日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成12年那審第36号
件名

プレジャーボート幸丸転覆事件

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成13年1月16日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、花原敏朗)

理事官
長浜義昭

受審人
A 職名:幸丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
機関に濡れ損等

原因
高波の隆起に対する配慮不十分

主文

 本件転覆は、水深の浅い海域でのうねりによる高波の隆起に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年5月14日15時30分
 沖縄県島尻郡知念村知念岬沖

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート幸丸
全長 4.39メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 22キロワット

3 事実の経過
 幸丸は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、家族等3人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.1メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成12年5月14日11時00分金武中城港中城湾南部の安座間地区を発し、同時15分知念岬沖に至って釣りを開始し、その後錨地を変えながら釣りを行った。
 13時ごろA受審人は、金武中城港ウンタク灯標から194度(真方位、以下同じ。)2,400メートルの地点において、重さ約6キログラムの4爪錨を投じ、船首から直径2センチメートルの合成繊維製錨索を約15メートル延出して釣りを再開した。この錨泊地点は、水深約8メートル、干出さんご礁外縁北方100メートル付近のところで、同地点から同外縁に近づくほど水深が浅くなっていた。
 ところで、水深の浅い海域では、うねりが打ち寄せると高波が隆起するので、干出さんご礁外縁に接近すると転覆する危険があった。
 15時29分A受審人は、釣りをやめ、機関を始動して中立とし、揚錨したところ、北東からのうねりにより干出さんご礁外縁に圧流される状況となったが、水深の浅い海域でのうねりによる高波の隆起に配慮して沖出しすることなく、機関を中立としたまま停留し、トローリングをしながら帰港することにしていたので、その準備を行った。
 幸丸は、うねりが打ち寄せる干出さんご礁外縁の水深の浅い海域に圧流され、15時30分金武中城港ウンタク灯標から193度2,450メートルの地点において、315度に向いたとき、隆起した高波を右舷側から受けて左舷側に大傾斜し、復原力を喪失して転覆した。
 当時、天候は晴で風力4の南東風が吹き、潮候は上げ潮の末期にあたり、海上には北東からのうねりがあった。
 転覆の結果、幸丸は機関に濡れ損等を生じ、A受審人及び同乗者全員は救助船によって救助された。

(原因)
 本件転覆は、島尻郡知念村知念岬沖において、北東からのうねりが打ち寄せる干出さんご礁外縁北方で釣りを終えて揚錨した際、水深の浅い海域でのうねりによる高波の隆起に対する配慮が不十分で、沖出しすることなく機関を中立として停留中、同外縁の水深の浅い海域に圧流され、高波を右舷側から受けて左舷側に大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、島尻郡知念村知念岬沖において、北東からのうねりが打ち寄せる干出さんご礁外縁北方で釣りを終えて揚錨した場合、水深の浅い海域でのうねりによる高波の隆起に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、水深の浅い海域でのうねりによる高波の隆起に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、沖出しすることなく機関を中立として停留中、同外縁の水深の浅い海域に圧流されて高波を右舷側から受け左舷側に大傾斜させ、復原力を喪失せしめて転覆を招き、機関に濡れ損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION