日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年広審第37号
件名

漁船第十五誠漁丸防波堤衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月13日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(工藤民雄、竹内伸二、中谷啓二)

理事官
道前洋志

受審人
A 職名:第十五誠漁丸船長 海技免状:二級小型船舶操縦士

損害
沖防波堤にはほとんど損傷なし
誠漁丸・・・船首部を圧壊

原因
見張り不十分

主文

 本件防波堤衝突は、見張りが不十分で、防波堤に向首して進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年6月11日02時00分
 島根県美保関港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十五誠漁丸
総トン数 9.7トン
登録長 14.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 第十五誠漁丸(以下「誠漁丸」という。)は、島根県美保関港を基地としてまき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が甲板員と2人で乗り組み、あじ漁の目的で、船首0.4メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、装備するレーダーが故障したまま、平成11年6月10日15時00分美保関港を発し、同港の東北東方7海里付近の漁場に向かった。
 15時40分ごろA受審人は、目的の漁場に到着し、灯船として魚群の探索や集魚に当たりながら操業に従事したのち、翌11日01時24分島根半島の美保関灯台から066度(真方位、以下同じ。)5.8海里の地点を発進して美保関港に向け帰途についた。
 発進後、A受審人は、操舵室中央にある舵輪の後方に立って見張りを兼ね手動で操舵に当たり、また甲板員がその横で見張りの補助に就いて美保関港沖合に向け西行した。
 ところで、美保関港は、南方に開口した港で、東側の陸岸から長さ155メートルの東防波堤が西南西方向に延び、その先端部に等明暗赤光の美保関港東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)が設置され、また西側の陸岸から長さ115メートルの西防波堤が東方に延びているほか、同防波堤の南側約100メートルのところにも同防波堤とほぼ平行に長さ150メートルの西沖防波堤が東方に延び、その先端部に単閃緑光の西沖防波堤標識灯が設置され、更に東防波堤灯台から125度50メートルのところを東端として灯火設備のない沖防波堤が217度方向に100メートル延びていて、東防波堤と沖防波堤及び同防波堤と西沖防波堤間が、それぞれ幅40メートル及び幅90メートルの港口水路となっていた。
 当時、沖防波堤の東側から南側近くの広い範囲には、かたくちいわしのすくい網漁に従事している30ないし40隻の漁船が強力な明るい灯火を点灯して操業中で、沖防波堤に接近するに従って、これら漁船の灯火に照らされた沖防波堤を認めることができる状況であった。
 01時53分半A受審人は、東防波堤灯台から094度1,650メートルの地点で、針路を美保関港沖合に向けて264度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で進行するうち、同港南方沖合に前示漁船の明るい灯火を認めるようになった。
 A受審人は、これまで長年にわたり美保関港に頻繁に出入港を繰り返していて、同港の水路事情に精通しており、これら漁船に近づくにつれ、沖防波堤南側の方に漁船が密集していることが分かったので、沖防波堤と東防波堤との間の東側の港口水路から入港することとした。
 01時56分A受審人は、東防波堤灯台から106度760メートルの地点に達したとき、いつも東側の港口に向かうときの針路としていた284度に転じ、機関を半速力前進に減じ、6.0ノットの対地速力で、これらの漁船に注意を払いながら続航した。
 A受審人は、01時59分沖防波堤東端部が船首方約180メートルに接近し、漁船の明かりで同防波堤を認めることができるようになったが、漁船を避けるのに気をとられ、船位確認のため目視による見張りを厳重に行わず、同防波堤に向首接近していることに気付かないまま進行中、02時00分誠漁丸は、東防波堤灯台から125度50メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首が沖防波堤東端部の南側に北方から67度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
 衝突の結果、沖防波堤にはほとんど損傷がなかったが、誠漁丸は船首部を圧壊し、のち修理された。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、美保関港の沖防波堤近くに強力な明るい灯火を点灯して操業中の漁船が多数存在する状況下、レーダー故障中の誠漁丸が同港に入港するにあたり、見張りが不十分で、沖防波堤東端部に向首して進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、装備しているレーダーが故障中、前路の美保関港の沖防波堤近くに強力な明るい灯火を点灯して操業中の多数の漁船を認めて同港に入港する場合、同防波堤に著しく接近することのないよう、船位確認のため目視による見張りを厳重に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、漁船を避けるのに気をとられ、見張りを厳重に行わなかった職務上の過失により、沖防波堤東端部に向首接近していることに気付かずに進行して同防波堤との衝突を招き、誠漁丸の船首部を圧壊させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION