日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年神審第87号
件名

貨物船第二十八岬秀丸油送船昭豊丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月23日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:第二十八岬秀丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:第二十八岬秀丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
C 職名:昭豊丸船長 海技免状:三級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
岬秀丸・・・左舷船首ブルワーク及びハンドレールに曲損
昭豊丸・・・船首ブルワーク及びハンドレールに曲損

原因
岬秀丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
昭豊丸・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第二十八岬秀丸が、見張り不十分で、錨泊中の昭豊丸を避けなかったことによって発生したが、昭豊丸が、船橋当直者を配置せず、見張り不十分で、注意喚起信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Cを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年9月13日10時23分
 大阪港堺泉北区

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二十八岬秀丸 油送船昭豊丸
総トン数 499トン 493トン
全長 65.02メートル 66.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット 956キロワット

3 事実の経過
 第二十八岬秀丸(以下「岬秀丸」という。)は、船尾船橋型の砂利採取運搬船で、A受審人及びB受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま、船首1.4メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、平成11年9月13日09時40分大阪港堺泉北区第5区大津南泊地第2号物揚場を発し、山口県徳山下松港に向かった。
 A受審人は、10時03分少し過ぎ泉北大津東防波堤灯台から160度(真方位、以下同じ。)1,270メートルの地点において、針路を335度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.6ノットの対地速力で、自動操舵により進行し、同時13分泉北大津南防波堤灯台(以下「大津南防波堤灯台」という。)から349度950メートルの地点に達したとき、針路を浜寺航路第2号灯浮標(以下「第2号灯浮標」という。)に向首する295度に転じたのち、船橋当直をB受審人に行わせることとした。
 その際、A受審人は、小雨のため視界が3海里ばかりで、周囲には錨泊船が数隻存在していたものの、針路上には第2号灯浮標のほか障害となるものはなく、また、B受審人が船長職を執った経験もあって、その後の針路も知っており、船橋当直について特に指示をする必要もないことから、同人に当直を任せ、まもなく降橋した。
 単独で船橋当直に当たったB受審人は、第2号灯浮標を右舷側に通過したら、明石海峡に向けることとし、10時14分少し過ぎ同灯浮標を右に見るよう自動操舵のまま針路を288度に転じたところ、正船首1.4海里に船首を北東方に向けて錨泊中の昭豊丸を視認し得る状況となったが、針路目標の第2号灯浮標を見ることに気を取られ、見張りを十分に行わなかったので、同船の存在に気付かないまま続航した。
 B受審人は、まもなく、小雨模様なのでレーダーを3海里レンジとして監視したところ、左舷船首30度3海里のところに、大型船の映像を探知し、同船が接近してくるので双眼鏡を出して大型船を見守っているうち、10時20分錨泊中の昭豊丸に向首したまま衝突のおそれがある態勢で840メートルに接近したが、依然見張り不十分で、これに気付かず、同船を避けることなく進行した。
 10時23分少し前B受審人は、正船首方向至近に昭豊丸を初めて認め、手動操舵に切り換えて右舵一杯としたが及ばず、10時23分大津南防波堤灯台から302度1.9海里の地点において、岬秀丸は、船首を298度に向けて、原速力のまま、その左舷船首が、昭豊丸の船首に前方から63度の角度で衝突した。
 当時、天候は雨で風力1の北東風が吹き、視程は3海里であった。
 また、昭豊丸は、船尾船橋型の油送船で、C受審人ほか5人が乗り組み、積荷の順番待ちのため仮泊する目的で、空倉のまま、船首1.3メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、同日07時00分大阪港堺泉北区第5区大津泊地小松第1号岸壁を発し、浜寺航路南沖合の指定された錨地に向かった。
 07時40分C受審人は、衝突地点付近に至り、機関停止のうえ、左舷錨を投じて錨鎖5節を延出し、船首マストの張り索に法定の形象物を表示して錨泊したが、視界が3海里ばかりなので、接近する他船が錨泊している自船を見て避けてくれるものと思い、船橋当直者を配置することなく、錨泊を続けた。
 昭豊丸は、10時14分少し過ぎ船首が055度に向いていたとき、右舷船首53度1.4海里のところから岬秀丸が向首接近したが、船橋当直者を配置していなかったので、周囲の見張りが不十分となり、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近し、同時21分岬秀丸が避航動作を取らないで540メートルに近づいたけれども、注意喚起信号を行うことができないまま錨泊中、同じ方向を向いていた昭豊丸は、前示のとおり衝突した。
 C受審人は、衝撃で衝突を知り、昇橋して事後の処置に当たった。
 衝突の結果、岬秀丸は左舷船首ブルワーク及びハンドレールに曲損を、昭豊丸は船首ブルワーク及びハンドレールに曲損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、大阪港堺泉北区において、航行中の岬秀丸が、見張り不十分で、錨泊中の昭豊丸を避けなかったことによって発生したが、昭豊丸が、船橋当直者を配置せず、見張り不十分で、注意喚起信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、単独で船橋当直に当たり、大阪港堺泉北区を航行する場合、前路で錨泊している他船を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、針路目標の第2号灯浮標を見ることに気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、昭豊丸の存在と接近に気付かず、同船を避けないまま進行して昭豊丸との衝突を招き、自船の左舷船首ブルワーク及びハンドレールに曲損を、昭豊丸の船首ブルワーク及びハンドレールに曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
 C受審人は、大阪港堺泉北区において、錨泊を行う場合、周囲の見張りを十分に行って接近する他船に対し注意喚起信号を行うことができるよう、船橋当直者を配置すべき注意義務があった。しかるに、同人は、接近する他船が錨泊している自船を見て避けてくれるものと思い、船橋当直者を配置しなかった職務上の過失により、周囲の見張りが不十分となり、接近する岬秀丸に対し注意喚起信号を行うことができずに錨泊を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


参考図
(拡大画面:57KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION