨するため錨索を手繰り寄せたところ、錨が根掛かりしていて揚がらなかったことから、機関の前進力を利用して錨を揚げることにしたが、錨索を緊張させれば細索の輪が切れて錨を揚げることができると思い、錨索を船尾のリングに付け替えて係止し、船首方向を変えながら機関回転数を徐々に上げて錨索を引くなどの適切な揚錨方法をとることなく、同乗者1人を左舷側中央部、妻を右舷側同部のクーラーボックスにそれぞれ座らせ、自らは船尾端の両舷に渡る台の右舷側に腰掛けて左手で操縦ハンドルを握り、根掛かりした錨を揚げるため発進することとした。
 15時20分わずか前A受審人は、船首が337度を向いていたとき、船外機を始動させて操縦ハンドルを直進状態に保ち、スロットルレバーを急速に一杯まで回して機関を全速力前進にかけ、錨索を舷側に係止したまま急発進したところ、根掛かりした錨が海底から外れず、右舷方に緊張した錨索によって横引きされる状態となり、右回頭しながら右舷側に大傾斜し、15時20分前示錨泊地点において、はるな2号は、復原力を喪失し、船首が022度を向いて右舷側に転覆した。
 当時、天候は晴で風力3の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 転覆の結果、はるな2号は、船外機に濡損を生じたが、巡視艇により唐津港に引き付けられ、A受審人と同乗者2人は、船底につかまっていたところ、付近を航行中のゴムボートに救助された。

(原因)
 本件転覆は、唐津湾の筑前ノー瀬灯標北方において揚錨中、機関の前進力を利用して根掛かりした錨を揚げるにあたり、揚錨方法が不適切で、錨が外れないまま、錨索により横引き状態となって船体が大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、唐津湾の筑前ノー瀬灯標北方において揚錨中、錨が根掛かりしていることを知り、機関の前進力を利用して錨を揚げようとする場合、錨が外れないと緊張した錨索により横引きされ、転覆するおそれがあったから、錨索を船尾のリングに付け替えて係止し、船首方向を変えながら機関回転数を徐々に上げて錨索を引くなどの適切な揚錨方法をとるべき注意義務があった。しかし、同受審人は、投錨時に錨及び錨索に細工をしていたので、錨索を緊張させれば細索の輪が切れて錨を揚げることができると思い、適切な揚錨方法をとらなかった職務上の過失により、錨索を舷側に係止したまま急発進し、錨が外れずに横引き状態となって船体が大傾斜し、復原力を喪失して転覆を招き、船外機に濡損を生じさせるに至った。





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