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平成12年門審第97号
件名

貨物船アルタモンテ貨物船ファーイースト エクスプレス衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(原 清澄、米原健一、西山烝一)

理事官
今泉豊光

損害
ア 号・・・右舷船尾外板を大破
フ 号・・・左舷船首部を圧壊

原因
ア 号・・・動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
フ 号・・・横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、アルタモンテが、動静監視不十分で、前路を左方に横切るファーイースト エクスプレスの進路を避けなかったことによって発生したが、ファーイースト エクスプレスが、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年2月9日21時20分
 大分県姫島北東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船アルタモンテ 貨物船ファーイースト エクスプレス
総トン数 15,820トン 6,788トン
全長 167.20メートル 109.42メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 5,074キロワット 3,353キロワット

3 事実の経過
 アルタモンテ(以下「ア号」という。)は、航行区域を遠洋区域とする船尾船橋型鋼製貨物船で、船長F及び三等航海士Eほか20人が乗り組み、セメント25,700トンを積載し、船首9.41メートル船尾9.67メートルの喫水をもって、平成12年2月9日19時45分山口県徳山下松港を発し、シンガポール共和国シンガポール港に向かった。
 20時21分半F船長は、周防野島灯台から057.5度(真方位、以下同じ。)2.6海里の地点に達したとき、針路を180度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの北西方に流れる微弱な潮流で右方に1度ばかり圧流されて、181度の進路としたまま、12.5ノットの対地速力で進行した。
 20時30分F船長は、それまで操船の指揮を執っていたが、周防野島灯台から097度2.2海里の地点に達したとき、船舶が輻輳(ふくそう)する海域であったものの、引き続いて自ら操船の指揮を執らないで、在橋中のE三等航海士に対して何かあれば知らせるように指示したのち、同航海士に船橋当直を任せることとし、操舵室後部の同室とカーテンで仕切ったチャートテーブルに行き、船主などに遂行業務についてのテレックスを入れるため、原稿作成作業に取りかかった。
 船橋当直に就いたE三等航海士は、20時55分姫島灯台から015度7.0海里に至り、右舷船首50度6.5海里のところに東行するファーイースト エクスプレス(以下「フ号」という。)の白、白、紅3灯を初めて視認し、同船の動向に注意を払いながら続航した。
 21時08分E三等航海士は、姫島灯台から024度4.4海里の地点に達したとき、その方位に変化のないまま、フ号を3.1海里に認め、その後、衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、同船が2.6海里まで接近した際、衝突予防装置で最接近距離を求めたところ、0.6海里ばかり離して同船の前路を航過する旨の表示が出たことから、無難に航過できるものと思い、引き続いて同船の動静監視を行わず、右転するなどし、フ号の進路を避けないで進行した。
 21時19分少し過ぎF船長は、まだ、原稿の作成作業を終えていなかったものの、そろそろ周防灘航路第6号灯浮標付近に差しかかるころと思い、周囲の状況を確認するため、チャートテーブルを離れ、カーテンを開けて操舵室に出たところ、左舷側に同灯浮標の灯火を認め、その後間もなく、E三等航海士から右舷方に他船が居る旨を告げられ、右方に目を転じたところ、至近に迫ったフ号の白、白、紅3灯を認め、急いでドアを開けて右舷側ウイングに出るとともに左舵一杯を命じたが、及ばず、21時20分姫島灯台から049度2.3海里の地点において、ア号は、原針路、原速力のまま、その右舷船尾部に、フ号の左舷船首部が後方から58度の角度をもって衝突した。
 当時、天候は曇で風力3の北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、付近海域には北西方に流れる微弱な潮流があった。
 また、フ号は、航行区域を遠洋区域とする船尾船橋型鋼製貨物船で、船長Gほか22人が乗り組み、合板5,387トンを積載し、船首6.80メートル船尾7.25メートルの喫水をもって、平成12年2月9日12時30分福岡県博多港を発し、関門海峡を経由して香川県丸亀港に向かった。
 G船長は、二等航海士を見張りに、操舵手を手動操舵にそれぞれ当たらせ、自らは操船の指揮を執りながら航行を続け、19時00分宇部港沖防波堤東灯台から220.5度5.5海里の地点に達したとき、針路を102度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.9ノットの対地速力で進行した。
 21時00分G船長は、姫島灯台から318度3.1海里の地点に達したとき、左舷船首52度5.1海里のところにア号が表示した白、白、緑3灯を初めて視認し、同船の動静監視を行いながら続航した。
 21時08分G船長は、姫島灯台から342度2.1海里の地点に達したとき、ア号を同方位3.1海里に認める状況となり、その後、その方位に変化のないまま、衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、そのうち避航船であるア号が自船を避けるものと思い、速やかに速力を減じるなどの衝突を避けるための協力動作をとらないで、汽笛による短音5回を数回吹鳴し、ア号の動向を監視しながら進行した。
 G船長は、避航の気配を見せないまま接近するア号に不安を覚え、21時18分同船と0.5海里ばかりまで接近したとき、機関を停止し、その後、右舵一杯としたが、及ばず、フ号は、その船首が20度回頭して122度を向き、速力が9.4ノットまで落ちたとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ア号は、右舷船尾外板を大破し、フ号は、左舷船首部を圧壊した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、周防灘の姫島北東方沖合において、アルタモンテとファーイースト エクスプレスの両船が、互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、南下中のアルタモンテが、動静監視不十分で、前路を左方に横切るファーイースト エクスプレスの進路を避けなかったことによって発生したが、東行中のファーイースト エクスプレスが、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:52KB)





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