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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成12年横審第97号
件名

プレジャーボートホワイト リーフ転覆事件(簡易)

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成13年2月8日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(猪俣貞稔)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:ホワイト リーフ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
損傷なし、船外機に濡れ損

原因
砕け波に対する配慮不十分

裁決主文

 本件転覆は、浅瀬が多数存在する沿岸水域において、砕け波に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月6日13時30分
 三浦半島西岸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートホワイト リーフ
全長 3.20メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 5キロワット

3 事実の経過
 ホワイト リーフは、製造者型式がケンタートル11ボートWと称する、最大搭載人員3人のFRP製無甲板型ボートで、A受審人が船長として乗り組み、同人の妻子2人を乗せ、船首尾とも0.1メートルの喫水をもって、平成12年7月6日10時00分神奈川県久留和漁港内の海岸を出航し、同港北方の長者ケ埼から同港南方の小田和湾に至る距岸100メートル以内の水域で、適宜ポイントを移動しながらキスなどを目的とした釣りを行った。
 ところで、久留和漁港は、佐島港口中根灯標(以下「中根灯標」という。)の北北西方3,500メートルに位置する粒石鼻の北側に、北西方に突き出た防波堤と陸岸によって囲まれた港で、粒石鼻北西方1,700メートルに位置する長者ケ埼から、その南東方4,300メートルに位置する小田和湾まで、水深2メートルの等深線が海岸線から200メートルにわたり、その水域には水深1メートル以下の浅礁が多数存在し、その等深線を越えると水深が急に10メートル以上となっていて、南西方からの風浪による磯波及び砕け波などが起こりやすい状況であった。
 A受審人は、発航に先立ち、06時00分発表のテレホンサービスによる、天気は晴、海上における波高は1メートルの情報を得ていたが、台風3号が南大東島の南方にあって、関東から東海地方の沿岸に向けて北東進しており、相模湾にはその影響によるうねりが達する状況にあった。
 こうして、A受審人は、転々とポイントを移動しながら適宜錨を入れて釣りを続けていたところ、正午を過ぎたころから粒石鼻沖の浅瀬で波高2メートルばかりの砕け波が立っているのを認めるようになり、釣果もあがらなかったので帰航することとしたが、沖合の波高が1メートルぐらいであったことから、大丈夫と思い、砕け波を受けて危険に陥らないよう配慮して水深2メートルの等深線から離れて沖合に出る進路をとることなく、13時25分中根灯標から337度(真方位、以下同じ。)2,900メートルの地点を発進し、針路を309度に定め、機関を4.0ノットの対地速力にかけて、水深1メートル以下の浅瀬が多数存在する水域を進行中、13時30分少し前左舷側正横より波高2メートルを超える砕け波を船尾に続けて2回受け、13時30分中根灯標から333度3,300メートルの地点において、ホワイト リーフは、船首が左に振られるとともに持ち上げられ、船尾から転覆した。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、付近には波高2メートルの砕け波が立っていた。
 転覆の結果、船体に損傷はなかったが、船外機に濡れ損を生じ、のち新替えされ、A受審人及び妻子2人は、海中に放り出されたが、いずれも自力で海岸に泳ぎ着いた。

(原因)
 本件転覆は、三浦半島西岸の長者ケ埼から小田和湾に至る水深1メートル以下の浅瀬が多数存在する水域において、帰航する際、南西からの風浪による砕け波についての配慮が不十分で、同水域を離れて沖合に出る進路をとらなかったことから、波高2メートルの砕け波を受け、復原力を失ったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、三浦半島西岸の長者ケ埼から小田和湾に至る水深1メートル以下の浅瀬が多数存在する水域において、帰航する場合、自船が無甲板型ボートであり、水深の深い沖合に出る進路をとるなど砕け波を受けて危険に陥らないよう、配慮すべき注意義務があった。しかしながら同人は、沖合の波高が1メートルぐらいであったので大丈夫と思い、砕け波に対する配慮をしなかった職務上の過失により、同波を受けて自船を転覆させ、船外機に濡れ損を生じさせるに至った。





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