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平成12年那審第47号
件名

漁船みか丸漁船源丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月22日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、清重隆彦、花原敏朗)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:みか丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:源丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
みか丸・・・船底全般に擦過傷及び推進器翼などに曲損
源 丸・・・船体中央部から後方の両舷外板、操舵室及び機関室囲壁を大破、廃船

原因
みか丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
源 丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、みか丸が、見張り不十分で、漂泊中の源丸を避けなかったことによって発生したが、源丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年11月14日22時15分
 沖縄県嘉手納漁港西方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船みか丸 漁船源丸
総トン数 6.0トン 1.45トン
登録長 11.73メートル 8.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 110 25

3 事実の経過
 みか丸は、潜水器漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成11年11月14日18時15分沖縄県牧港漁港を発し、那覇港沖に至って操業した。
 A受審人は、釣果がよくなかったことから、牧港漁港沖に移動することとし、21時30分ごろ那覇港沖を発進したが、牧港漁港沖に差し掛かったころ予定を変更して沖縄県嘉手納漁港沖に向かうことにした。
 21時57分半A受審人は、嘉手納港第2号立標(以下「第2号立標」という。)から206度(真方位、以下同じ。)4.7海里の地点に達したとき、針路を019度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で、航行中の動力船が掲げる灯火を表示して進行した。
 A受審人は、操舵室右舷側のいすに腰掛け、海底の起伏が大きい場所を探すため、同室左舷側前方に設置された魚群探知器を見ながら続航し、レーダーを作動させていたが、周囲に他船を認めなかったことから、これを見ていなかった。
 22時10分A受審人は、第2号立標から215度2.2海里の地点に達したとき、正船首1.0海里のところに源丸が存在し、やがて同船が漂泊していてこれに衝突のおそれがある態勢で接近しているのを認め得る状況にあったが、魚群探知器に気をとられ、レーダーを活用して船首方の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、源丸を避けないで進行した。
 みか丸は、同じ針路、速力のまま続航中、22時15分第2号立標から228度1.3海里の地点において、その船首が源丸の右舷後部に前方から65度の角度で衝突し、乗り切った。
 当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、視界は良好であった。
 また、源丸は、いか引き縄漁に従事する木製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日17時30分嘉手納漁港を発し、同時45分同港北西方で操業を開始して北上した。
 B受審人は、残波岬沖に至って反転し、機関を微速力前進にかけ、2.0ノットの対地速力で、陸岸沿いに南下し、21時37分第2号立標から278度1.2海里の地点に達したとき、針路を165度に定め、同じ速力で、航行中の動力船が掲げる灯火を表示して進行した。
 22時10分B受審人は、衝突地点付近に達したとき、漁具が海底に引っ掛かったので、点検のため機関を中立にして漂泊を始め、そのとき右舷船首34度1.0海里のところに、自船に向首して来航するみか丸の灯火を認め得る状況であった。しかし、同人は、漂泊を開始するまで他船を認めなかったことから、周囲に他船はいないものと思い、右舷船首方の見張りを十分に行わなかったので、みか丸の灯火を見落とした。B受審人は、約70メートルのワイヤをたぐりあげたところ、餌木4個がなくなっていたので取り替えることとし、みか丸が衝突のおそれがある態勢で接近していたが、依然右舷船首方の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま、予備の餌木を保管してある船首の物入れに赴いた。
 源丸は、船首を134度に向けて漂泊中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、みか丸は、船底全般に擦過傷及び推進器翼などに曲損を生じたが、のち修理され、源丸は、船体中央部から後方の両舷外板、操舵室及び機関室囲壁を大破し、のち廃船となった。

(原因)
 本件衝突は、夜間、沖縄県嘉手納漁港西方沖において、みか丸が、漁場に向け航行する際、見張り不十分で、漂泊中の源丸を避けなかったことによって発生したが、源丸が、いか引き縄漁に従事中、餌木を取り替えるため漂泊する際、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県嘉手納漁港西方沖において、漁場に向け航行する場合、漂泊中の源丸を見落とさないよう、レーダーを活用して船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚群探知器に気をとられ、船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路で漂泊中の源丸に気付かず、同船を避けないまま進行して同船との衝突を招き、自船の船底全般に擦過傷及び推進器翼などに曲損を生じさせ、源丸の船体中央部から後方の両舷外板、操舵室及び機関室囲壁を大破させ、廃船に至らせしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、夜間、沖縄県嘉手納漁港西方沖において、いか引き縄漁に従事中、餌木を取り替えるため漂泊する場合、来航するみか丸を見落とさないよう、右舷船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、漂泊を開始するまで他船を認めなかったことから、周囲に他船はいないものと思い、右舷船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある態勢で接近するみか丸に気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊を続けて同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:41KB)





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